東日本ハウス 成田和幸社長
東日本ハウスは、2020年グループ売上高1000億円に向け、リフォーム事業を強化する。今期計画(10月決算)は前年度比6.3%増の75億5000万円だが、6年後の20年には100億円突破となる110億円を目指す方針だ。今年4月には、東証1部上場を果たした同社の成田和幸社長に将来戦略を取材した。
5カ月で1部に指定替え
―――まずは1部上場おめでとうございます。2部への市場変更が昨年11月ですから、わずか5カ月のスピード指定替えでしたね。これだけ、期間が短かったのは何かわけがあるのですか。
ジャスダックから1部にいくには株式の時価総額が250億円以上ないとダメというハードルがあるんですよ。ところが2部からいく場合には40億円でいい。昨年、もう少し早く申請をクリアしていたら1部にいけたのですが、株価が下がってしまったので、20億円ぐらい足りなかったのです。それで11月は2部でもいいやと。
―――本当は直接1部の予定だったのですね。
そうそう、それが時価総額だけがクリアしていなかったものだから、期が変わって株主総会が終わったあとに、すぐに申請を出したんです。だから早かった。業績も1部の業績をだしていましたし。
―――ただ、消費増税や人口減で市場環境は厳しい状況ですが、新築着工の今後の数はどのように見ていますか。
戸建てで年25万戸。それが次の消費増税後に来るのではないですか。昨年は15%伸びて35万戸でしたが、今2、3割ダウンしている。すると今後は25~30万戸の間で、厳しいときは25万戸を割るかもしれない。そこで、私どもは大体2500万円から上の金額のお客さんをターゲットにしてきましたが、平均2000万円のJ・エポック(金物工法の木造注文住宅)も始めたわけです。両方対応できることでパイが広がるじゃないですか。
―――つまり、2020年のグループ売り上げ1000億円に向け、新築の売り上げも拡大していくということでしょうか。
新築で750億円。私が社長を受けた11年前の数字まで戻します。過去の経営者に感謝ですよ、2500万円以上の住宅しかやってこなかったから。だから25万戸になっても相手にできる客層は増えます。それと対応する拠点増を図っていくと750億円までは行けるだろうと。あとは、ホテルとビール、M&Aの多角経営と、リフォームです。
OB6万3000件で40億
―――リフォームは2020年時点でどのくらいの規模を想定していますか。
110億円です。ちなみに前期が71億円。今期が75億5000万円の予定です。
―――リフォーム拠点はどの位ありますか。
新築で61拠点ですが、リフォームは59カ所。1人のところは営業所とカウントしていないので東日本ハウス事業部が存在するところすべてにリフォームがあります。J・エポックは二十数カ所ですからリフォームの方が展開している。なぜかって6割が既客の仕事ですから、もれがあるともったいないじゃないですか。
―――他社に顧客が流れないようにする戦略ですね。提案先の新築OB数はどのくらいでしょう。
約8万棟です。そのうち10年以上経過し、リフォーム事業部で管理しているのが6万3000件。そこで四十数億円の売り上げがあります。
―――新築も紹介が多いのですよね。
新築の紹介は60億円ほどありますから、リフォームと合わせ単体売り上げ480億円のうち100億円強が既客関連の仕事になります。
―――だから利益が高いのですね。営業利益で約10%出ているハウスメーカーは他にありません。
そう。無駄な広告は打たないし、広告も売り上げの1.5%までと決めている。経費がかかる経営をしていないのですよ。極端に伸びなくてもいいから、凹まない経営に重点をおいているのです。でも建物の販売価格はベンチマークしている会社よりも必ず50万円ほどは安くしている。それで利益が多く出せるのは経費です。展示場も最小限度ですし。
―――全体人員で割り出した生産効率はどのくらいですか。
新築は3800万円ぐらい。ただ、一流メーカーは5000万円ありますので、そこまで生産性を上げようとしています。そのためには、組織の無駄なものをスリムに作り直すのと、営業の生産性を1000万円強上げることです。
―――リフォームの生産性はどのくらいでしょう。
