ライフスタイルが多様化し、入浴スタイルにも変化が生じてきた。なかでも、美容効果を高める入浴アイテムに注目が集まっている。このような動向を踏まえ、TOTO(福岡県北九州市)は美容ニーズに対応した多機能シャワーを8月1日に販売する。機器水栓開発第一部・技術主査の近藤沙織さんに開発の裏側を聞いた。
3つのモードを選べるシャワー
「コンフォートウエーブシャワー 3モード(ミスト)」
TOTOが発売した「コンフォートウエーブシャワー 3モード(ミスト)」は美容ニーズの高まりを受け、ウルトラファインバブル※1 を含むミスト吐水を新搭載したシャワー水栓。生活シーンに応じて、3つのモードを選べるのが新商品の魅力だ。
搭載する3モードは次の通り。「コンフォートウエーブ」はスプレーシャワーと同時に、独自ノズルで大粒の水玉がスイングしながら勢いよく吐水する。15年前のシャワーに比べて、年間約35%の節水効果※2があり、適度な刺激感と節水を両立する 。「ウォームピラー」は、整流機構により、体にまとわりつくようにお湯が流れるのが特徴。放熱ロスが少ないため温まりやすく、 湯船につかるようなリラックス感を味わえる。これら2モードは現行シャワーより搭載された好評の機能だ。
そして今回、新たに開発されたのが「ナチュラルケアミスト」だ。やさしい肌当たりと洗浄力 をバランスよくチューニングし、浴び心地の良さを実現している。直径1μm未満の微細な泡であるウルトラファインバブル※1を含むミストの粒が、肌表面の汚れを洗い流す。
<注記>
[測定条件] マネキン胸部に30mm離した状態で水を流し吐水10秒後の温度を測定。室温:22℃~24℃ 水温:42℃ 流量:8.3L/分
●TMHG40CRは2008〜2013年商品。TBV03404Jは2019年〜商品。
●洗い場の水栓の種類により、必要な水圧条件が異なります
従来シャワーより洗浄力が1.3倍
- [試験方法]
人の腕に疑似皮脂1μLを滴下し、洗い流した後の疑似皮脂除去率を測定。
[試験条件]
吐水量(コンフォートウエーブ吐水)6.5L/分
吐水量(ナチュラルケアミスト吐水)3.5L/分
吐水時間:15秒
吐水温度:42±1℃
N=10
TOTO調べ。
※使用環境や個人によって効果は異なります。
同製品は用途に応じて3モードを使い分けができる点が最大の特長 。例えば、「ウォームピラー」で体を温めた後、「ナチュラルケアミスト」を使うと洗浄効果がより高まる。
各モードは、シャワーヘッドにある押しボタンで簡単に切り替え可能だ。通常、水圧が高いと切り替え操作も重たくなり故障の原因になるのだが、同社は水まわりメーカーならではの発想と技術力で水圧に依存しない耐久性の高い機構を開発。 これにより、スムーズにモードを切り替えることができる。
開発に携わった、技術主査の近藤沙織さんは「当社は、これまでに数多くの水栓金具の出し止めや切り替えのボタンを設計してきました 。製造が難しい機構部にもこだわりました」と、ミストだけでなく機器全体の性能にこだわったと語る。
ミスト生成から研究開始
今回の開発は、従来商品に搭載されている刺激感のある浴び心地の「アクティブウエーブ」をミストに変えるという形で2年前からスタートした。
「開発にあたって、市場に流通しているミストを浴びてみました。ミストに期待されるのは肌当たりと洗浄力。ところが、ミストシャワーには湯温が低いものもあり、これが要因で『ミスト機能を使わなくなる』ことが想像できました」
ミストは「ウォームピラー」とは逆で、水粒 を細かくすると外気に触れて冷えやすい特性がある。反対に、水粒 を大きくすると肌当たりと洗浄力が悪くなる。肌当たりと洗浄力を保ったまま、温度低下を防ぐこと。これが開発のテーマとなった。
通常、ミスト系シャワーはノズルを複数組み合わせているが、1つのノズルだけでミストをどうやって出すかということから 研究を開始。ノズル1つの小さな試作品、形状違いや寸法違いを複数製作していった。
「最初の試作品はミストになりませんでした」と近藤さん。寸法などをいろいろ検証し、ミストを出せるようになるまでかなりの時間を要した。最初の30個くらいはミストにはならず、ようやくミストが出るようになったとき、試作品は50個を超えていた。
試作品が完成した後に行うのが浴び心地の検証だ。試作品のヘッド交換をしながら1時間くらい浴び続けることもあった が、「手荒れもしますし、浴び続けるとどの試作品がいいのか、次第にわからなくなってくるのです」と近藤さんは当時の状況を振り返る。時には開発メンバー以外にもモニターしてもらい意見を収集。 酷評されたこともあったが真摯に受け止め、商品開発に活かしていった。
試作品は、流速、粒径を計測して数値化していき、試していくうちに、人間が心地よく感じる数値が見えてきた。最終的に納得がいくミストが出るまでに、作った試作品は200個を超えていた。
キメの細かいミストにこだわる
ミストのきめが細かく柔らかい吐水を実現した試作品ができあがったものの、次の課題がお湯の温度。ミストを細かくするとお湯の温度が下がりやすいため、浴び心地と温度を両立するのは相反する要素を両立させる必要がある。「これが厳しい試行錯誤の始まりでした 」と近藤さんは言う。
試作を何度も繰り返し諦めかけたなか、転機となったのが先輩の言葉だ。当時、近藤さんは温かさを維持しつつ均一なミストを出すことに行き詰まり 、2種の異なった大きさの水粒が出てくる、エリアを上下に分けた吐水を試していた。そんな折、モニターに協力してくれた先輩の女性社員から「こんなミストなら使わない。ごまかしては駄目」と言われ、「あきらめずに、元々目指していた全てのノズルから出るきめ細かく浴び心地の良いミストを実現することが大切」だと気付いたという。「その言葉があったから、粘り強く最後までやり遂げられました」
昨年12月には社内でモニターを実施。そこで「柔らかくて気持ちいい。このミスト、粒が細かいのに温かい。空気に触れる部分のバランスをうまく調整できたね」という感想があり、「コンフォートウエーブシャワー 3モード(ミスト)」は完成した。
シャワーヘッド単体(品番:THC95)のメーカー希望小売価格は3万8170円(税込)。家電量販店の理美容売り場向けにイメージカラーボックスにはいった「NATURAL CARE MIST SYAWLA(ナチュラルケアミスト シャウラ)」品番:THYC96-1・THYC96-2(オープン価格)も販売。
「NATURAL CARE MIST SYAWLA(ナチュラルケアミスト シャウラ)」 (オープン価格)
ミストのノズルカラーは ローズトープ・サンドベージュの2色を展開
<注記>
※1「ウルトラファインバブル」は、一般社団法人ファインバブル産業会の登録商標です。ナチュラルケアミスト吐水の1mLあたりに含まれるウルトラファインバブルの平均個数は約1,880万(参考値)平均粒子径は約0.11μm(参考値)。第三者機関にて計10回測定 (測定装置:Nano Sight NS500)。
※2 従来品:TM690C1(1987~1998年商品)最適流量10L/分。コンフォートウエーブシャワー:TBV03456J(2024年~商品)最適流量6.5L/分。※最適流量とは(一社)日本バルブ工業会の定める方法に基づき、社内モニターにて測定した「一番使いやすいと感じる流量」のこと。 ※お客様の使用状況によっては節水量がばらつく場合があります。
「コンフォートウエーブシャワー 3モード(ミスト)」特設サイト

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