戦時中、セラックニスの開発から事業展開してきた東日本塗料(東京都葛飾区)。現場の声から、ニーズの大小にとらわれない製品開発により、錆止め効果のある鉄板屋根・鉄部用の一液水性塗料や電動攪拌がいらない2液ウレタン系塗料など独自製品を創出。近年では、環境性能が高く、人手不足解消にも役立つ商品開発を進める。開発に込めた思いや今後の展望について、細谷義憲社長に話を聞いた。
製品開発ベースは社会問題解決
気候変動と環境、職人不足に立ち向かう
細谷義憲社長
── もともとはニスの製造からはじまったそうですね。
昭和19年9月、東日本酒精塗料株式会社として、軍の統治下でセラックニスを製造する会社として始まりました。セラックニスとは、薬やチョコの、周りを包むのにセラックでコーティングしている天然素材の塗料です。今でも原材料から製造しているのは、私どもくらいだと思います。その後ウレタン系のニスや瓦用の塗料などの開発を進めてきました。
── セラックニスは、木部によく使われていたニスですよね。時代と共に、どのように製品を増やしていったのですか。
昔から現場密着型で、現場の声を反映して製品化していくのが強みですね。次にどういうものが必要か、営業等の声を基に開発を進めています。大手だと、ある程度の市場規模がないとできないでしょうが、ニッチなものでも取り組んできました。
── 具体的にはどのような製品ですか。
たとえば、SDGsを意識した塗料「フローンフルトップBio」ですね。自動車整備工場や倉庫の床に使う厚膜の塗料ですが、A液にバイオマス原材料を35%含有しており、塗り床材としては業界初となるバイオマスマーク35の認定を受けました。一般的な塗料に比べると、そこまで売り上げは伸びないかもしれませんが、会社として何をすべきかという使命感からできた製品です。
現在、3つの柱として「気候変動」「環境」「職人不足」を打ち出しており、これをもとに製品開発を進めています。最近は温暖化どころか沸騰化といわれ、多雨の地域も増えていますよね。雨の影響があっても塗膜を完成でき、暑さに耐えうる塗料の開発が至上命題です。
A液にバイオマス原材料を35%含有したフローンフルトップBio。一般塗料に比べて約20%のCO2低減効果が見込める
若い力とともに、新たな顧客を獲得
── 常に社会的使命を意識した開発をされていくのですね。
そうです。環境に優しいカーボンニュートラルに取り組むこともそうですが、2024年問題にどう寄与できるかも重要です。ハケやコテを握れなくなっている職人さんが増えるなか、ローラーなどで簡単に塗れて、工程数や乾燥時間を短くできる商品も開発しています。今までは2日かかっていた作業を1日でできるようにできれば、労働時間の短縮にもなる。先ほど申し上げた3つの柱のうち、どれかに必ず当てはめた製品開発を進めています。
── 環境貢献と性能担保をどのように両立していくのでしょう。
塗料にも新しい技術がどんどん出ており、両立できると考えています。たとえば、「フローンヌルサット」という水性床用2液タイプの塗料は、ある技術を使い簡単に缶の中で振ることでA液とB液を混ぜることができ、溶剤並みの性能が出るというものです。今まで水性塗料は攪拌機を使って混ぜないといけませんでした。
コロナ禍に工場が暇になった時に性能が良く、職人でなくても簡単に塗れると評判が広まり、2019年の発売以来、年120%くらいずつ販売数が伸び続けています。
── これからも同様の製品を開発していく予定ですか。
そうですね。例えば職人不足の面では、手攪拌で誰でも使える商品を広げようとしています。電動攪拌機でしか混ぜられなかったものを手攪拌でやるのは大変なことで、開発陣は苦闘していますが(笑)。
歴史と実績は自負していますが、新しいお客様にどう訴求するかが課題。社名の通り、東日本エリアを中心に展開してきましたが、今後は全国に展開し、差別化した製品をお客様にPRしていく考えです。若い人や、新しいことを考えられる人材の意見を尊重しながら、商品開発や会社の展開に生かしたいですね。
電動攪拌せずに使える「フローンヌルサット」の攪拌方法を紹介した動画も人気
会社名 | :東日本塗料 |
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代表者名 | :細谷義憲 |
本社所在地 | :東京都葛飾区 |
創業 | :昭和19年9月 |
従業員数 | :約70名 |
年商 | :約16億円 |

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