~ドイツ取材リポート vol.5~
換気扇内蔵で開放的なキッチンに 洗面2台収まる広々としたバスルーム
5回にわたるドイツの住生活を伝える、この連載記事も最終回。今回は、フランクフルト市内にある大型住宅展示場をリポート。特に日本とは違いの大きい「キッチン」、「バスルーム」、そして「外観」という観点から、ドイツの住宅事情を紹介する。
木の天板で色彩を統一

(写真1)日本では珍しい木製の天板。床や壁と同系色のものを用いている
ドイツのキッチンの大きな特徴は、「見せること」を意識している点だ。
伝統的な住宅を意識したモデルハウスでは、オレンジがかった茶色の床や壁にあわせるために、キッチンの天板に同系色の木を採用(写真1)。これによりキッチンからリビングまでの色彩を揃え、空間の統一感を出している。また窓枠やドアにも似た色の木が使われており、空間の調和をより高めている。
ドイツではシンクとコンロがシンクから独立し、家具のような佇まいになっているキッチンが多く見られる。さらにキッチンをすっきりと開放的に見せる工夫として、コンロ本体に換気扇が付いている場合がある(写真2)。日本と比べると、コンロで調理する機会が少なく、油煙が立ち上るような調理も少ないので、大型のレンジフードがそれほど必要でないという点も換気扇内蔵化の要因になっている。

(写真2)IHコンロ中央にあるのが換気扇。頭上のレンジフードがないので、開放的な空間に仕上がる
また、シンクは国産メーカーのものに比べると、やや小さめのサイズとなっており、キッチン全体として日本よりコンパクトな印象を受ける。
浴槽、トイレ、洗面を1室に集約
日本でバスルームと言えば浴室のみを示す言葉として使われることが多いが、ヨーロッパではバスタブ、トイレ、洗面などが設置された空間を指す。1室にこれらが集約されているが、空間全体は広く感じられる(写真3)。洗面も家族が同時に使えるように、2台設置してあるケースもある(写真4)。

(写真3)6畳ほどの空間にバスタブ、トイレ、洗面、さらにシャワーブースが設置されている
また日本ではあまり見られないが、ドイツでは2階にバスルームがあることがほとんど。これは1階が来客を迎え入れるパブリックなスペース、2階が家族のプライベートなスペースという考え方で住宅が設計されているためで、寝室や子供部屋なども2階にあることが多い。

(写真4)住宅展示場に立ち並ぶ、モデルハウスの1例。モダンなデザイン、伝統的な造りなど様々で、住んでいる地域の規制に合わせて家を選ぶ
厳しい規制が美しい景観つくる
今回取材した住宅展示場には、80軒ほどのモデルハウスが立ち並ぶが、ユーザーはどれでも自由に家を選べるわけではない。ドイツでは各地域の自治体ごとに、建築可能な家の基準を定めているため、自分の地域の規制に合わせた上で、好みの家を選ぶ必要がある。規制の内容は様々で、屋根の角度、外壁の色、窓の大きさなど外観に関わるものから、道から玄関までの距離を定めている地域も存在する。
日本人には窮屈にも感じられるこのような規制によって、住宅街では同系統の住宅が建てられ、ヨーロッパらしい統一された美しい街並みが実現されている。
会場 : ドイツ・フランクフルト国際見本市会場
来場者 : 19万8000人展示
面積 : 26万平米
出展社 : 2465社
会期 : 2015年3月10~14日

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