大建工業 億田正則社長
「消費者目線」の先駆け商材開発
フローリング、ボードなど多くのトップシェア商材を持つ、建材メーカー大手の大建工業。同社は創業70年を迎える来年、中期5カ年計画によって売上高2000億円を目指している。4月1日付で就任した億田正則新社長に、経営戦略やモノ作り企業としてのこだわり、リフォーム向けの商品展開等について話を聞いた。
住宅は「安心なシェルター」であるべき
―――中長期的に見ると、新築着工数の減少は避けられません。今後の市場をどう見ますか。
新築着工では「戸数」と同時に「面積」も見ないといけないと思っています。マンション等では同じ3LDK、同じ価格で、かつて80㎡で売られていたものが、65㎡で販売されたりしています。過去にも同じような現象がありましたが、とくに大都市圏では東京オリンピックまでは土地も工賃も上がっていくので、そうした傾向は続いていくのではないでしょうか。
―――今後は、御社もますますリフォームに力を入れていくのでしょうね。
当社は"TDY"の一角として、キッチンや水まわりといった設備のTOTOさん、窓など開口部のYKK APさんとの間を、床や壁などの建材で結ぶ役割があると思っています。その中で国の"住まいの強靭化"という施策からも、まず「耐震」がリフォーム動機の入り口にあると考えています。今、日本の住宅ストックは5800万戸といわれていますが、そのうち1000万戸は既存不適格住宅。そこで一番の問題は「耐震」です。
―――確かに、国も業界も住宅の耐震化を目標に掲げる一方で、なかなか進まない実情もあります。
住宅は本来、住む人を守る"安全なシェルター"であるべきで、そこが劣化した危険な場所であっては困るわけです。その意味では「耐震改修」をきっかけに、さらにそのご家庭に合った"安心・安全"のための「バリアフリー」やヒートショックなどを防ぐ「断熱」などの提案にもつなげたいと思います。実はわが家も2年ほど前に、洗面所や風呂など、部屋間の温度差をなくす断熱改修を行ったんですが、冬とくに快適になりました。そういうことも実感していただきたいんですね。
―――リフォームコンセンプトとしては、御社は「備えるリモデル」事業もあります。
「備えるリモデル」では、今までの"困りごとの解決"はもちろん、さらに将来に向かって住む人がいつまでも快適で楽しく暮らし続けるためのご提案を行っています。最近の商品としては、引き戸と開き戸を組み合わせて広い開口幅を確保する「ひきドア」がこの6月に販売予定ですが、すでにリリース直後から多くのご注文や引き合いを頂いています。
【ひきドア】
通常の連動引き戸のように、にぎりバーを握って横方向に引き、にぎりバーに組み込まれたボタンでロックを解除することで、通常の片開きドアのように手前に開き、最大1135㎜の開口幅を得られる。
「防音」相談は予約で常にいっぱい
―――ショールーム展開では、TDYコラボ店も増えていますね。
この6月で、TDYやTDコラボ店は全国6カ所になります。来館者数もかなり増加し、今後も拡大予定です。当社のショールームでいえば、例えば新宿ショールームで標準的な商品を全般的に見ていただき、さらに「思いやり」「防音」などに関心を持たれたお客様には、テーマで"深掘り"できる秋葉原ショールームにご案内するような流れを作っています。
―――秋葉原のショールームでは、防音体験が好評と聞きます。
防音のご相談は予約制なのですが、常にいっぱいです。とくに一人で大音響でホームシアターをご覧になりたい、若い時に親しんだギターを再びやりたいといった中高年の男性の方も多くいらっしゃいます。「自宅に"男の隠れ部屋"(笑)が欲しかった」といった声を聞きますね。
―――住宅の防音工事となると、商品だけでなく施工力も問われると思います。職人不足の中で、これは重要な問題ですね。
防音にしろ、省エネにしろ「正しい施工」がなされないと、その効果、機能が発揮できません。今、ショールームに来られるお客様は、昔から付き合いのある工務店、工事店を持たない人が多いんですね。そのため「どこに頼めばいいんですか?」というご相談もあわせて聞かれます。そういう意味では「正しい施工」ができないと、これからは難しいのではないかと思っています。
「潜熱・蓄熱」新商品を開発へ
―――御社は「技術のダイケン」と言われ、いわゆる「先駆け」となる商品を数々開発して来ました。
当社の先駆けというとまずボード、それにフロアでは、WPC技術などがあります。しかし最近はあまり出ていません。愛犬家だけでなく人にもやさしいとご好評を頂いている「ワンラブフロア」でも、7~8年前でしょうか。今後、その次に続く商品が欲しいと思っています。
―――具体的な商品ではどのようなものを考えていますか。
省エネ性能という面で、「潜熱・蓄熱」技術を進めようと思っています。昼間の日射熱を蓄え、夜間にそれを放出することができるものがあるのですが、それを利用した床材や壁材が作れれば、空調負荷の削減につながります。さらに床暖房と組み合わせれば、より大きな効果があります。
また「調湿」も重要です。これだけ省エネ、断熱といわれて家の中が密閉されると、湿度調整で体感が大きく変わってきます。湿度をコントロールできるような商品ができないか、考えています。
―――開発テーマとしては他に何かありますか。
例えばこれから高齢化が進むと、住宅の「臭い」は大きな問題になるでしょう。臭いを吸着できるような商品は一部あるんですが、もっと進化させたいと考えています。当社は来年、ちょうど70周年を迎えるので、そのタイミングで商品デビューできないかと開発に言っています。
―――御社では澤木前社長(現会長)時代から「消費者目線」という言葉をよく使われていますね。
私は、最後は「消費者、お客様」だと思っています。例えばショールームでは、アドバイザーが商品について一つひとつお客様に説明していくのですが、「これはこういう機能があり、その隣はこの機能が加わります。でもお値段はその分、上がります」と言うと、お客様は「この機能が欲しいからこの床にする」、さらに「このオプションもつけたい」ってプラスαを選ばれるんですね。 お客様が価格が上がっても納得されて選ぶということは、メーカーもビルダーさんや工務店さんも、みんなが得するWin-Winの結果になると思います。
―――今後も「消費者目線」の開発を続ける、ということでしょうか。
消費者ニーズに合った特色ある商品を作り、その機能を十分お伝えできれば、お客様は理解し、選んでくださいます。そこには「低価格競争」など関係ないんですね。長い歴史に培われた高い技術力で、さらに多くのお客様にご満足され、選んでいただける大建らしい商品をご提供していきたいと思っています。

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