4月に新たな工業会「KFタイルホールド工業会」が始動 タイル剥落を工法で防止
KFタイルホールド工業会 松川幸弘 理事長
外壁タイルが剥落すると大きなトラブルを招きかねない。しかし、外壁のメンテナンス費用は高く、オーナーの大きな負担となっている。その問題を解決するのが新商品・KFタイルホールドだ。耐候性に優れるだけでなく、工程数が少ないため施工費用を大幅に圧縮できる。今年4月、「KFタイルホールド工業会」(山口県下関市)を立ち上げ、大規模修繕の業界に参入する松川幸弘理事長に今後の展望を聞いた。
【聞き手/報道部長 福田善紀】
対象面積は2億8600万平米
――KFタイルホールド工業会とはどのような団体ですか。
最初に新商品について説明します。KFタイルホールドは独自の樹脂合成技術によって開発されたポリウレア樹脂塗料のこと。この樹脂を用いて外壁タイルの剥落を防止することをKFタイルホールド工法といいます。もともとは、首都高速道路の壁高欄のコンクリート剥落防止工法として開発され、2019年6月に採用。2020年度は約4万平方メートルの施工実績を有します。
しかし、首都高速道路のコンクリートだけでは市場が限られています。そこで着目したのがビル・マンションの外壁タイルです。建築基準法によって、タイルは10年に1回点検する法的義務があります。そのタイミングでビル・マンションの大規模修繕に導入するため、コンクリート剥落防止工法用樹脂を建築用に改良しました。
ビル・マンションは大規模工事であり、専門の人がいないと業界にはPRできません。そこで「KFタイルホールド工業会」を立ち上げました。4月に総会を開催して正式にスタートしました。
私が理事長を務めますが、大規模修繕に詳しい中村建設の中村英俊社長に専務理事に就いてもらいました。ターゲットとしているのは10階までのマンション。面積で換算すると2億8600万平方メートルが対象になります。
――KFタイルホールド工法の特徴を教えてください。
ポリウレア樹脂は柔軟性・防水性、機械的物性に優れます。塗膜外観は透明なので既存タイルの意匠性を損ないません。「促進耐候性試験」では40年相当の評価を得ています。
具体的な工法ですが、建物全面(タイル面)にローラーで下塗り、中塗り、上塗りの計3回塗ります。従来工法では4~6工程を要しますが、3工程なので工期短縮、人件費削減が見込めます。費用は、従来工法の1平メートルあたり約1万6000円に対して、本工法は1万2000円に設定しています。
会員数は限定100社
――剥落しそうな箇所はどのように対処するのですか。
工法自体はタイルが落ちないことを保証するもの。外壁タイルが浮き、剥がれが生じている箇所は事前にタイルを張り替える、もしくはピンを打つなどして処置します。その上でKFタイルホールドを施工します。また、外壁のハラミ(ある部分が大きくたわんで膨らむ)が生じた場合も従来工法でハラミを抑え、その後塗装します。
――大規模修繕の業界や団体に、この新工法をどうPRしていくかが重要ですね。
工業会とメーカーが一体となって、大規模修繕を手がける業者に情報発信していきます。また、一般的な塗料と違って不具合が起きた時、大きな事故になりかねないので施工まで管理しなければなりません。施工業者には工業会に入会してもらい、施工方法と座学の研修を行います。そして、研修を修了した人のみ施工できる仕組みを作っていきます。市場価格を維持することも重要なので会員数は約100社に限定し、これ以上は増やさない予定です。
――どのような施工業者が入会の対象となるのですか。
大規模工事になるので建設業許可を持つ法人となります。創業して5年以上で3期分の決算書を提出してもらい審査します。一般戸建て住宅と違って大規模修繕は特殊です。公募の場合、資本金1億円以上や直近の実績が1年以内で3億円の工事を3件施工しているかなど、資本金と施工実績の条件があります。そのため、厳正に審査しなければなりません。
「命を守る仕事」を
――今後の展開は?
まずは本工法の周知からはじめます。分譲・賃貸を問わずタイルを張っている物件はすべて対象となりますが、この工法は決まった職人しか塗ることができません。外壁の修繕は「命を守る仕事」。職人にはプライドを持ち、仕事に対する意識を高めてもらいたいです。
一方、大規模修繕を請け負う会社の経営者は50~60代が中心。ここまでワンマンで事業を拡大してきた経営者が少なくありません。そのような経営者が引退する時、会社に財産として何が残せるか? 工業会の会員になることで職人の技術が高まり会社が継続する。本工法をそのような武器にしてほしいと願っています。
中村英俊 専務理事

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