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大建工業、「新築着工数に影響されない経営」を目指す

大建工業
億田正則 社長
1159号 (2015/03/03発行) 5面
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大建工業 億田正則社長

大建工業 億田正則社長

機能流通店でビジネスモデル作り

 今年9月に、創業70年を迎える建材メーカー大手の大建工業は、"技術の大建"として、「耐震」「防音」「介護」など、こだわりをもった商品開発で知られる。4月で就任1年となる億田正則社長に、新築着工数に影響されない経営戦略や今後のリフォーム展開等について話を聞いた。(聞き手/本社社長・加覧光次郎)

新築着工は60万戸台に

――消費増税の影響で、新築着工数が減少しています。今年はどのくらいを見込んでいますか。

 駆け込み需要があった98万戸の前年に比べて、年でいったら88万戸強くらいでしょうか。2017年の消費税10%アップまでは、そう極端には変わらないと思います。ただそこからは下がり続け、25年では60万戸台くらいではないでしょうか。といいますのも、例えば今年の新成人人口は126万人でしたが、私が20歳を迎えた昭和45年は245万人、当時から半分近くに減りました。いわゆる30~45歳くらいの住宅一次取得者層も当時の半分になっていますので、140、150万だった新築着工数も、その半分の70万や60万戸くらいになるのは妥当な数だと思います。

――そこで御社は新築着工数に影響されない経営という方針を打ち出されています。当然、リフォームを重視していくのでしょうね。

 とくに今、注目しているのはリノベーションですね。2020年の東京オリンピックに向けて、最近は外国人の観光客だけでなく、滞在する外国人向けの需要もあります。都内では新しい更地がだんだん出なくなることもあって、もともとある外国人向け物件を躯体だけ残してグレードの高い賃貸、あるいは分譲向けにリノベーションしたい、という話を大手不動産から頂いたりしています。デザイナーさん等も入った、今までのリフォームとは違った需要が、増えてくると思います。

――海外での事業展開にも注力していますね。

 ただ正直なところ、為替の影響も受けています。今、マレーシアに2つ、ニュージーランドに1つのMDFの工場があります。そこで100円ベースで考えていたものが円安で120円になれば、影響が出ますよね。また、海外で作った資材の75%は日本で売っていますので、"売り上げ"で考えるとほとんどが国内販売という範疇に入ります。

 海外での販売は、今は5%くらいですが、この円安で輸出がしやすくなったことや、日本製のよいところを理解してくれるようにもなってきたので、今後は中国やアメリカなどへ、アウト‐アウトで出すことを強化していこうと思っています。

耐震改修は課題

――前回のインタビューでは、"耐震"をリフォームの入り口としたいと言っていました。

 私どもでは、耐震リフォーム建材として「かべ大将」という商品を扱っていますが、東日本大震災が起きた時は、それ以前の3倍くらいまで気に売り上げが伸びました。しかし次第に下がって、今は元に戻った状態です。ストック住宅6000万戸のうち、1000万戸は耐震基準に不適合といったデータもありますが、現状では、まだまだお客様の意識を掘り起こし切れていないと思います。これは課題ですね。

―― 生活者の心理としてはいつ起こるかわからない地震に備えるより、毎日が楽しくなる方に、お金を使いたいのでしょう。

 そうかもしれませんね。その意味では、当社に寄せられる"防音"の相談は、本当に多いです。団塊世代がリタイアして在宅時間が増えてくると、昔やっていたギターを弾きたいとか、音楽を大きな音で聴きたいということになるのですね。でも家族には聞かせたくない、"うるさい"と言われる(笑)。

 "防音リフォーム"は、なかなかやれるところがないんです。防音の確保には、特殊な工事が必要となりますので、お客様のご希望をお聞きして設計し、施工についてもご要望があればパートナー等を紹介する支援まで行っています。さらに、「お父さんの趣味の部屋ができたのだから、私の家事室も作ってほしい」といったご要望もありますので、今後は、防音から他のリフォームへの広がりもあると期待しています。

