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エコリフォームでエネルギー消費量を5分の1に

エコリフォームでエネルギー消費量を5分の1に

三菱総合研究所
小宮山宏 理事長
1021号 (2012/04/17発行) 4~5面
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三菱総合研究所 小宮山宏 理事長

三菱総合研究所 小宮山宏 理事長

エコリフォームの重要性をさまざまな場で提唱しているのが東京大学の前総長で、三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏だ。「築年数の経った家でも、断熱効果を3倍くらいに良くすることは難しくない」とし、生活を快適に、しかも初期投資も回収できるリフォームを推奨している。また、世界で最も進んだ超高齢化社会を迎える日本こそがその範を示せると主張し「プラチナ社会」の実現に向けたプロジェクトも推進中だ。(聞き手・本紙社長・加覧光次郎)

"魔法瓶"のエコ住宅でエネルギーを大幅削減

小宮山氏は今から10年前、省エネルギー仕様の住宅、通称「小宮山エコハウス」を建てた。複層ガラスと発泡断熱材をフルに活用して住まいの全体が魔法瓶のように高断熱化されている。さらにエコキュートや省エネ性能の優れた最新のエアコン、冷蔵庫、照明などを設置。太陽光発電システムも搭載し、エネルギー消費量を従来に比べ5分の1に減らせたという。

 ―――先生が自ら建てられた「小宮山エコハウス」には、総理大臣をはじめ各界の有識者も視察に訪れているとお聞きしていますが、実際の住み心地はいかがですか。
これは前の家と全然違いますね。ぼくは花粉症なんですが、ここに住んでから明らかに改善されましたよ。

 ―――以前住まわれていた家では窓が結露し室内にカビが生えたそうですね。
以前住んだマンションで南向きの部屋にかけられていたカーテンの下が10センチくらいカビでまっ黒でした。結露のためで、押し入れの中もカビだらけ。ぼくは環境の先生ですからね。自分の家がこれではまずいでしょ(笑)。それでこの家を建てたんですよ。

 ―――まさにその先生の花粉症は好例でしょうが、住宅の断熱化は健康も改善するという点が非常に重要なことですね。
去年、慶應義塾大学の伊香賀俊治先生が、非断熱住宅から断熱住宅に移った場合の変化について調査したデータを発表しました。それを見ると家を変えたらアレルギー性鼻炎は27%減っている。しかしそれよりさらに効果が大きかったアトピー性皮膚炎で60%減、気管支喘息も70%くらい減っている。心臓疾患に至っては著しくて81%も減少していますが、これはおそらく「ヒートショック」がなくなった効果でしょう。

 ―――「ヒートショック」で亡くなる人は1年で1万4000人を超えており、交通事故で亡くなった方の3倍ですからね。住宅の断熱改修によってこれを減らせることができるとしたら大変なプラス効果ですね。
伊香賀先生のデータが面白いのは、エネルギーだけを考えると、リフォームに使ったお金を回収するのに20数年かかるけれども、健康になって病院に行く費用が減少したことも考えると14年で回収できるというんです。国庫負担分まで入れると12年で回収できる。

 ―――リフォームにお金を投資した分が、日々の光熱費が減るだけでなく医療費コストも大幅に減るため、結果的にちゃんと戻ってくるわけですね。
そう考えると、断熱リフォームは国で補助して良いということ。確かに日本の財政は破綻していますが、これを日本社会のイノベーションで支えるというところが入らないといけません。ところで、実態として断熱リフォームはどこまで進んでいますか。

 ―――例えばペアガラスの普及率でみますと、新築住宅への取り付けでは9割くらいまで進んでいます。しかし既存住宅全体での普及はまだ2割程度でしょう。まだまだです。
断熱リフォームと一緒に家電製品の交換をすればより効果が大きいですね。例えば、エアコンは1990年のエアコンと去年売られたものを比べると電力消費は60%減っています。給湯器はそれこそエコキュートやエネファームに変えたらその効果は絶大。ただ、冷蔵庫などと違ってエアコンや給湯器は工事が入るので面倒くさい。だから断熱改修と一体化してやればよいと思いますね。

 ―――まさに省エネリフォームですね。
思い切って500万円くらいかけて本格的に改造すれば、断熱効果が3倍くらいよくなって、エネルギー効率も上がれば従来の5分の1くらいに省エネ化されると思います。

 ―――今は太陽光発電システムもブームになってきているようですが、これもただ取り付けるだけでは不十分で断熱リフォームを一緒にやらなければ本当の省エネになりませんね。
そうですね。断熱と太陽光、エアコンの交換、これらをいっぺんにやる。そうすれば太陽光発電への投資を回収するのに10年かからなくなるでしょう。

 ―――昨年の東日本大震災発生以後、原発の稼動が止まり、それがさらにソーラーのブームを呼びましたがいかがですか。
原子力の問題がいろいろ議論されていますが、ぼくはすぐにゼロにはならないと思います。けれども、だんだん減らしていって、20年か30年後にゼロにすることは十分可能です。ただ、その代わりを太陽電池だけで代替するというのでは間に合いません。その前にまず家の省エネ化を図ることが先決。これを現実に進められることが大切です

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