OKUTA 奥田勇会長
リフォーム有力店のOKUTA(埼玉県さいたま市)がpassiv design(パッシブデザイン)を家づくりのコンセプトに打ち出してから、3年が経過した。パッシブデザインの家とは、世界水準の断熱性を保有する住まいであり、中でも最高水準となると真冬の無暖房で室温24度を実現する。「2000万円のリフォームは驚かない段階になった」と話す奥田勇会長に事業戦略を聞いた。
2020年基準の家を
―――断熱改修自体、取り組むリフォーム会社が少数である中、どんな考えからパッシブデザインを打ち出したのですか。
僕らがしているのは、基本的に省エネ基準が義務化する2020年基準の家をつくりましょうという提案なんです。そこはすごくお客さんの琴線に触れる。なぜかというと2020年まであと6年しかありませんから。今から1000万円のリフォームをしても、新築でもそうですが、あと6年で価値のないものになってしまう。中古住宅でもそういった価値を見いだすようになってきていますので、今、一定のQ値、U値などを超した住宅にパッシブデザインという認定証をつけて出すようにしているのです。
―――Q値でいうとどのくらいの家ですか。
次世代省エネ基準のQ値が我々のⅣ地域で2.7ですよね。2020年基準が1.9以下といわれていますから、1.9以下にしています。この提案がパッシブデザインなんです。
―――御社では、パッシブデザインでもレベルをスタンダードクオリティ、ハイクオリティ、ウルトラハイクオリティーの3段階に分けていますが、スタンダードでもQ値1.9を超えているというわけですね。
もちろんです。ただ、住宅断熱の第一人者である西方里見先生に監修してもらっていますが、本当はQ値1・5以下でないとパッシブとはいえないねと話しています。群を抜いているのは1.0を切りますから、僕の家などは0.6。
Q値0.6の奥田会長の自宅
―――0.6は凄い。ただ、このパッシブ提案をすべての案件には盛り込めないですよね。
大型だけですね。ただ、例えばサンシェードをつけることなどもパッシブの概念ですし、外付けブランド、窓の位置変更もそう。パッシブデザインの考えを手本に提案するので、サッシも一般的なものではなく、断熱サッシを入れる。また、キッチンのリフォームであっても模様替えなどがあれば、考え方は提案します。パンフレットにも考えが入っていますし、ホームページもそうした作りにしていますから。
―――前期売り上げは52億3800万円でしたが、そのうちいくらぐらいがパッシブに絡みますか。
1割ぐらいですね。この高性能を頂点としてやるという考え方なんですよ。マンションはちょっとおいておかないといけませんが、一般個人住宅だと多分最高スペックだと思います。
最低費用は1000万円
―――いくらで条件に適合するリフォームができますか。
スタンダードでも1000万円は必要ですね。その上が1500万、2000万という感じですかね。
―――そうなるとパッシブを打ち出したメリットは単価アップですかね。
そう。あとは、社員の住宅作りに対する誇りは強くなってきていると思いますね。他社があまり踏み込めない分野ですので。
―――しかし、身につけるには相当な知識が必要になるじゃないですか。どのように教育をしているのですか。
外部から先生を招請したり、6カ月コースで研修を受けたりしていますね。正社員の中でも経理などは、やらないので営業部の180人ぐらいが受けています。
―――では、実際パッシブ提案できるレベルの社員は何人ぐらいになりましたか。
各店2人ぐらいだね。つまり全体では30人近く。
―――今後は、全員が提案可能なレベルまでベースアップするのですか。
パッシブの提案をすべてするわけではないので、量によります。お客さんがそれを求めているのは少しずつ分かっているけど、絶対量がないし、市民権も得られてないでしょ。でも2020年までに、制度の改正が進むと間違いなくエネルギーが低く抑えられる住宅が国策でもあるし広がる。
消費増税後の落ち込みに耐えられるのは、そうした価格弾力性のあるお客さんかなという考えもあります。お金に渋い人はぐっと落ちるので。だから売り上げにはこだわっていません。売上目標を掲げると、それを達成しようとするじゃない。そういう考え方じゃないんですよね。
新築を初年度11棟
―――あと、パッシブに関して言うと、新たに始めた10kW以上の太陽光を載せた新築住宅「パッシブゼロ」も好調のようですね。
消費増税の駆け込みで11棟受注しました。リフォームで2000万円だったら、やっぱり新築でという方がいるんですよ。床下からの断熱よりも基礎断熱した方が性能はよくなる。リフォームからの変更の受け皿として全店で店長が新築を受けられる制度にしたんです。研修をしてね。
―――そうなると、あくまでリフォームの受け皿であって、新築を本格化するわけではないのですね。
新築は今後減るでしょ。でもリフォームか新築かというときにはスポーンとはめたい。年間20棟ぐらいやれればいいと思っています。
―――最終的な、会社の到達点としては、どんな会社像を考えていますか。
イメージとしては、盤石な経営基盤をつくるということですね。大きくなると逆に弱くなるときがありますから。有料会員制度のロハスクラブ、あれは他社にないユニークな戦略なので、会員数が今1万2000ですが、5万とかにできればお客さんとの関わりも深くなる。そうすると他社も入り込めないと思います。

所在地 * 埼玉県さいたま市 / 資本金 * 6700万円
創業 * 1991年4月/従業員 * 294人(正社員251人、2014年1月現在)

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