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永大産業、急増する在宅介護に備えた商品を開発

永大産業、急増する在宅介護に備えた商品を開発

永大産業
大道正人社長
1160号 (2015/03/10発行)6面
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永大産業 大道正人社長

永大産業 大道正人社長

高級「挽き板」フローリングでリフォーム需要開拓

 フローリングに強みを持つ建材大手メーカー、永大産業(大阪府大阪市)がシニア層や高級路線に目を向けた商品展開に力点を置いている。大道正人社長に、今後の戦略と見通しを聞いた。

(聞き手/本紙社長・加覧光次郎)

高齢者の事故防ぐ

――高齢者向け製品の開発への取り組みは目を引きます。

 今後、住宅一次取得者である25~35歳は減少しますが、逆に65歳以上は今後どんどん増えていきます。ここの潜在ニーズをどう掘り起こすかです。

――老人ホームなど、介護施設も大事ですが、これからは、介護が必要になる前に、住宅を高齢者が元気で安全に過ごせるようにリフォームする必要があると思います。

 現在、65歳以上の高齢者がいる家庭は約2000万世帯。にもかかわらず、手すりの設置や住宅のバリアフリー化をしている家庭は4割しかありません。きちんとした介護対応リフォームを行っている家はもっと少なく、わずか8%。要するに、「介護が必要になったときに使える」という住まいの知識が、十分に浸透していないのです。

――今後、急増していくであろう在宅介護に備えるため、どんな介護住宅が自分たちに必要なのか、消費者に気づいてもらう必要があるでしょう。

 まさにいま、その点に取り組みつつあります。当社は昨年、体感型ショールーム「大阪ファクトリーギャラリー」をオープン。商品を施工した状態で見せ、実際に体験できる施設になっています。現在はサービス付き高齢者住宅の施工展示が中心ですが、間もなく、在宅介護を想定した一般住宅の施工モデルルームを新設します。ここでお見せするのは、介護リフォームのビフォア、アフター。実際に触れていただくことで、在宅介護時に求められる住まいのあり方とは何か、身をもって分かっていただけると思います。

――主力のフローリング材では、どのような高齢者対応製品を作っていますか。

 いま当社が最もお勧めしているのが、衝撃吸収フローリング。高齢者のケガを予防する安全性の高い床です。高
齢者施設では、フローリングをコンクリートに直貼りするケースが多いですが、お年寄りが転んで骨折するといった事故が起こっています。しかし、衝撃吸収フローリングなら、直貼りしても高い衝撃吸収力を発揮します。

――家庭内で起こる死亡事故は年間1万3000件と、交通事故死よりも多いのが現状。その大半が転倒や骨折です。

 そうした事故を防ぐために、衝撃吸収フローリングを開発したのです。衝撃緩和の模範としたのは「畳」。畳と同等の衝撃吸収性を持たせるべく、厳しい社内基準を設け、それをクリアする性能を実現しました。今後は高齢者施設だけでなく、一般住宅用の衝撃吸収フローリング材普及にも本腰を入れます。

――挽き板など高級タイプにも力を入れていますね。

 高級フローリング材「銘樹・ロイヤルセレクション」の最大の特徴は、厳選した銘木の挽き板を2㎜の厚さでぜいたくに使用している点。床暖房にも対応しており、メンテナンスも容易です。ベトナムで生産することにより、価格も競合他社の同等品より安くなっています。マンションではシートフローリングが9割を占めますが、今後は木をたっぷり使った挽き板フローリングが需要を伸ばすはずです。

――今は確かにシート貼りのフローリングが全盛ですが、特に中高年層のリフォームユーザーなどには満足できないのでは。その意味で挽き板フローリングの登場のインパクトは大きいですね。

 挽き板フローリングの販売を伸ばすことで、フローリングの売り上げ全体を底上げしたいと考えています。人はリフォームするとき、従来使っていたものと同等ではなく、より良質なもの、ワンランク上のものを選ぼうとします。床材についても、本物を選びたいという志向が強くなる。そのニーズに応える商品は必要ですからね。

