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TOTO喜多村社長、水洗式腰掛トイレの...

TOTO喜多村社長、水洗式腰掛トイレの国産化から100年 

TOTO
喜多村 円社長
1138号 (2014/09/30発行) 18面
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TOTO 喜多村 円社長

TOTO 喜多村 円社長

リフォームで、忘れてきた"夢のピース"を当てはめる

 TOTOは、3年後の2017年に創業100周年を迎える。これまでの1世紀近くにわたり、同社はトイレでは和式に代わる水洗腰掛便器の普及を推進。またユニットバスを日本で初めて開発し、機能そのものも日々進化させている。今年4月に就任した喜多村円社長に、TOTOのもの作りの原点と今後の戦略について話を聞いた。

(聞き手/本紙社長・加覧光次郎)

研究の積み重ねで業界初を連発

――今年は東京オリンピックから50年。ユニットバスをTOTOさんが日本で初めて開発されて以来、50周年ということで話題になりましたが、水洗式腰掛トイレもちょうど今年が100周年になるそうですね。

 まだTOTOが会社としてスタートする前の話です。当社の創業者(大倉和親氏)が欧米の生活文化に触れ、私財を投じて衛生陶器の国産化にチャレンジしました。日本でまだ下水道がない時代に、ですよ。「いずれ日本も水洗トイレになる」という強い信念と、まず作ってみたいという熱い思いがあったそうです。

TOTOがもの作りの原点とする、日本初の水洗腰掛便器と、最新トイレ
TOTOがもの作りの原点とする、日本初の水洗腰掛便器と、最新トイレ

――100年前は、どの家も汲み取り式の、いわば「厠(かわや)」の時代ですよね。そんな時代によく作りましたね。

 実は8月下旬、人口12億人のインドで衛生陶器の工場が稼動しまして、その開所式に出席したのですが、インドのトイレ事情は昔の日本に似ていると思いました。下水道がないのでトイレが臭うし、空き地に穴を掘って用を足すという生活もまだ多い。TOTOはインドでは高級品ですが、地元の知事も期待してくれていますので、清潔で快適なトイレを普及させる意味は大きいと思います。

――それこそが創業者のDNAを今の時代に継承できるビジネスでしょう。ところで、TOTOさんはウォシュレットや電解除菌水、さらに節水便器など、日本と世界のトイレの歴史を新しくする商品を他社に先駆けて出してきました。次の画期的商品は何を出してくれるんですか。

 それは秘密ですよ(笑)。ただ言えることは、若い研究者がいろんな技術にチャレンジしています。年に2回の社内研究者によるテーマ発表会では、これが何に使われるのか見当もつかないようなネタがたくさん出てきます。電解除菌水はまさに、本当にできるの、できないの、みたいな話をずっとやっていました。トルネード水流も、研究段階では「渦巻いて落ちるの?」みたいな反応だったんですよ。

――私も御社の工場を何カ所か見学させてもらいましたが、研究スタッフに熱い人が多いですね。

 何の制約もなく、いろんなことを研究させて、そこから良いものが生まれてくる。その歴史を創業から100年繰り返しているから"業界初"の製品を連発できるのだと思います。

大理石のような高級感持つ床材

――トイレ事業からスタートした御社も、今ではバス、洗面などシステム商品の売り上げの方が上回っています。特に浴室は、2013年度には前年比18%増に拡大しました。

 TOTOはユニットバスを最初に世の中に出した企業なのに、他社に随分と負けていましたので、お客様の声をしっかりと受け止めながら良いものを出していかなければという思いでやってきました。この50年を振り返ると、集合住宅から戸建て住宅へ入っていく時期や、ホテルからマンションに入っていく時期があり、その時々で断熱性や施工性を高める様々な工夫を加えていった。その結果、今では日本の住宅の浴室の9割以上にユニットバスが普及したのは、TOTOが仕掛けた歴史だと思っています。

ホテルニューオータニに施工された日本初のユニットバス
最新バス
ホテルニューオータニに施工された日本初のユニットバスと、最新バス

――ただユニットバスは機能性などの利点を持つ一方で、在来浴室が持つ部屋としての広がりや、タイルによる質感などを失ってしまったことは否定できないのではないですか。

 今、やろうとしているのは、「シンラ」でも「サザナ」でも、プラスチックの安っぽい部分を全部なくしてしまえ、という命題です。1番の課題は床でしたが、床の構造を4層に分けるプラットフォーム化を行い、「これってタイル?」と思わせる素材感があって、しかも暖かさも感じられる表面シート層を開発しました。あくまでギミック(仕掛け)なので、本物の大理石と同じわけにはいきませんが、見た瞬間に「高級感があるね」と感じていただけます。

キッチンは「絶対にやる」

――社長就任直前の3月下旬には、キッチン生産のストップという一大トラブルがありました。業界内では「これでTOTOは、いよいよキッチン事業を諦めて専業メーカーと組むのでは」というようなことを言う人もいました。

 いえいえ、やめません。TOTOは、キッチンは絶対にやります。全国を回ってはっきり言っています。ショールームのアドバイザーはキッチンを売りたくて仕方がない。彼女たちにも苦労をかけましたが、「絶対にやめないから」と言っています。

――キッチン事業の黒字化に向けての課題は。

 キッチンはリフォームの核ですから、美しさが大前提です。どちらかというとTOTOは、技術が優れていればお客様は満足してくれるという考え方で進んできた面がありますが、それは使った上での満足感であって、まず美しくなければ選んでいただけない。見た瞬間に美しく、「買いたい」と思わせるトリガー(誘因)は何なのかをメーカーとしてしっかり捉えていかないといけない。

――御社では、国内の新築の売り上げは2017年度までに今後20%減少すると予想しておられますが、新築減をカバーする戦略をどう描いていますか。

 少子高齢化で新築市場は縮小しますが、リモデルは年3~4%拡大すると見ています。TOTOのリモデルは、「生活スタイルを変え、豊かにしていく」という意味。例えばトイレはリモデルすると、本を読むのも平気なくらいにきれいで快適な空間に生まれ変わる。私も自宅のトイレに必ず本を置いていますよ(笑)。お客様がリモデルするのは20年に1回くらいですが、商品自体は相当進化している。そこを実感してもらえば、リフォームは今からトレンドになっていくと思います。

――こんなにいい商品が出ていて、リフォームすると家がこんなに変わるんだ、という驚きですね。

 今までは当たり前に新築住宅を購入してきたけれど、予算の関係でどこかを諦めるんですよ。例えば奥さんはグレードの高いキッチンが欲しいけど今は我慢するとか、ご主人ももう少しいい浴室を欲しかったけれど諦めることがよくある。新築のときは、家を買ったことの満足感で諦めを打ち消している。

 でも、そこに忘れてきた"夢のピースをもう1回当てはめる"のがリフォームだと思います。そのお手伝いができるような商品を提案していきたいです。

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