リフォームは多能工で現場管理も自分たちでさせていますので5100万円あります。でも6000万円やってくれという話をしている。本社人員の負担分がありますから、その分もいれて人員の生産性を出すと6000万円が5000万円ぐらいに下がるのです。
―――管理まで一気通貫で行う理由は。
営業を営業専門に分けてしまうと管理部門の人員が必要です。新築の直間比率までいかないにしろ比率として1対1は行くはず。すると1人あたりの生産効率を5000万円にするには1億円売り上げないといけない。
それとリフォームは住みながら行いますから、言った言わないのクレームが多くなってしまう。だから多能工なのです。ただ、設計、工事経験者でないと無理という制約がありますから、50歳以上の新築営業なり工務なり自分で判断できる人をリフォームにまわす。その代わり65歳まで雇用しますよ。給料も稼いだときは出してあげる。年齢が高いから下げるということをしないでね。
―――リフォームの平均単価は120万円ほどだったと思いますが、売り上げを拡大させるために、単価を高めるのか件数を増やすのか、どちらの戦略ですか。
既客が6割という形態ですから住友不動産のように1棟まるごとというのが少ないのです。だから単価は今のバランスでいいかなと。そこで、新規を増やしして既客との割合がフィフティーフィフティーまでもっていければと考えています。
ショールームを拡充
―――新規向けの戦略の1つとなっているのが、2013年の1月から首都圏に展開し始め、5店舗を展開するショールーム「華ぷらざ」ですね。近々で出店予定はありますか。
今は場所がないのでちゃんとした通りに面しているところを探している段階です。他の拠点は6割が既客というベースがあるのですぐに黒字になりますが、都内の新店舗は既客がない。すべて新規なので、目立つ路面の1階に構えないとうまくいかないですよね。
2013年にオープンしたショールーム「華ぷらざ」1号店
―――今後の拠点展開はどう考えていますか。
あと2、3拠点は欲しいですね。16号線にはほとんど支店がありますから、環八と16号の間に作って行く。今の拠点は環七に3店舗、それと国立と川口です。
―――既客を中心にリフォーム提案している首都圏の既存店の状況はいかがでしょうか。
新築は結構激戦ですが、リフォームは全拠点黒字です。新築とリフォームを合体させて黒字もありますね。横浜も7億3000万円で今回黒字化しましたが、その前は赤字。新築は拠点の2割が赤字ですよ。
―――リフォームは稼ぎ頭なのですね。一番売り上げの大きな拠点でどのくらいでしょう。
4億円。小さい出張所などで5000万円ほどです。北海道6拠点で11億円、東北も6拠点で16億円、細かいものは入れないでね。営業所以上は私が電話で毎週管理して電話するんですよ。「実績何%や」とか「ダメだ、もうちょいいけ」などと言ってね(笑)
―――リフォームも合わせて聞くわけですか。
聞きますよ。毎週月曜日、全部で100カ所。今日も午前中にやったばかりです。9時から10時半ぐらいまで。あんまり細かいことはいわず、声を聞いて、ちょっとアドバイスしてあげる。店長の声の出し方、答え方で大体分かる。11年やっていまして会社を立て直した秘訣はこれですから。
―――その効果か、大分借金が減りましたよね。
いまは160億円、現金が65億円ありますから実質借金は100億円です。ピークは580億か600億ありました。ホテル投資だけで380億ぐらいしていましたから。来年、再来年で実質無借金になると思います。
―――最後に将来に向けたリフォームの見通しをどう考えていますか。
今の倍ぐらい人員を増やしてもやってやれないことはないと思います。10年ぐらいたちましたらリフォームでみんなの給料を払って、新築でボーナス分を稼ぐぐらいマーケットが変わっているかもしれない。ただ、すぐに売り上げに対する新規割合を増やし、既存が3割、新規が7割のような発想はまだない。なんでかというと既客もちゃんとカバーできていないからです。今は既客500件に営業マン1人ですが、300件に1人とか比率を上げていき、それから先じゃないですか、新規という発想は。

本社 * 岩手県盛岡市 / 設立 * 昭和44年2月
資本金 * 38億7337万円 / 連結売上高 * 563億9700万円(2013年10月期)

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