2㎜厚の挽き板フローリング「銘樹・ロイヤルセレクション」は豊かな木の質感を楽しめる
2㎜厚の挽き板フローリング「銘樹・ロイヤルセレクション」は豊かな木の質感を楽しめる

会社を2度と潰さない

――ところで、2007年に東証2部に再上場し、その4年後には東証1部に復帰を果たされています。

 思えば、当社が会社更生法の適用を受けたのは、私が入社して間もなくの1978年。当時は戸建て住宅事業が中心で、連結4000億円もの売り上げを上げていました。しかし、更正法適用を機に、戸建てから建材や住設へと事業を大きく方向転換。30年以上かかって再び上場企業に返り咲くことができました。更生法を受けた当初、私を含め、若
手の社員はみんなハングリー精神むき出しで動きました。営業は自分たちの足でマーケットをくまなく回って顧客志向をつかみ、開発はそれをどんどん商品化に結びつけました。あのとき、人材のパワーというものをしみじみ感じました。

――社長に就任されたのは、上場後でしたか。

 東証1部に再上場したのと同じ年の2011年です。あの苦しい時期を経験し、経営者となった人間として胸に刻んでいるのは「会社を二度と潰してはならない」ということ。リーマンショックの時は売り上げが3割5分減少し、いまも過度な円安が続くなど、日本経済は乱降下を繰り返していますが、社員が第一、人材が最も重要という思いは変わっていません。

――経営内容を見ると、自己資本比率の高さが突出しています。昨今はROE経営に注目が集まっており、株主から「資本を活用しないなら資金を引き揚げる」と言われている企業もあります。

 確かに、当社の自己資本比率は68%と非常に高い。本来ならROE経営を目指すべきですが、会社や社員を守るためには、やはり自己資本はしっかりと持っていなければならない。機関投資家から見れば「お宅は自己資本をうまく活用していない」と思うでしょうが、会社を絶対に潰さないというポリシーは貫かなければなりません。

欧州のデザインと日本の品質との両立を高いステンレス加工技術で実現した「PEERSUS S-1 EUROMODE」
欧州のデザインと日本の品質との両立を高いステンレス加工技術で実現した
「PEERSUS S-1 EUROMODE」

内製にこだわり

―― 事業内容でも、主力であるフローリングやドアのほか、キッチンも生産しておられますね。「選択と集中」が問われる中、売り上げ比率が1割ほどのキッチン事業を継続する意図は。

 あまり知られていませんが、当社のキッチン生産歴は40年以上と長期にわたっています。1973年にステンレスのプレス工場を完成させて以来、大手ハウスメーカーのほとんどで当社のキッチンが採用されるまでに成長しました。当社の強みは、何と言っても「内製比率の高さ」です。ステンレス加工から仕上げに至るまで、外部委託せず、ほぼ自社で行っています。この強みを生かさない手はありません。

――ステンレス加工を自社で行っているのは、かなり貴重なケースですね。

 実は昨年から自社ブランド品を強化し、リフォーム市場でのシェア獲得に動いています。耐久性、機能性に加え、デザイン性を向上させた欧州家具のようなキッチン「ピアサスS-1ユーロモード」です。日本のキッチンではあまり見かけないシンメトリーデザインになっていますが、この商品に使われているステンレスワークトップは、耐久性があるのに非常に薄いところが特徴。キッチンのインテリア性を高めるポイントになっています。こうした薄くて高強度なワークトップを実現できたのも、内製しているからこそです。

――最後に今後の住まいづくりについて、どうあるべきだと思いますか。

 床から室内コーディネートを考える発想が必要でしょうね。現在のコーディネートを見ていると、家具に合わせて床を考えている。だからうまくいかないんです。床は部屋に占める面積が大きく、ここをどんな材質・色にするかによって、部屋の雰囲気が大きく変わります。だからこそ、床をベースにして家具やクロスを選んだ方が、部屋づくりは圧倒的にうまくいく。床から部屋のインテリアを考えようと、声高に言いたいですね。

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