三井不動産リフォーム 尾崎昌利社長
三井不動産グループの中で新規客開拓を担う三井不動産リフォーム(東京都新宿区)がグループシナジーによる事業拡大を進めている。特に2013年4月から本格化したグル―プの賃貸管理会社や仲介を行う三井不動産リアルティと連携した1棟ものの再販、バリューアップビジネスが好調。今期は同部門の売上高が全体の2割に達すると見る。尾崎昌利社長は、「今後も伸び筋」と新ビジネスに期待を寄せる。
徐々に市場は回復傾向
――今期は4月からの消費増税の影響で需要がかなり落ち込んでいます。足元の状況はいかがでしょう。
一戸建てのお客さんの動きが極めて弱いというか、逆にそれだけ一昨年の9月末までに駆け込んだ方が多かったと見ています。ただ、盆明けぐらいからお客さんの反応は良くなってきている。供給側も波があり、上期末の9月は契約に力を入れるので戻ってきている。だけど10月は、情報量が増えて、相談件数が上がっている割には一服という感じ。ただ、反動減は一昨年の10月から始まっているので、同月の昨対では似たり寄ったりか少し上という感じです。
――消費増税先送りの影響はどうみていますか。
私どもは反動減がここまで長く続くとは見ていなかった。この状況で予定通り増税し、1、2、3月だけ駆け込み需要で、線香花火のように盛り上がるよりは、アンケートを取ると一番多い1、2年先にリフォームという方が確実に動いてくる可能性があるという意味で、先送りはいいんじゃないかと考えています。
――そうした中、具体的な契約に結び付けるために今期はどんな戦略を取っているのですか。
1つはマンションのオーダーメード定価制。フリースタイルに近い定価制で、基本料金を頭に入れながら、設備や建具は好きなものを選べる。これを一昨年の年明けぐらいから導入し、非常に成果が上がっています。
―― オーダーメード定価制は戸建て向けも展開を始めましたよね。
夏ごろから投入しています。この10年ぐらいの間に全面改装したお客様の数が増えていますが、まだ潜在的なニーズのボリュームは大きい。特に新耐震の住宅が多くなっているので、旧耐震よりは耐震補強コストが上がらない。その浮いたコストを断熱の部分にオプション的に入れ、断熱重視型の全面改装を拾っていきます。ただ、今後の5年、10年を考えると明らかにマンションの方が動きます。
―― 築古マンションのストックが増えているためですね。
バブル崩壊後の1994年ぐらいから3大都市圏を中心にいわゆる大量供給時代となりました。過去の供給量と比べると1.5倍から2倍くらい。そうした時代が2006、2007年頃、リーマンショック手前まで続いた。その間に買われたお客様は永住志向が強い。今年あたり大体20年経ちましたから家族構成も変わり、リフォームの動機が発生する時期です。単純に過去と同じリフォーム出現率があるとすれば、ストックが増えた分だけお客様も多くなる。今年度の状況をみても戸建ては厳しいですが、マンションはほとんど変わっていません。
――弊社で行ったマンションリフォーム売上ランキングでも三井不動産グループは78億円と業界2位につけていまた。この中で三井不動産リフォームが担う部分が大きいのですよね。
私どもの売り上げウエートが一番高く8、9割がそうです。
――ちなみに今期の売り上げはいかがでしょう。
大幅に前期を超える見込みでいたんですが、前半戦の厳しい状況からすると前期を超えていくと上出来という感じはしますね。ただ、受注は前年度下期が厳しくなっていく状況の中で、前年同月を確実に大きく超えていく状況をつくれています。
――好調の要因は先ほどお話を聞いた定額制のマンションですか。
そこがベースにあるのは事実ですが、もう1つの柱として、1棟もののマンションのソリューション事業を結構な量、手掛けています。分譲マンションや賃貸マンションの大規模修繕もあれば、共用部・専有部のバリューアップもある。賃貸資産を預かって管理している会社がグループで2社ありますから、賃貸マンションの共用部と専有部の仕事が継続して入っています。それともう1つが買い取り再販。賃貸マンションなどを1棟買い取り、分譲に仕切り直して売る。実はこの辺の業務量が多くなっています。
――大手事業者の参入が多い分野ですね。
買い取り再販系のデベロッパーからの仕事もあれば、ファンドで持っている賃貸マンションをきれいにし、分譲に切り替えて1戸ずつの販売もあります。私どもが共用部を含めた依頼を請け、例えば販売用にモデルルームを作ることもあります。買われたお客様は自分好みにリフォームする。販売は個別になるので、グループのリハウスが担当します。
――実績としてはどのくらいありますか。
今年度ですと、全体の2割。ソリューション型のビジネスで受注売り上げが170億~200億円であれば、その2割、35億円ぐらい。3割に近づこうという勢いで伸びています。

