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プロ顔負け、地域巻き込む設計
地方にある空き家をリフォームし、地域のコミュニティスペースに再生する学生たちの活動が注目を集めている。これを行うのは、芝浦工業大学(東京都江東区)の学生たちによって組織された団体「空き家改修プロジェクト」。手探りで地域貢献に奔走する、彼らの取り組みを紹介する。
徳島県那賀郡木沢町でのプロジェクト。築140年以上の古民家を、ゲストハウスに改修した。地域の職人たちから伝統工法を学び、一緒に作業を進めた
活用されない体験バネに
同団体は、建築、設計、インテリアを学ぶ学生約50人から成る。これまで5つの地域で、消防団の倉庫をシェアキッチンにするといった活動を行ってきた。まず自治体から要望を受け、参加したいメンバーでチームをつくった上で、自治体の予算を使いながら改修工事を行う。建物の耐震性、構造検査などは学内の先生に協力してもらうこともあるが、空き家改修プランの企画、工事などはすべて自分たちで行う、学生主体の団体だ。
同団体が発足したのは、2014年。建築を学びながら静岡県東伊豆町の役場でインターンシップを行った森本健介さんが、「空き家を改修して地域住民の憩いの場をつくってみたい」と思い付いたことだった。森本さんは、大学が実施する学生活動支援プロジェクトに応募。支援金50万円と、活動に賛同する学生と役場の協力を得て、同町稲取に休憩所「水下庵」をつくりあげた。
これを機に、学生の地域貢献活動が華々しいスタートを切った―――とはならなかった。現在、同団体の代表を務める修士1年の小知和建吾さんはこう語る。
「完成したものの、当初思っていたほど地域の人たちには利用してもらえませんでした。地域の人が本当に必要とするものをつくる難しさを実感した」
とはいえ、この活動はネットメディアなどで取り上げられ、注目を集めた。すると、別の自治体からも、同じように地域の空き家を活用してほしいという要望が舞い込むようになった。さらに東伊豆町役場からも、別の空き家を使った依頼も来た。次こそは多くの人に利用してもらえるものをつくりたい―――そんな思いで再始動した彼らが考えたのが、「地域を巻き込み、一緒につくること」だった。
東伊豆町稲取の第2期プロジェクト「ダイロクキッチン」。消防団の器具置場を、シェアキッチンに改修
役場への連絡「彼女より多い」
参加メンバーの1人、修士1年の奥野駿さん。静岡県裾野市のプロジェクトメンバーであり、月1回は現地を訪問し、役場の職人、地域住民らとミーティングを行い、改修プランづくりを進めている。さらに日々こまめに役場職員と連絡を取り合っており、「彼女より役場のおじさんと連絡を取る回数が多いかも」と苦笑する。

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