【神谷コーポレーション湘南社長インタビュー】室内ドア「27番目からの逆襲」へ
神谷コーポレーション湘南 神谷忠重 社長
誇りを持ち、愛される商品をつくる
ドア専門メーカーの神谷コーポレーション湘南(神奈川県伊勢原市)。自社ブランドの室内ドア「フルハイトドア」発売から10年で業績が約7倍になり、その後も順調に売り上げを伸ばし続けている。2005年に開発したこのドアは、天井まで高さがあり、開けたときには空間に広がりをもたせ、閉めているときには壁面化するので圧迫感を与えない。同商品の開発に至った経緯や社員が誇りを持てる商品開発がどのように行われているのかを神谷忠重社長に聞いた。
【聞き手/企画開発部 長田京子】
ドアの固定観念を覆した「フルハイトドア」
――天井まで高さがあるハイドアの先駆者である御社ですが、「フルハイトドア」を開発するまでは大手住宅メーカーのOEM専門メーカーでした。何をきっかけに下請けから脱却したのでしょう。
住宅メーカーに言われたものを安くつくる存在ではなく、誇りあるものをつくろうと思ったんです。
私がIT業界からこの業界に入ってきて違和感を覚えたのは、例えば住宅雑誌で取り上げられるのは住宅メーカーではなくて建築家がつくった作品で、住宅メーカーは広告を出すくらいであるということでした。自分たちがつくっているものは何なのだろうという思いがありました。
日本のドアはこのままで立ち行くのか? という思いもありました。イタリアなんかのドアを見ると日本と全然違う。ヨーロッパのドアは枠という概念がなく、生活を彩るものです。それに対して日本は一棟単価を下げるための調整弁として建具を扱っているようなところもありました。
当時は社員も誇りを持っていなかったですよ。工場で最後に梱包するところをアルバイトがやっていたのですが、ある時彼の雑な作業を見て「君がこのドアを買うとしたらこんな扱いするか?」と聞くと「こんなドア買いませんよ」と言われたんです。何てことを言うんだ! と思った1秒後には「そうだな。俺も買わない」と言っていました。もうやめようと思いましたね。
――自社でブランドをつくるとなったとき、なぜフルハイトドアだったのですか。
2004年頃、家をつくる際にこだわるパーツを聞いた調査があったのですが、インテリアだとキッチンやユニットバス、トイレなどの30部品がある中でドアは27番目でした。こだわって選ぶような商品ではなかったわけですよ。
だから同じことをやっていても誰もこちらを向いてくれないので、商品戦略でいくしかないと。2000の枠付きの建具をつくったところで誰も興味を持ってくれません。デザインで「シンプル&モダン」を売りにしたところで、流行り廃りで負けてしまいます。高さがあり目線の先に蝶番がなく、かつ反らないものをつくれば勝ちだと思いました。
――枠があって当たり前だったドアの固定観念を覆して唯一無二の商品をつくったんですね。
視点の抜けができ部屋が広く見えるので、うちのドアを導入した物件は全て契約が決まるなどして、ビルダーさんからも感謝されました。細かいことよりも、お客様がパッと見て空間が広く見えるという感覚が大事ですから。
営業の仕事は商品開発のネタを掴むこと
――かつては社員が誇りを持っていなかったとおっしゃっていましたが、今の御社はフルハイトドアに愛情を持った社員の方が多いことが印象的です。

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