グループの住宅会社が連携した三井のすまいモール。さまざまな悩みを解決できる。現在3カ所で展開
――ソリューション事業を始めたのはいつからでしょう。
三井不動産リフォームに社名をかえてからです。ただ、セグメントしては、2013年4月に部門を発足させました。1戸を1000万円、2000万円で買って、2000万円から3000万円未満で販売する事業者は多いですが、私どもは対応していません。やはりプラン上の特性がでてくるモノを対応したいと考えていますので高額になります。都内の中心3区や5区の物件の場合、当社に相談していただけるケースは多いですね。
――すると販売額はどのくらいでしょう。
今手掛けている青山や六本木でいいますと、販売価格が最大坪600万円ぐらい。50坪や60坪という住戸が結構ありますので、2億、3億円になります。それを数千万、中には億近くかけられ、リノベーションして住まわれます。今は都心で新築の億ションを買おうと思ったら5億円などでもいいものがありませんので、立地優先で2、3億円の中古を買うのです。すると当初予算より2億以上あまりますから、1億かけてリフォームしてもいいかなとなります。
――もう少し予算が少ない5000万円ぐらいの層は携わらないのですか。
5000万円クラスですと、正直リフォームにあまりお金が回ってこない。例えば一昨年は流通市場が非常に活況で、物件を抑えないといけない状況だったのでリフォームは後回し。予算をフルに使って物件を抑えた方が多かったです。ただ、今期の方が中古を買ってリフォームという雰囲気は良い。リフォームの内容をゆっくり考えたいというお客様も増えてきて、リハウスともうまく連携できています。
仲介との連携は30%増
――リハウスからの案件は前期の御社売り上げ173億円のうちどのくらいでしょう。
10%はいかないですね。ただ、今期は受注ベースで30%ぐらい増えています。さっき話した通り、築20年というお客様も動いているので全体の母数は広がると思います。あと、新築の物件がいよいよ少なくなっていますから、中古は立地優先、価格優先とか自分のスタイルに合わせられる面白さに気付くお客様は年々増えている。この3年間グループ連携で仕掛けをしてきましたが、その蓄積効果を今後1年2年と積み重ねていくと出現率は高まってくると期待しています。
――ほかにも新しいニーズは考えられますか。
実家との近居はポイントですね。ここ10年ぐらいのトレンドでして、一定のボリュームがあります。団塊の世代が65歳を過ぎてきて、半分ぐらいは3大都市圏、特に大多数が首都圏にいます。すると巣立った団塊ジュニアが戻ってきて実家の近くに住んでいる。二世帯という選択肢もあるのですが、話としては近居型が多い。板橋にサンシティというマンションがあって、これが、パークシティの中でも最も築古に近く、築35年ぐらいです。
築25~30年ぐらいは高齢化が進みきっていたのですが、子供がとても多くなっています。これはピンポイントで自分たちの通勤、子供たちの通学に近いというのが第一。パークシティクラスのマンションですと、必ず流通案件が出ますから、気に入ったものが出たら近居する。自分の生活、それから実家とのバランス、それはこれからも重要な要素ですよね。

本社 * 東京都新宿区 / 資本金 * 3億円 / 株主 * 三井不動産70% 三井ホーム30%
社員数 * 404人(2014年4月1日現在)
この記事の関連キーワード : オーダーメイド コスト マンション モデルルーム リノベーション リフォーム 中古 リフォーム 市場 リフォーム市場 三井不動産リフォーム 中古 中古住宅 仲介 分譲 大規模修繕 定価制 定額制 戸建て 断熱 東京都新宿区 消費増税 築古マンション 耐震 賃貸 需要 駆け込み需要 高齢化

最新記事
この記事を読んでいる方は、こんな記事を読んでいます。
- 1656号(2025/07/14発行)11面
- 1655号(2025/07/07発行)19面
- 1655号(2025/07/07発行)16面
- 1655号(2025/07/07発行)17面
- 1653号(2025/06/16発行)12面