TTNコーポレーション 辻野佳秀社長
世界を一畳ずつ気持ちよくしたい
畳のトップメーカーとして知られるTTNコーポレーション(兵庫県伊丹市)。畳の持つ「和のDNA」を世界に発信しながら、これまでにない発想の商品開発や販売戦略に余念がない。四代目の辻野佳秀社長に聞いた。
――社長に就任して六年目に突入ですね。
父の跡を引き継いで社長になったのが2009年。31歳のときでした。畳屋というと家族経営のイメージが強いですが、それを払拭したかった。だから工場生産を強化し、畳造りにテクノロジーを導入することで、畳のブランド化を図ったんです。
――社長就任直後の売上高は27億円、現在が60億円ですから、およそ2倍に増えています。
でも社長になったばかりのころ、私は「3年間は何も変えない」と社員に約束しました。代替わりすることへの不安が広がっていたし、給与体系もバラバラだったので、まずは3年間かけて組織の足場を固めようと考えました。
――足場が固まったいま、いよいよ攻めの時期だと?
実はこの1月、TTNホールディングスを立ち上げ、関連会社をグループ化しました。TTNコーポレーションをメーンに、東南アジア家具ショップのタイフーンや、ニューヨークのインテリアブランド「チルウィッチ」のメーカー商社、ナチュラリズムなどが傘下に入っています。日本にはないユニークな商品で、かつ欧米スタイルにもなじむ「和テイスト」の商品を市場に投入し、国内外に販路を広げていきたいと考えています。
――主力の畳事業はどうでしょうか。
おかげさまで1日2500枚を売り上げており、国内11カ所に生産拠点を持っています。東京や千葉のほか、金沢にも進出。有名旅館「加賀屋」さんから畳の御用達をいただいたのがきっかけです。ここではあえて工場を作らず、地域の畳屋さんと提携することで生産体制を整備しました。

円形に畳を加工した「マカロン」。柔らかな芯材を使うことで、クッションや座布団のような使用感となっている
――畳はマーケット全体での出荷量は40年前の5分の1にまで落ち込んでいると聞きます。そんな中、どのような戦略を立てていますか。
チルウィッチもそうですが、私どもは金額で勝負するのではなく、高付加価値品を生み出すことで利益率を上げたい。確かに畳一枚の表替え価格は宅配ピザより安いのが現状です。しかし、ちょっとした研究によって、おもてなしセレクション2014を受賞した円形畳クッション「マカロン」や、畳風呂に使われる特殊加工畳などの高付加価値品を生み出せます。
一畳当たりの平均単価は1万円ですが、もっとも高値なタイプで30万円の高額商品も売れています。こうした富裕層向けの商品は、ストーリーが大事。産地、生産者の物語を語ることが、顧客のある種のステータスになっています。
――リフォーム市場にはどう切り込みますか。
これからは家具やインテリアまで含めてワンセットでリフォーム提案をする時代。これまでの日本のインテリアは「使えればいい」という感覚でした。家具やインテリアまで組み込んだリフォームによって家全体のコーディネートが必要になるので、日本人の生活スタイルは一気に洗練されると思います。当社が家具やインテリアの製造販売体制を整えているのは、そうした時代を見越してのことです。
――御社のスローガンは「世界を一畳ずつ気持ちよく」ですね。
国内だけでなく、世界に目を向けるという決意の表れです。今後はWEBマーケティングも充実させたいですね。畳の中心顧客は60~70代ですが、いまは高齢者層もネットを使いこなす時代です。WEBによって、畳は新たな競争時代に突入していると思っています。

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