コスモス・ベリーズ 三浦一光会長
月々わずか1万円の費用で、量販店並みの家電仕入れ価格を実現するヤマダ電機グループのコスモス・ベリーズ(愛知県名古屋市)。昨年末には加盟店1万店の大台を突破し、2020年2万店に向け、さらなる拡大を進めている。近年は工務店、リフォーム会社の加盟店が300社以上に急増。彼らは家電品販売による顧客接点強化や、家電とリフォームの融合提案など、従来企業にはない戦略を進める。今年で10周年を迎える同社の三浦一光会長に、これまでの歩みと今後の方向性を聞いた。
――昨年12月、記念すべき1万店の加盟店を実現しました。支持されている理由はどこにあるのでしょう。
3つありますが、その1つは何といっても世界に類を見ない地域店と量販店の共生スキームにあります。本来地域店と量販店は常に競争関係にあるというのが世界共通の問題。そういった関係を共に生きる共生に変えていこうというのが当社の目的です。そのために今、親会社のヤマダ電機、山田昇創業者には大変理解をいただきました。
――ヤマダ電機から仕入れるわけですから、御社の拡大は、ヤマダ電機にとっても販売量の増加が見込めるということですね。
そして2つ目は、加盟いただいた皆さんに公平な競争環境を提供できたことです。この公平な競争環境とは、小売り商売の基本である情報、品揃え、仕入れ条件、安定供給の4項目を一律1万円の会費で提供したこと。そして私どもは仕入れ量が多くなると安くなるという原則を否定しました。1個でも10万個でも加盟店さんには平等の価格で提供する。つまり仕入れ状況の均一化です。
それと、先ほど話しました情報以下4項目は全て必要とされるところが費用を負担するという受益者負担の原則を実行しました。かつて高度経済成長時代は、できるだけそうしたものを平均化し、使わないものでも各店に提供するようになっていましたが、それは大きなコストロスがありました。基本料金をしっかり決めて、それ以外は使われる方がお支払いただくモデルです。
――格安航空券のLCCが運賃以外を有料にしたように、基本サービス以外を有料にしたということですね。
最後の1つは、自主独立の気概に燃えたオンリーワンの店がたくさんあることです。今までは、モノを作ったメーカーなり卸の部門なりが指導的に小売店さんに提案していくスキームでしたが、今考えると理論が立派でしたが失敗したことが多かったと反省しています。
おそらく一番店の店舗の皆さんはそれぞれノウハウをもっています。それをグループで共有して活用しようというのがボランタリーチェーン。私は、それぞれの小売店さんが自分の考えで自主的に小売りをされるのが非常に大事だろうと、だからフランチャイズのように同じ看板を上げて同じようにやるのはある意味、オンリーワンの良いところをカットしてしまうと感じました。
――3つの理由をもとに、事業拡大を続けられているということですね。では8月で10年という契機を迎える中、今年の戦略はどのように考えていますか。
3つの挑戦をします。現在私どもが扱っていますアイテム数は2万3500点ですが、対するヤマダ電機は家電商品だけで17万3000アイテムです。そして、家電以外の日用品などが134万7000アイテム。合計しますと152万アイテムがヤマダ電機の中で扱われています。今回、5、6月ごろを目途に加盟店の皆様にこの152万アイテムを全部公開し、商売に使っていただくことを決断しました。
当然この中には、一般的にSPAと呼ばれる小売店がメーカーと同じように作った商品も含まれます。現在101アイテムとまだまだ数は少ないですが、ハーブリラックスというブランド名で提供しています。
――やはり価格は安いのでしょうか。
性能や価格はメーカーブランド品以上。粗利率は、最低29.3%あり最高は82.4%です。一般的に電気屋さんの粗利は25%ぐらいが常識ですが、そういった従来の粗利率の常識から大きくプラスした商品です。
――利益率の面から、扱う意味合いは大きいですね。
2つ目に私どもが挑戦する項目は、フレアパッドと名前を付けた、タブレットによる小売りサポートツールです。これを無料で提供します。
――どんな中身なのでしょう。
近隣のテックランドに在庫があるかの確認やカード決済、さらに話題の商品の動画も入っています。店舗が要らなくなりますよ。
