~ドイツ取材リポート vol.1~
新素材で変わる洗面空間 薄く、より自由な形状が可能に
ドイツ・フランクフルトで開催される、世界的な衛生・冷暖房・空調の展示会「ISH」。19万人が訪れるこの展示会には、2,400社のメーカーが今後のヨーロッパの住トレンドを決定付ける建材・設備機器を披露した。3日間にわたる密着取材から、今回は洗面空間の最前線をリポートする。
厚さ2.5ミリを実現
洗面器のトレンドとして数年前から顕著なのが、以前より薄く、そして複雑なデザインの商品が増えていること。その要因となっているのが、新素材を使った陶器の登場だ。スイスの洗面器メーカー、ラウフェンでは強度が高く、薄く加工しても割れにくい「サファイアセラミック」で作られた商品を2年ほど前から販売。
今年お披露目された最新の洗面器は、ふちの厚さ2.5ミリを実現した(写真1)。ドイツメーカーのデュラビットでも新素材「デュラセラム」を用いた商品を展示。シンプルな四角形ながらも薄手ですっきりとした印象の商品(写真2)が注目を集めた。
①ラウフェンの新作洗面器では、2.5~5ミリの薄いふちの陶器を実現する
②シンプルな四角形の洗面器だが、水栓の根元が盛り上がった形状になっている
また薄く加工できることで、従来の厚手の陶器ではできなかった、複雑な形状、自由なデザインが可能になった。洗面器とカウンターが一体になった商品(写真3)は、接合部分までふちの薄いスマートなデザインとなっている。またデュラビットでは、オーガニックな洗面空間を提案するシリーズ「スタルク・オーガニック」を展開。同シリーズでは木の枝を模した曲線的なデザインの水栓金具と角がゆるやかな三角形の洗面器(写真4)を用いた。
③ラウフェンのカウンター一体型洗面器。このような複雑なデザインには、高い技術が必要とされる
④デュラビットの新シリーズ「スタルク・オーガニック」。カウンターには厚さ5センチの無垢材を使用
デュラビットジャパンの小池庸輔さんは「新素材だけでなく、高い製造技術にも注目してほしい」と話す。「陶器は焼くと収縮するため、それを計算して作る必要があります。当社では3代前から同じ工場で働く職人も在籍しており、複雑な形状の製造もできるところが強みです」。
水栓にガラスを使用
洗面器だけでなく、そこに用いる水栓金具にも日本では珍しい個性的なデザインが数多く見られた。ヨーロッパでは洗面空間も家のデザインを決定付けるものであり、水栓金具もインテリアの1つと見なしているためだ。
トレンドの1つは、異なる素材の組み合わせ。ドイツの水栓金具メーカー、ハンスグローエでは「AXOR スタルクV」(写真5)が注目を集めた。同商品は蛇口付近が縦に半分に切ったようなデザインとなっており、全体にクリスタルガラスを用いている。そのためレバーをひねると配管から水がトルネード状に湧き出る様子を直に見ることができる。その美しさを一目見ようとする来場者で展示スペース前は常に混雑していた。
⑤ハンスグローエの注目商品「AXOR スタルクV」。ガラス本体はベース部分から取り外し可能で、手入れも楽。ベース部分はホワイト以外に、ニッケルやゴールドから選べる
もう1つのトレンドが、高さのバリーション。ヨーロッパでは洗面器をカウンターに埋め込むのが主流だが、置型、半埋込み型などの人気も高まっており、展示会でも異なる洗面器の高さに合わせた水栓金具が多数展示されている。置き型の洗面器を前提とした背の高い商品(写真6)、埋め込み型に使う、低い位置から滝のように水が流れる水栓金具(写真7)など、様々なニーズに応える水栓金具を各社が発表している。
⑥アメリカ、コーラー社の洗面ボールと水栓金具。高さだけでなく、色のバリーションも豊富
⑦ハンスグローエの水栓金具。弱い水流でも、水が滝のように左右に広がる
会場 : ドイツ・フランクフルト国際見本市会場
来場者 : 19万8000人展示
面積 : 26万平米
出展社 : 2465社
会期 : 2015年3月10~14日

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