匠の会 尾身嘉一 理事長
首都圏の工務店が集まり結成された事業団体「匠(たくみ)の会」は、リフォームビジネスを強化しつつある。最近は耐震改修などを切り口にしたセミナーを開催しているほか、11月には会員による一斉現場見学会を行う予定だ。尾身嘉一理事長に話を聞いた。
パック提案を推進
―――匠の会ではいくつかのリフォームパックを作っていますが、その理由は何ですか。
元々、工務店はリフォームがつきものでして、新築だけではありません。自分たちでお客さんからメンテナンス時にどこか直したいと要望があれば、工事をしていました。ただ、本格的なリフォームとなりますとイメージが伝わりにくいので、やはり幾らぐらいかかるかを、お客さんに訴えないといけないだろうと。坪単価がこのぐらいで、この工事ができますと打ち出していったのです。
―――パックには300、とか500といった種類がありますが、具体的に何が違うのでしょう。
例えば総額300万円の300だとキッチン、バス、洗面、トイレ、給湯の設備交換だけになります。一番新しいeco500は先ほどの設備交換に、無垢のフローリングと左官壁の内装リフォームを標準化したものです。加えて、耐震や断熱リフォームをプラスアルファで加えることができます。
―――朝日新聞に定期的に広告を出していますが、反響はどのくらいありますか。
月2回の広告には、イベントの告知も入れていますから、すべてリフォームパックの告知ではないのですが、平均したら2ケタ弱くらいですね。
―――あと定期的に「家づくり大学」なる催しを開催していますが、リフォームをテーマにした回もあるのですね。
の「家づくり大学」は年間4回開催しているのですが、最近は耐震の相談なども多いのでリフォームのイベントがだいぶ増えてきました。講演終了後は相談会もやりますので、中には図面を持って来られる方もいます。
―――平均、何名くらい参加するのですか。
50~60名ほどですね。結構リピートの方も多く、今まで12回の開催で、7回来ている方もいますよ。この間契約しましたが、ちょっと勉強してからという意向だったようで、ずっと真面目に参加してました。
―――我々も初めてリフォームをする人向けの冊子などを作り、情報提供を行っていますが、まだまだエンドユーザーはリフォームに関する知識が不足していますよね。
あとエンドユーザー向けには、セミナーによる勉強だけではなく、現場も見てもらおうと11月に家づくり見学会を行おうと考えています。以前も行ったのですが、今回は趣向を変えて1ヵ月の間、テーマ別に見学会を行う予定でその中にリフォームの現場も入ってます。
―――完成後の住まいが見れるようなイベントですか。
工事の途中を見てもらおうと思っています。当然ビフォーの写真も見せますが、途中の方が完成後よりわかりやすく、喜んでもらえますね。首都圏は6つほどの地区がありますので、11月のタイミングで現場があるところで、やりたいと思います。
―――今後見学会は家づくり大学のように定期的に行う考えですか。
来年の今ぐらいまでは組みましたが、年間3、4回ぐらいの数になると思います。
省エネ設備と内装工事がついた500万円の内装パック
技術屋集団の強みを
―――ところで現在、会員社数は何社になりますか。
14社です。規模としては色々ですが、リフォームの伸び方はすごいですよ。新築はあまり増えてませんので、売り上げのプラス要因はリフォームだという感じですね。
―――ただ、最近は家電量販店などリフォームへの参入は多いです。会としてどのようなリフォームを推進し、強みを発揮していきたいと考えていますか。
できるだけ自然素材を使ったリフォームをしていきたいです。ただ予算の関係とかもありますので、皆が皆揃ってはいませんが、表面だけを改修するような会社はまずいませんね。また、技術屋の集まりで、建築士の資格を持ってる社員も多く、単なる口先だけの営業はやっていません。例えば外壁がこれくらいクラック入っていれば、内部がおかしくなっているなども、経験からある程度わかります。そうした点が他の会社とは違うと自負していますが、なかなか訴えることはできてませんね。
―――これからの国の方向性は、既存ストックの性能をあげていくことです。そうした点では構造躯体にかかわる提案まで、踏み込める力を持っていることは強いですよ。ただ、工務店はPRが苦手な方が多いと感じますが。
家づくり大学も、構造などの部分をテーマに話しています。私どもの取り柄は、それしかないですよ、営業がヘタですし。
―――理事長がホームページで掲載されてる100年長持ちする住宅という考えは一つのキーワードになりますよね。
私ども大工や工務店は大体100年くらい持たせるような家づくりをしていまして、特に会員はそうした思想を持っています。しかし、アメリカが60年、イギリスが80年とかをもとに、家の耐用年数の話をしても今の日本の国民には響かないことが問題です。スクラップ&ビルドの思想が全国に植えつけられていますから。そこを解決しないと私らも浮かび上がれないのではないでしょうか。10年、20年というスパンで考えなかったら思想も変わってこないと思いますよ。
―――ただ、今の住宅購入者には100年持つ住宅になるという説明しているわけですよね。徐々にでも啓蒙していくことが、必要だと思います。
当然、そうした考えを持ってる方もいます。だけど、残念な話として先日は世代交代して娘夫婦との2世帯住宅に建て替えようという話がありました。まだ壊すのがもったいないなっていうような構造体でして、びくともしない。お父さんはこれをうまく使いたいと言っていましたが、息子さんたちは乗り気ではなかったのです。間取りも古く、サッシも横長の形ですから。
―――もったいない話ですね。でも今後、定期的なメンテナンスをしつつ、今ある家を直す形でも暮らしやすい住宅になることを伝えていければ、リフォームする方も増えると思います。
それはありますね。時代に合わせて、作りあげていけばいいのです。母体がありますので、かかる費用だって新築と同じ100%ということはないですから
《 組織概要 》
所在地 * 東京都中央区 / 会員数 * 14社 / 理事長 * 尾身嘉一氏

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