「ウッドショックはいつまで続くのか」。1年以上続く木材価格の高騰に、ある工務店の社長は不安の声を口にする。アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が利上げに舵を切ったことで、4月に入り米先物価格は下落傾向にあるが、ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり予断を許さない状況が続く。【リポート/編集部 芦原拓】
先物価格半減も、ウッドショックが長引く理由
「国産材の安定供給が不可欠」、林野庁が危機感
- 図1:ロシアからの木材輸入額
※2021年の林野庁「ロシアからの木材輸入動向などについて」に基づく輸入額に、2022年4月12日の経産省「外国為替及び外国貿易法に基づく経済産業省告示の改正について」による輸入規制項目を照合
米住宅市場は鈍化、利上げで前年比3割減
アメリカ国内で新型コロナウイルス蔓延による買い控えから、一気に新築やリフォーム需要が拡大したことで世界的な木材の不足や価格の高止まりが発生。日本では円安が進む影響もあり、輸入材の高騰にメーカー、流通、工務店など事業者が悲鳴の声を挙げる。
「見通しが立たず、商売になりません」。年15億円を売り上げる工務店の経営者は、価格を据え置きすることに決めた。すでに1年前に50棟ほど注文住宅の契約を交わし、現在、着工を進めている最中だ。原価高騰による追加請求を行わないことで顧客に安心感を与える一方、「1億円以上の損失が出ている」と打ち明ける。短期的だと思われていた「ウッドショック」が1年にわたって続くことで、ビルダーや工務店の経営を圧迫しはじめている。
そうした状況下で、この2カ月間、変化を与えそうな出来事がいくつかあった。ひとつは、FRBが2年にわたるゼロ金利政策に終止符を打ったことだ。3月15日、ジェローム・パウエル議長は、インフレ抑制のために0.25〜0.50%の利上げに踏み切ることを表明した。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引される材木先物の終値は、4月12日時点で1000ボードフィート(約2.36立米)あたり874米ドルに。過去最高値の1670米ドルを記録した昨年5月の半額ほどに下落した。米商務省による3月時点の新築住宅販売棟数は76万3000棟。100万棟を超えた前年同月に対して約3割減となっている。
一方、ロシアのウクライナ侵攻に歯止めがかからないことにより「世界中で木材が不足する可能性がある」と口にするのは、FSC(森林管理協議会)ジャパン広報の河野絵美佳氏だ。FSCは適正に管理された森林から切り出された木材を認証する国際機関だが、同様の組織であるPEFCと歩を合わせる形でロシアとその同盟国ベラルーシ産の木材を「紛争木材」と定めて認証を停止した。「ロシアは全世界の約2割の森林が集中する森林大国。政府と森林業者の距離が近く、収益が軍資金に使われる可能性がある」と河野氏は背景を打ち明ける。
- 図2:木材需給に関する世界の動き
ロシア産の単板やチップ規制、6割占める製材は輸入継続
3月9日にロシアはSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出されたことに反発する形で、日本を含む非友好国への一部木材の輸出を制限することを発表。その約1カ月後の4月12日、日本政府もロシアからチップや丸太、単板などの輸入を禁止することを決めた(図1)。
この記事の関連キーワード : CME FRB FSC ウクライナ ウッドショック カーボンニュートラル シカゴ・マーカンタイル取引所 トップニュース バイオマス発電 フィンランド ロシア 単板 合板 木材 林野庁 補正予算 集成材

最新記事
この記事を読んだ方へのおすすめ
-
1653号(2025/06/16発行)5面
-
1653号(2025/06/16発行)4面
-
1653号(2025/06/16発行)20面
-
1653号(2025/06/16発行)5面
-
1651号(2025/06/02発行)5面