エディオン 三嶋恒夫取締役 ELS本部長
前年度比130%の売上高548億円へ
家電量販店エディオン(大阪府大阪市)の前期リフォーム事業売り上げは前年度比94.7%の419億円となり、2009年の事業開始以来、初の減収となった。ただ、今期は前年度比130.6%の548億円という大きな目標を掲げ、V字回復を目指す。昨年10月、新たに事業責任者に就任した三嶋恒夫取締役・ELS本部長に、体制の再構築に向けた戦略を聞いた。
対策遅れが減収に
―― 前期決算はリフォーム事業として初の減収を記録しました。要因はなんだったのでしょうか。
元々、私どものリフォームビジネスは、店で買おうと思っていないお客様を掘り起し、顕在化して受注につなげるビジネスでした。それを確実に実行していかないといけなかったのですが、2013年に増税の駆け込み需要があり、その年はある意味簡単に数字がいってしまったことが響いていると思います。
つまり、勝手に掘り起こされると今までの細かな活動を忘れてしまう。昨年たくさん売れたのだからと対策が打てなかったことがそうした数字につながってしまったと思います。特に住設部門は増税を経験するのは初めてで、家電であれば消費税3%、5%の経験でこのくらい下がるだろうといえる。住設は思った以上に反動があり、本部対策が遅れました。市場の影響ではないと思っています。
――ただ、今期については、V字回復をすべく、前年度比130・6%という大きな目標を掲げられています。達成に向け「営業力の強化」「工事体制の強化」「収益力の改善」の施策を打ち出していましたが、「営業力の強化」とはいかなる策ですか。
私どものスタートは、家電を通じて当社のお客様になっていただいている方に社員が一声かけてリフォームを顕在化していくことです。ほかの工務店さんのようにチラシの配布などで、お客様が欲しくなってから来ていただく方式とはビジネスモデルが違います。買い物をしている方に「最近電気代が高くなりましたよね」とか「こんな便利なものが出ています」などと声掛けする部分が大事です。そのための接客ツールなどを充実させないといけません。
――従来も家電の販売員が声掛けをしていましたよね。
そうした流れにしていたのですが、家電と住設は大きな違いがあります。家電の炊飯器コーナーでは10人接客したら3台か5台は売れます。住設はそういうわけにはいかず、極端なことをいうと20人声掛けしても1台も売れないことがあります。つまり、家電はアクションを起こしたことに対し、結果が出るビジネスですが、住設はなかなか出ない。だから家電業界にこのビジネスを根付かせるのは非常に難しいと見ています。意欲だけではだめで、お客様に「なるほど」と言ってもらうようなツールの開発が必要と思っています。
――ツールというと、システムのようなものでしょうか。
そんな格好いいものではなく、紙です。それをどうやって社員が利用し、使っていくかです。
――お客さんの需要を掘り起こす上で、実際に来てもらう店づくりも重要なポイントになると思いますが、新たな取り組みはありますか。
TVコーナーだったらTVを映しますよね。ところがリフォームコーナーはトイレがあるだけで、動きません。そこで、昔は13リットルの水が流れていたのが、今は3.8リットル、家族4人でこれぐらい水道代が下がることを、売り場で体験できるものを見せていきます。
――今リフォームコーナーがあるのは、家電量販店373店舗中258店舗ですが、そこにいれていくということですね。
今、そうした見せ方をしている店舗が100店を超えています。最終的には258店全店に考えていますが、まずは大型店で集客の多いところですね。実際にペットボトルであらわすとか、汚れが落ちるとか、目で見せることです。
――エンドユーザーの方は、リフォームをしようと思わない限り、リフォームの情報についてほとんど知りません。水栓が節水になっていることやシンクの水の音が静かになっていることも分からない。
私もこの業界に入るまで、蛇口が少しでもお湯側に入っているときは、ガスがついていると知りませんでした。あれはガス代をものすごく跳ね上げることになります。
