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野原グループ、建設業のDX化本格推進

野原グループ、建設業のDX化 本格推進

野原グループ
野原弘輔社長
1564号(2023/08/14発行)13面
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野原グループ(東京都新宿区)が建設業のDX推進に本格的に動き出した。同社の施策の中心となるのがBIM(Building Information Modeling)設計・生産・施工支援のプラットフォーム「BuildApp(ビルドアップ)」。活用した現場では「石膏ボードの張り時間50%減少」といった大きな効果も出てきている。具体的な取り組みと今後の構想について野原弘輔社長に話を聞いた。

生産性3~5割アップ

完全データ化で劇的な業務効率化

野原グループ 野原弘輔社長野原弘輔社長

── なぜ、「ビルドアップ」を開発・提供されようとしたのでしょうか。

長いこと建設産業のデジタル化をフォローしてきて、建設業界の効率が悪いことは分かっていました。たとえば、擦り合わせが多く、コミュニケーションの取り方などすべてがアナログで煩雑。逆にそこにビジネスチャンスがあるなと思いました。

── 建設業界は業務改善が進んでいるとは言えず、まだ始まったばかりではないですか。

私は、いろんなところで改善は進んでいると思っているんです。今では当たり前になっているチャット的なものも、なかった時のことが思い出せないくらい当たり前になっていますよね。

ただ、大きく変わる部分が必要で、それが設計者・施工者・メーカーなどの工程間で煩雑だった建築情報を3Dモデルで一元管理するBIMだと思っています。情報に関する扱い方や考え方が、これまでの建築のプロセスと根本的に違っています。移動が馬から自動車に変わるぐらいのイメージでして、人間がやらなくてもよいものをどれだけ置き換えられるかにフォーカスされており、その部分はかなり進むと思います。ただ、馬に関わった人の何万倍の人が自動車産業で働くようになったわけでして、より人間が携わることへの付加価値が高くなってくると思います。

── 具体的にどんな効率化が進むのでしょうか。

フロントローディングという、前倒し可能なプロセスを工程の前半に持ってくることで、全体の負荷を下げ、生産性を上げることができます。住宅を手掛ける方も、よく現場に入るときに「段取りがすべて」と言われると思いますが、まさにそれです。住宅の方が躯体の精度は高いですが、あとから変更が出たり詰められていなかったりすれば生産性が上がらないですよね。BIMでは、すべてがデータ化されているので、そこにAIなど新たな技術が次々とのってくれば生産性が格段に上がっていきます。

── ビルドアップではBIMの活用をベースにして効率化を進めるわけですね。

たとえば、石膏ボードの工事をする場合、ゼネコンからBIMベースの図面をもらってきて、詳細施工図を作ります。そこで自動化と機械化が行われるので、あとはゼネコンさんがスケジュールやチャートに合わせて、いつどこまでやるとかといったことが全部出せるようになる。

そうすると現場で状況が見られますし、できたものの写真を見せて出来高にするなどの記録もできる。私どもも、いつどこで何が行われているかが分かるので、物流と連携して建材を適時届けられ、すべてに無駄がなくなります。つまり、現場にはプレカットされたものが届き、貼るべきものがすべて置かれる状況になる。翌日からスムーズに工事が始められるわけです。実証実験の現場では施工者の生産性が平均3〜5割上がっています。手戻りが多すぎる現場はプロセスが見えにくく煩雑で、本当に悪(あく)ですからね(笑)。

野原グループ BIMを使った内装工事では施工時間が最大20%削減する効果もBIMを使った内装工事では施工時間が最大20%削減する効果も

住宅リフォームでも大幅改善に

── リフォームの現場でもBIMの活用は可能ですか。

リフォームでも、たとえば部屋を直したい時や竣工後にMatterportカメラなどで写真を撮ってデータ化すると、BIMを使った提案ができるので、非効率が改善されると思います。現地調査では見えない部分や開けてみないと分からない箇所も多いと思うので、工数が減り、間違いなく大幅に効率が上がるはずです。

── ビルドアップが広がっていった先には具体的にどんな建設業の仕事の仕方になっていくでしょうか。

人間と機械がやる仕事が明確に分けられてくると思います。今までは、「機械は人間の補助」という位置付けでしたが、機械が完結できる部分が出てきて、建物の設計準備から完成までの流れでの役割分担が変わると思っています。世界中の建設産業で人が集まっていないですし、そうした未来が望まれていることなのかなと。そこで、新たに人間じゃないと、あるいは人間がやった方が良い付加価値の高い仕事が出てきます。人間がやるべき仕事をして、日給をどんどん上げていければ良いですよね。

── 今後、御社が目指す建設業の未来像について教えてください。

ビルドアップに携わっている社員を、ここ2年くらいで倍増させ、BIMやデジタルコンストラクションに関する情報を届ける「ビルドアップニュース」というサイトも立ちあげました。このように建設業界の業務効率化やDX化のすそ野を広げる活動も進めていくと共に、私どもは大手ゼネコンと協力会社、その他をつなぐレイヤーの役割をしっかり果たせればと思っています。足りない部分のお手伝いして、必要なサポートをしたいというのがコンセプトです。

会社概要
会社名 :野原グループ
創業年 :1598年
資本金 :1億円
従業員数 :967人(2023年7月グループ連結)
売上高 :1175億5100万円(2022年6月期グループ連結)

この記事の関連キーワード : BIM DX インタビュー 建築現場のDX推進 野原グループ

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