平成建設 秋元久雄社長
職人ブランドで超効率化を実現
「建築工程の内製化」「伝統技術の継承」の2つのキーワードの下、全国でも類を見ない240人もの職人集団をつくり出した平成建設(静岡県沼津市)。新築住宅を主体とする中、リフォーム事業では、営業を置かない独自スタイルで安定した収益を獲得している。海外進出も目指す同社の秋元久雄社長は、目指す道を「高級建築のトップブランド」と語る。
リフォーム売上高は15億円
――御社のリフォーム規模は現在、グループ売り上げ(前期約160億円)の1割ほどと認識していますが、前期はどのくらいでしたか。
15億円ぐらいです。13年前、1億円ぐらいからスタートし、段々とシステム化していった。うちの強みは、リフォーム部自体に営業が1人もいないことでしょうね。
――部門には30人ほどの人員が在籍する中、営業が全くいないわけですか。ではどうやって受注を獲得しているのでしょうか。
全部来てもらうのです。連絡をもらった案件に対応するだけで展開している。可能にしているのは認知度でしょうね。あと建築工程を内製化しているから、安心安全をお客さんに買ってもらっているわけです。
――営業コストがかからない点はかなり大きな強みですね。
ビルダーさんがリフォームでつらいのは営業コストがかかりすぎるところですよ。新築だと1人1億5000万円や2億円いくでしょう。リフォームになった途端、5000万円や1億円、平均すると1億円売るのは不可能だと思います。どう見ても1人5000万円ぐらい。
――そうですね、トップ営業マンで売り上げ1億円、粗利3000万円といわれていますから。
でも営業マンの年収を700万円としたら1000万円のコストがかかる。4000万円の売り上げだとすると営業経費が25%、5000万円でも20%要る。広告宣伝費を入れることも考えると、お客さんにコストが高くかかってしまいますよね。
――新規を多く追う会社は、広告宣伝費が売り上げの5%以上かかるところが多いです。10%という企業もあります。人件費を下げるために若手比率を高めている企業もあります。
そうすると高級路線に入れない。下手をするとリフォームではなく修繕路線になってしまいます。屋根や外壁の塗り替えなどから入り、付加価値の高い提案が少なくなると、大規模なリフォームに届かない。うちだと新築よりも高い受注もあります。
――最大幾らくらいでしょう。
1軒5000万円とか。2000万円級は毎年何件かありますね。それを本社と付属的に行っている三島だけで15億円。普通は理解できないでしょうね。
首都圏を中心に拡大
――今後についてですが、新築市場が厳しくなっていく状況の中で、御社としてリフォーム事業をどんな位置づけで考えていくのですか。
これからは首都圏が中心になっていく。現地区はモデルケース。既に首都圏は新築とリフォームを富裕層に向けに行っています。
――昨年11月に出店した世田谷支店や4年前からある日野支店が拠点になるわけですね。
ただ、細かいリフォームは受けない。反響があるのは大きな案件ばかりで、1000万円下回るのは滅多にないですね。東京は元の売り上げ1億円だから、毎年3割アップはいくでしょうね。
――全体売り上げが順調に増えていく中で、現在1割弱のリフォームの売り上げ比率は、増えていくのでしょうか。
当然増えていきますよ。10年後には間違いなく25%ですね。営業マンが要らないのが大きい。うちでリフォームは3億円が損益分岐点、4億円でプラスに転じました。
――市場競争が厳しくなっていく中、価格競争がし烈化しています。いかに御社のように効率化するかが生き残りのカギになりそうです。
それともっと深刻なのが職人不足。足りなくなってきて、コストが上がっていますよね。取り合いが起きている中、程度の低い、職人ではない作業員を使わざるを得なくなる。
――そうしたリスクに対応するため、御社のような職人の内製化があると思いますが、それは可能だと思いますか。
可能ですが、相当腰を落ち着けないと難しいでしょう。社員に指導者がいないとだめです。それも若手で、世の中の役に立つというような志を持ち、高いレベルに引き上げていくということを語れない人では指導者は無理です。水まわり工事が中心だと大工のウエートが少なく、むしろ設備関係の仕事ですよね。あと、クロス屋さんとかいろいろありますが、私から見るとなんであんなに細分
職人の技術が低迷している中、下手をすると新築に行けない人がリフォームに行くのが現実。ただ、リフォームの方が短期で仕上げないとならず、お客さんが住んでいる中で会話もしなくてはいけない。つまり、新築よりももっといい人材でないとだめです。挨拶もできないようではリピーターもきません。うちの良さは全部リピートと紹介。スタートはブランドがあるから来ているかもしれませんが、その後は全部口コミとリピートです。1軒の家で6000万円ぐらい使っている人もいます。化されて業者を入れる、と言いたくなります。
――それがコストアップの要因でもあります。
もう、大勢の人が入れ替わり立ち代わり入り、それを監督はずっと見ていないといけない。私から言わせると監督が自らやれと言いたくなる。外注しているから見ているしか方法がないのです。それで1人が何現場も持って結果的に不安な現場が起きる。
――職人の内製化が、そうした問題解決につながるわけですね。
アメリカへの進出
――今後は、首都圏でビジネスをより拡大していくと思うのですが、さらに今後考えている方向性はあるのですか。
アメリカです。
――日本の技術を輸出するということでしょうか。
そう、向こうは圧倒的に富裕層が多い。一般の富裕層で1000平米。建坪で500坪、1000坪なんてごろごろある。それと日本文化が好まれている。
――新築を提供するのですか。
いや、500坪の建物全部を日本の建築物でやる人はいません。だから1割ぐらいを日本建築にしたいと思っているのです。ただ、1割といっても500坪だと50坪、300坪でも30坪ある。英語ができる人もそこそこいます。もう準備はしてあるので、仕事がきたらいつでも行けます。
――向こうのリフォームマーケットは、日本の数倍あります。将来は日本よりも大きな事業展開もありえるのですか。
向こうは気候が暖かい住みやすい地域で、富裕層だけが対象です。ほかを手掛けると費用対効果が悪くなってしまう。
――そうした海外展開も含め、会社の規模はどのくらいを狙っているのですか。
社員2000人、そのうち職人が1000人ですね。売り上げは600億から700億円。それ以上は望みません。
――その時、海外での売り上げ割合は。
2割まではいくでしょうね。アメリカは木造なので、材料はあります。高級なものは日本から持っていきますが、現地のものが使える。ただ、大工は全部日本から送ります。それがブランドになる。
――売り上げとしては600億~700億円を最終構想として、その時の平成建設を言葉で表現するとどんな企業になっているイメージでしょうか。
高級建築のトップブランドです。良い家は、人によって違うので、リーズナブルでもできる。だからうちが目指すのは高級建築です。
――理想とすべき1つの姿ですね。まねするのは難しそうですが。
まねをするのは全然構わない。ただ、職人を育てるのは簡単にいきません。3年5年でできるわけではなく、10年20年かかります。
――では10年、20年かけて人を育てながら成長する上で、成長率の理想はどのくらいでしょう。
10%が一番です。15%だと伸び過ぎでしょうね。社員の実力がそこについていかない。人数だけ増えても意味がありません。バランスが取れているのが10%。もっと少ない方が中身は充実しますが、そのくらいが理想です。

本社 * 静岡県沼津市 / 設立 * 平成元年2月8日 / 代表者 * 570~580人(職人240人)
資本金 * 9000万円
秋元社長のセミナーが6/23(火)に「リフォーム産業フェア」内で行われます。
「リフォーム産業フェア2015」東京ビッグサイト西2ホール 聴講無料 F会場15:20~16:10

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