住生活の安定確保と向上の基本的施策を定めた住生活基本計画を見直す会議が始まった。来年3月の閣議決定に向け、見直しの主要論点のほか、リフォーム実施率等の数字目標を話し合っていく。

リフォーム関係の数値目標についても見直し
4月20日、国土交通省が入居する中央合同庁舎3号館の特別会議室に22人の委員、臨時委員が出席した。席に着くのは大学教授のほか、業界団体の長、市長など各分野の専門家。今回の見直しに関し、第1回のキックオフの会議となる。
住生活基本計画は、人の住まい方や住宅供給のあり方などを定めたもので、平成18年9月に閣議決定した。当初は18年度から27年度までの10年計画として発表されたが、おおむね5年ごとに見直すことが決められている。
平成21年に一部変更ののち、23年には全部を変更。策定から10年を迎える平成28年に2回目の全部変更を行うため、約1年間かけて話し合いが行われる。
住生活基本計画には、リフォーム関係の計画指標も定められている。例えば「新耐震基準が定める耐震性を有する住宅ストック比率」は平成20年に79%だったものを平成32年に95%とする。
また、「リフォーム実施戸数の住宅ストック戸数に対する割合」は平成16~20年平均3・5%を平成32年に6%とする計画だ。数値目標についても、全面的に見直しが行われるので、10年後に向け新たな数字が定められる。
今回の会議では、人口推移や住宅ストックの総数、住宅着工数の推移など、資料を基にした基本的な状況確認のほか、各委員からの意見が寄せられた。
「ストック対策となると地域対策が新築よりももっと重要になる。都道府県計画のフィードバックを全国計画に生かさないといけない」(深尾精一首都大学東京名誉教授)
「スマートウェルネス住宅・シティの実現を特に大事なテーマとして推進していただきたい。全国5,000万の住宅のうち、今の省エネ基準を満たすものは5%しかない。先進国としてはあり得ない低水準の住宅が多い。それが冬場の病死者、事故死者を増やしている根本原因にあると思っています」(伊香賀俊治慶應義塾大学理工学部教授)
「利活用に足るだけの豊かな質の高いストックになっているかどうかが非常に重要。いいものは使っていくが良くないものは建て替えていく中、数量的にも把握していく必要がある」(中井検裕東京工業大学大学院社会理工学研究科教授)
次回会議は5月に実施予定。秋に改正案がまとめられ、パブリックコメントにより意見を募集する。
【委員構成】
〈委員〉
浅見泰司 東京大学大学院工学系研究科教授
飯島淳子 東北大学大学院法科研究科教授
池邊このみ 千葉大学大学院園芸学研究科教授
工藤和美 東洋大学教授
齊藤広子 横浜市立大学国際総合科学部教授
田中里沙 宣伝会議取締役社長兼編集室長
辻琢也 一橋大学副学長
中井検裕 東京工業大学大学院社会理工学研究科教授
深尾精一 首都大学東京名誉教授
藤沢久美 シンクタンク・ソフィアバンク代表
〈臨時委員〉
伊香賀俊治 慶応義塾大学理工学部教授
岩田正美 元日本女子大学教授、日本福祉大学客員教授
奥山千鶴子 子育てひろば全国連絡協議会理事長
神山和郎 全国住宅産業協会会長
川口雄一郎 全国賃貸住宅経営者協会連合会会長
木村惠司 不動産協会理事長
久住時男 新潟県見附市長
児玉桂子 日本社会事業大学大学院特任教授
小林勇 全国宅地建物取引業協会連合会政策推進委員長
篠原聡子 日本女子大学教授
清水謙一 全国建設労働組合総連合書記次長
末永照雄 日本賃貸住宅管理協会会長
諏訪雄三 共同通信社編集委員
土田あつ子 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会主任研究員
中川雅之 日本大学経済学部教授
永島恵子 東京都都市整備局都営住宅経営部長
野澤千絵 東洋大学理工学部建築学科教授
藤木賀子 スタイルオブ東京代表取締役
矢野龍 住宅生産団体連合会副会長
山崎亮 studio-L代表取締役

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