大建工業 盛況な防音セミナー盛況な防音セミナー

「断熱」でも新たな提案

――この4月に改正省エネ基準が完全施行となりますが、それに向けた商品はどうでしょう。

 昨年ビッグサイトで、東京大学、積水ハウスさんと"潜熱"をテーマとした展示を行いました。日中に室内の熱を蓄え、夜冷えた時にそれを放出するもので、技術は完成しています。現在、ハウスメーカーさんと商品化に向けての検証を行っているところです。

 また、私どもが扱う天井、壁、床という面から、"断熱"のご提案もあると思います。断熱には、それぞれグラスウール、ロックウール等の"断熱材"があると思いますが、私どもが部位によってふさわしいものを組み合わせることで、住宅の断熱性能を上げることができると思います。

――断熱改修というと、"天井や壁"はコスト的にも難しくて、「まずは窓から」という方が多いように思いますが。

 おっしゃる通りで、住宅の省エネ化というと、開口部の断熱を考える方が多いですね。一時、内窓リフォームをされる方がすごくおられましたが、実は高気密化で室内の湿気の行き場がなくなり、内部結露が起こったりします。そういう場合は、私どもの調湿壁材「さらりあ~と」のご提案ができます。実際にTDYグループのYKK APさんとは"窓断熱と壁の調湿を同時にやりませんか"といった提案を行ってきました。

大建工業のひきドアは大きく間口を取れるので介護しやすいひきドアは大きく間口を取れるので介護しやすい

「ひきドア」が好評

――リフォーム商材では、アクティブシニア層に訴える「備えるリモデル」があります。

 昨年6月に「ひきドア」を発売しましたが、かなりの引き合いが来ています。最近、ドアでは、"引き戸"の需要が高まっていて、開き戸と引き戸の割合は、ちょうど半々くらいになったでしょうか。引き戸にすると開口部が広く取れ、上から吊ると、足下の凹凸のない完全なバリアフリーにできるのですね。また家全体の気密性が高くなってきましたので、部屋ごとの密閉度にあまりこだわらなくなったこともあると思います。

――社長のご自宅も完全バリアフリーにしたそうですね。

 うちは2年前に家を建て替えましたが、すべて引き戸にして、玄関も外階段とは別に、車いす用のスロープを作りました。"断熱"も天井から壁からすべて吹き付けを行いました。今は元気でいる母親をいずれ引き取るための備えだったのですが、できた時に嫁に言われました。"あなたのための家ができましたね"って(笑)。

――日本はこれから、うちも隣もその隣も...みな高齢者がいる家ばかりの時代になりますよ。奥さんのご指摘どおり、早くからの備えが必要でしょう(笑)。

 今、新宿の西富久地区で、面白い再開発が進められているそうです。もとは200戸以上の戸建住宅があったのですが、一旦すべて立ち退いて、そこに高層の分譲、賃貸住宅と、下にはショッピングセンター、医療やデイサービスの施設等が入ったビルを建てています。分譲には元の住民に住む権利があって、賃貸については、それぞれの割合で収入が入ります。今年の夏くらいに完成予定と聞いていますが、これからはこのような"街ぐるみの再生"という考え方もあるのではないでしょうか。

――リフォーム展開としては、どのようなことを考えていますか。

 当社では、昭和51、2年頃から昔の建材店さんなどの流通を対象とした販売コンテストを行っています。開始当初からずっと上位におられる方はほんの一握りで、そういう方は流通だけをやっているかというと、他もいろいろやっておられます。私どもでは、地域の相談事にも対応できる、リフォームの窓口にもなれるような流通会社を"機能流通店"と呼んで、3年くらい前から地域の核として考えています。今後は、そういうビジネスモデルを地域ごとに増やし、一緒にリフォームを進めていきたいと思っています。

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