旭ファイバーグラス 狐塚 章社長
日本初のガラス繊維専門メーカーとして1956年に創業された旭ファイバーグラスは、グラスウール断熱材のトップメーカーだ。近年は既築住宅の断熱改修に積極的に取り組んでおり、昨年「リフォームグループ」を組織化。今年7月にはリフォーム対応の新商品を発表した。狐塚章社長に話を聞いた。
15万円で断熱改修が可能に
――7月から発売を始めた「リフォエコ」シリーズは、簡易な断熱改修が可能であると話題になっていますね。
今回「リフォエコパネル」と「リフォエコボード」の2種類を出しましたが、両方とも今ある壁の上に施工できるリフォームしやすい商品です。今までの断熱改修は、壁をはがして全部入れ替えるような大がかりな工事になるため、「それだったら建て替えたら?」という話になることも多かったんですね。しかしこの商品なら、施主様が住みながら作業できます。
リフォエコボード
厚み12㎜、幅910㎜、長さ1820㎜の石膏ボードと同じサイズ。1枚あたり約6㎏。
リフォエコパネル
化粧クロスで表面加工を施し、住宅モジュールに合わせた455㎜角のパネル
――「リフォエコパネル」と「リフォエコボード」の違いは何でしょう。
「リフォエコパネル」は、大型施設などでも使用できる455ミリ角パネルで、壁の上から専用面ファスナーを使って貼り合わせていきます。取り替えも容易ですし、コンセント箇所はカッターで切れるなど、現場対応が自在にできます。12ミリボードの「リフォエコボード」は、壁にビス止めか接着材で取り付け、パテ処理をし、クロスを貼って仕上げます。
――作業が簡易であることに加えて、コスト面でもかなり抑えられているようですね。
当社は真空断熱材も扱っていますが、確かに薄くて性能は高いけれど値段も大変高くなってしまいます。その点、「リフォエコパネル」の価格は6畳2面の壁で約40万円、「リフォエコボード」は15万円で、お手頃だと思います。
――気軽に断熱改修に取り組んでもらおうという狙いでしょうか。
おっしゃる通りです。まずはリフォームしやすい商材として、1部屋からでも多くの方に体感していただけるよう開発しました。素材には、当社の高性能グラスウール断熱材「Aclear(アクリア)」を使い、プレスして密度を高めています。当社調査では表面温度がパネルで、木造2.5度、RC造4.5度、ボードで2度、3.5度上がります。体感温度もその分違ってきますので、効果は十分感じられると思います。
――その「アクリア」でも、さらに上位商品を出されましたね。
「アクリア」シリーズは、販売から9年程経ちましたが、今は当社の断熱材売り上げの全体の3割くらい、住宅向けの半数を超えて好評をいただいています。新発売の「アクリアα」は、住宅用グラスウール断熱材では世界初の3マイクロメートルという超細繊維です。薄くても世界最高水準の断熱性能を実現できますので、壁におさまりやすく省資源になります。
断熱の啓蒙には体験が重要
――日本人は我慢強いのか、寒い家に住んでいても「冬、寒いのはあたり前」と我慢してしまい、断熱リフォームはきっかけが難しいようです。
当社社員の例ですが、地方で1人暮らしの母親が水回りのリフォームを地元の工務店に頼んだところ、一緒に断熱改修を提案されたそうです。 その家は、連れて行った孫が風邪をひくくらい寒いため、相談された息子も「やった方がいい」と勧め、リフォームしたんですね。息子が正月に帰省したらとっても快適で、母親も満足してご近所まで話をしにいくくらいだそうです(笑)。断熱リフォームは、そうしたベネフィット体験がとても大事だと思います。
――たしかに断熱は、実施した人はみな「やってよかった」と言いますが、一般的にはその快適性に気づかない人が多いですね。
住まいのリフォームは、いわゆる「困ったリフォーム」で、「給湯器が壊れた」「屋根が雨漏りした」など、修繕の場合が圧倒的に多いですよね。もっと住まいの性能や機能が向上することが重要です。当社では「省エネ」だけでなく、風邪をひきにくくなる「健康」や、家の中の温度差が小さくなる「快適性」向上と合わせたエコリフォームをアピールしています。
省エネ意識を高める努力が必要
――断熱に関しては国の基準も徐々に上がって来ましたが、ストック全体でみるといまだ「無断熱」の住宅が39%を占めるという数字もあります。
新築でも戸建ての年間30万戸のうち、平成11年の「次世代省エネ基準」の「等級4」に適応した住宅は5割、15万戸程度でしょう。
さらに既築のストックになると、5000万戸あるうち5%と、まだまだ低い状態だと思います。
――住宅の省エネ性能に対する意識を高めるには、もっと啓蒙する努力が必要ですね。
例えば住宅エコポイントをきっかけに、「等級4」の適応住宅が5割程度まで上がりましたが、制度が終了すると「等級3」に戻っていったりするんですね。平成25年の省エネ改正では、機器の一次エネルギー消費量とトータルな評価になり、躯体の強化はありませんでした。私どもも、もっと断熱改修の啓蒙に取り組んでいかないといけないと思っています。
――確かに補助金では一時的な効果で終わることも多く、普及には継続的なメリットなどがないと難しいようです。
今、日本でも住宅リフォームで家の価値を上げようとしていますが、エネルギーについてインセンティブになるような仕組みが必要だと思います。例えばヨーロッパでは、賃貸する際に「断熱」の項目があり、「エネルギーがかかる家」かどうか、数字で分かるんです。日本でも賃貸や売買の際に、断熱のベネフィットが分かりやすくなるといいですね。
――既築の断熱に特化した「リフォエコ」シリーズは、どのくらいを目標としていますか。
当社では、昨年「リフォームグループ」を組織し、今回リフォーム向け商材を出したばかりで、今はどのようなチャンネルで拡大させていくか、様子をみているところです。リフォームに関しては、ビルダー支援では昨年、全国で500回くらい工務店さん等を対象に商品や高断熱の施工方法のセミナー、講習会を開催しました。エンドユーザーさん向けにはテレビCMなどを始めています。多くの方にご理解、ご体験いただけるよう努力していきたいと考えています。

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