――商品知識がない人は、このタブレットを使い、研修などもできるのですね。
最強の小売りサポートツールです。そして、3つ目が既に昨年12月26日から行っていますが、商品の仕切り価格を6%へ均一に引き下げました。
――それは加盟店も分かりやすいですね。ところで最初はどんな思いから、事業を始められたのですか。
今、電気屋さんは毎年2000店ずつなくなっているんですよ。いわゆる何々屋という屋のついた業種はどんどん減っていますね。何とか電気屋を救おうと思ったのです。
――三浦会長はもともとパナソニックにいらっしゃったのですよね。そのあと、コスモス・ベリーズの前身となる豊栄家電でこの仕組みを作られた。
昔私どもが開発したナショナルのお店がメーカーに取引量が少なくて切られるんです。月に50万円くらいしか買わないとセールスも付きません。私は最初その人たちの面倒を見ようと、でも50万円では面倒を見られないので、会費をくださいというのが原点です。
――では、町の家電屋さんを助けることが発端だったのですか。
そうです。モノをたくさん買わないけれど、競争ができる環境をつくってあげようというのが原点です。そこへ、最初にこられた他業種が大分の燃料会社、江藤産業さんです。燃料の将来性を考えて、第二事業として家電小売りの会社を作りました。そのあとには工務店さんなど、一切他業者を開発する思想はなかったのですが、ここまで来たのです。
――工務店やリフォーム会社はどんなメリットをもとにくるのでしょう。
家を建てるときに、まけてくれと言われますよね。その際、家電商品を200万円なら200万円分あげてしまう、そんなニーズです。リフォーム会社は工事にいった際、壊れている洗濯機を見ることがある、それを売ろうという単純な発想です。
――TVを見やすくしたり、お掃除ロボットを使いやすくしたりするなど、家電を利用しやすい部屋へのリフォームなども考えられますよね。
新築なら、設計の段階でTVを壁の中に埋め込んでしまうことなどもできますね。今までは家電は家が建ってから後付けです。ですからデザインが悪くなったり余分なスペースを犠牲にする。見やすいとか使いやすいとかいうことを考えた設計がトータルになされることが必要です。エアコンなどがその典型、配線が見えて不細工ですよね。
――家電を含めたトータルの家づくりを提案することで、より顧客の満足度が高まるでしょうね。
そういう点でいうとスマホで家電やHEMSをコントロールすることも関係してくる。省エネルギーも含めて家全体をトータル的にコントロールするのが新しい家でしょうね。
――最後に将来構想を伺いたいのですが、2万店を目指す2020年に御社はどんな姿になっているでしょう。
いろいろな商売をしている加盟店が集まりましたから、クローズなメンバー商売ができます。電気屋さんや水道屋さん、葬儀屋さんも入っていると1つの国、消費する国ができてきています。今1万店で80業種ですから、2万店になったら160ぐらいの業種の計算です。例えば美容院がリフォームをする時などは最寄りの工務店を紹介してあげることができる。それと、文殊の知恵という加盟店専門サイトで必要な事業者を自ら探すことも可能なわけです。加盟店を軸にして地域であらゆるビジネスが消化されるプラットホームを構築することが理想です。
――規模を追うのではなく地域密着のビジネスですね。
日本は戦後のモノ不足の時代が続きました。再興するために物を作るべくマスプロダクションに終始した時代がありましたし、現在でもそうした傾向が残っています。今は、物不足ではなく、お客さんの価値観も変わってきています。規模を大きくするよりも長く続けることが非常に大事だと思います。もう1つ、今、会社は株主のものであることが非常に色濃く出ています。でも本当にそうだろうか。松下幸之助翁も言いました。企業は社会の公器であると。人を借り、建物とかを借りて事業を経営するのだから公の企業でなくてはと言いましたが、企業は人のためであり、社会のため、そして地球のために価値を共存しないといけない時代でしょう。

本社 * 愛知県名古屋市 / 設立 * 2005年 / 従業員数 * 66人 / 加盟店数 * 1万7店(VC+FC・2014年12月31日現在)
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