―― そうした情報をエンドユーザーに分かりやすく伝える店づくりをしているのですね。
お客様に今のような話をすると「ほんと、こんなに違うんだ」とびっくりしていただけます。そうすると社員は自信を持っていろいろな話ができます。
――宣伝広告も、お客さんにリフォームを伝える手段ですが、チラシでいうとどのくらいの枚数を配布しているのですか。
多いときは月に400万部ほどです。全店のチラシに載せたり、一部のエリアだけにしたり、色々なのですが、もっと中身を変えていかなくてはいけない。例えば、キッチンは壁側にあったものが、真ん中にくるとLDKを含め、見た目が大きく変わります。今まで私どものリフォームは壁付のI型ばかりでしたが、夢を感じてもらえるのはセンターにキッチンがくる形。
弊社の代表の久保もよくする話ですが、「モノではなくコト」の提案です。家電店なのでキッチンと冷蔵庫、調理用品を含めて生活シーンをトータルミックスした販促が打てるのは、工務店やビルダーにはできない家電の一番の特徴だと思っています。
――つまり、商品の羅列ではなく、生活シーンが伝わるようなチラシの中身に変えていくわけですね。
家電との融合を今後していかないといけません。今、いろいろな新築住宅を見るとポイントはLDKです。キッチンを中心としたリビングをどう見せていくかが、お客様がチラシを見る一番の動機になりますので、生活シーンを載せていくようなチラシでいこうと考えています。
工事件数は1.3~1.5倍に
――現状約7万件の工事件数も増やす計画ですよね。
来年に向け、1.3倍から1.5倍にしていく計画です。新しい店舗は細かい工事が非常に多く、単価がものすごく低い。だから件数を伸ばさないといけません。工事拠点も今の48拠点を56拠点に増やします。
拠点を増やしていかないと距離が遠いだとか、小回りが利かないことも出てきます。加えて3月時点で208人の施工管理者も今期中に2割ほど増やす計画です。協力業者数も3月末時点で240社ですが、3割増しの計画です。
値決めを見直す
――計画には、「価格の改定」という記載もありましたが、これはどういう内容でしょう。
値段を上げるように見えますね(笑)。別に高くするというわけではなく、値決めをもう一度見直すということです。家電の場合は毎週値段を変えることができますが、リフォームはカタログを作るので、極端な話、半年間値段の変更ができません。正直な話、お客様が必要とされてないのに、というものが結構ありまして、必要がないものは取り、必要があるものはもっと深める。これを7月から行いました。それと、必要がないものを載せすぎるとお客様は迷われてしまう。今回、かなり商品点数を減らしたつもりです。
――あと店舗戦略でいいますと、今期はプラス5店舗と、あまりリフォームコーナー設置店を増やさないのですね。
結論は家電と違って増やしたからといって、売り上げが上がらないからです。結局リフォームは家電と違い、売場坪数かける坪単価が売り上げにならない。エディオンとしても当初、数を増やそうと進めていましたが結果的に数字が上がらないので、まず増やした店の売り上げを確実に上げることがベターということです。
――従来掲げていた1000億円の売り上げ計画時期を今回の決算では出しませんでした。この意図は。
社内的に1000億円は、意識の中にはあります。ただ、やはり1000億円という数字が前にでることよりも大事なことは、お客様に価値あることを提供し、それをお客様に理解していただけるビジネスにすることです。エディオンとしてもここ2、3年非常に勉強になった年と思っています。住設というのは家電と違いカテゴリー数を増やせば増やすほど売り上げが下がります。
要はやっている人間が同じなので、いかに絞り込み、お客様への差別化を図っていくかです。そこを見つめ直し、付加価値づくりを行えるように努力していきたいです。

設立 * 2002年3月29日 / 代表 * 久保允誉 / 連結売上高 * 6912億1600万円(2015年3月期)
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