三井不動産リフォーム 尾崎昌利社長
三井ホームリモデリングから「三井不動産リフォーム」へと社名変更した同社は、今年4月に新社長に就任した尾崎昌利氏の陣頭指揮の下、三井不動産グループの中にあるさまざまな事業と連携してリフォームを推進していく方針を打ち出した。競合他社がひしめく中で、尾崎氏は「高付加価値リフォームのトップブランド」を目指すと意気込む。
2012年3月期、三井不動産グループ全体のリフォーム売上高は前年比10%を超える増収の315億円。そのうち、3大都市圏の一般ユーザーを対象とする三井不動産リフォームの売上高は130億円弱。同社は中長期事業戦略の中で、2017年度あたりには売上高を700億円近くまで伸ばすというビジョンを打ち出している。
―――中長期事業戦略の中で最も気になったのは「高付加価値リフォーム」の推進という項目です。御社は従来から女性建築士ネットワークを組織して、デザイン性の高いリフォームを推進してきています。今回の「高付加価値」とは、どういうものなのですか。
パッシブデザインといってしまえばそれまでですが、基本的な住宅性能レベルを上げるということが大切だと思っています。通風、採光、そして断熱。これらを適切に施すことで温熱環境を変える。それによって得られる省エネ効果、健康維持増進効果がある。まず、ここを出発点におかないといけません。
―――ハウスメーカー各社では新築のスマートハウスの考え方をリフォームにも導入してきています。ただ、太陽光を取り付けるだけといった提案も見受けられます。
それも重要だとは思いますが、そもそもの基本の燃費が悪ければ、性能の底上げができたことにはなりません。まずはその燃費を良くすること。ベースのところをきっちり固めて、最終系に持っていくと。そこは見失わないように今後進んでいくことが基本中の基本です。なんでもかんでも創エネ、蓄エネという機器を組み合わせたリフォームの価値が高いというわけではありません。
―――設計段階で性能の向上を重要視していくわけですね。従来より販売を強化していた全改装の価性商品「わが家一新」などにもこのパッシブ設計を盛り込んでいくということですか。
当然、定価制商品と結びつけていくということも考えられますので、今そういう商品を開発しています。今期中のしかるべき段階で打ち出せれば、と考えています。
―――定価制商品は乱立していますから、差別化がカギとなります。
定価制でも、本来的に重要なのは住戸プランの内容だと思っています。単純に平米がいくらというだけになってしまうと、本来大事なところの提案ができずに終わってしまう。
―――ターゲットとしてやはり50~60代のアクティブシニア層になりますか。
この年代の方々は今後10~20年、自分の新しいライフスタイルに、合わせて健康・安全な暮らしをしたいと考えていると思います。ただ、全面改装というのはかなりの投資になりますから、そこの世代の方々に設計のエッセンスをより明確にして提案していく必要があると思います。住宅の設計というのは、世界各国、そのエリアエリアで環境に適したものがあります。ただ、基本に忠実になると、人間の生活動線やパッシブデザインというところがベース。通風・採光というのは、当たり前なことですが、きちんと設計すれば日本の夏は湿気が多いのでほんとうにがらっと変わる。たとえ、間取り的に美しくても、性能が悪ければ良い住宅になったとは言えないと思っています。それと、その年代の方は絶対に早くリフォームをやったほうがいいと思っています。なぜなら健康にいいからですよ。ある一定の住戸性能を持った家に住んでいる人はやっぱり有病率が明らかに少ないというデータがある。
―――断熱性能を上げた家と、そうでない家では心臓疾患の発生率が変わるというデータも出ていますね。
ある段階で決断してしまったほうが、健康に良いし、医療費も安くなる。リフォームするといろいろプラスがあるわけですね。
―――その魅力をどう理解してもらうかが課題になります。
我々はそういう価値をきちっとプランに反映して、それをプランナーがきちんとお伝えする。お客様としては「単にデザインがきれいというのがリフォームではないんですね、健康に良いというデータもあるんですね」といったふうに、うまく理解してもらうことが我々にとって大事なこと。価値の高いリフォームというのは本当の意味で性能の底上げがされているリフォーム。
―――そういう意味では女性建築士のネットワークのみなさんも断熱などに関する統一した知識が必要です。
他社さんも女性の技術営業、プランナー組織といったものを整えていますが、この三大都市圏で150名スタッフィングしているのは我々の強み。ノウハウも共有しやすいですしね。営業、工事、設計という三位一体のチームの強みを生かしていきたいです。

本社所在地 * 東京都新宿区 / 資本金 * 3億円 / 従業員数 * 329名
株主 * 三井不動産株式会社70%・三井ホーム株式会社30%

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