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- > でんかのヤマグチ、「超」地域密着経営で粗利39.7%
業界平均で粗利率25%といわれる中で、39%を超える家電店がある。家電の販売で年間7億5000万円、リフォームで2億5000万円を売り上げる、でんかのヤマグチ(東京都町田市)だ。同社は、近隣にヤマダ電機などの大手量販店やチェーン店がひしめく中で、20年連続で黒字を達成した。山口勉社長は「『超』地域密着戦略が粗利率を高めるポイント」と話す。
ホームページのトップ画像。家電店でありながら顧客の生活をサポートするサービスを展開
「何かあったらヤマグチに」
同社の高粗利を生み出す、「超」地域密着戦略の柱が「裏サービス」だ。
これは、日常生活で生まれる顧客の細かな要望に対して、担当営業マンが訪問し解決するというもの。「キムチを買ってきてほしい」、「蜂の巣駆除して」、「壁に帽子用の棚を取り付けて」というように、家電に関わらない内容についても積極的に対応している。しかも費用は材料費などの実費のみ。サービス自体は無料だというのだ。
「家電営業マンは現在13人。400~500件の担当を持ち、1日10件程度、顧客宅を訪問し、日々の御用聞きを行っています」(山口勉社長)
なぜ、このようなサービスを行うのか。それは顧客との密接な関係づくりにある。
同社のOBは現在8500件ある。顧客の平均年齢は64歳で、ほとんどが年配者になる。自宅にこもりがちで、外出時の移動範囲も狭い顧客が多い。そのため、日々の生活にも様々な支障が出ている。そこを同社がサポートする。「何かあったらでんかのヤマグチに」と意識してもらえるようにすることに、狙いがある。
また、日々の訪問により、顧客が家電を購入したいベストなタイミングで提案できるようになっている。家電の修理や買い替え時期を敏感に感じることができるからだ。
しかし、約40%に及ぶ高粗利の家電をあえて買う顧客の心理とはどうなっているのか。これについて山口社長はこう話す。
「高く買っているのだから、日々のサービスを気兼ねなく依頼できるという安心感で買ってもらっています」
このような取り組みにより、同社の外販比率は65%まで高まった。売り上げを店舗ではなく顧客訪問で立てる作戦が奏功した形だ。
週末イベントで"会社"とつながる
地域密着の取り組みは「裏サービス」にとどまらない。
同社は毎週末に店舗で《北海道じゃがいもまつり》、《サンマまつり》などのイベントを行っている。これは、来場者にその時々の食べ物を無料でプレゼントするというものだ。その場でも食べられ、持ち帰ることも選べる。これを37年前から行っている。
狙いは「会社」として顧客とつながること。OB宅への定期訪問は、会社というよりは、営業マン個人との関係づくりが大きい。そのため、営業マンが辞めた場合、会社としての関係がなくなってしまう懸念があった。
「『2本のベルト』と呼んでいます。お客様と営業マン、お客様と当社の2つのつながりで関係を強化しているのです。そうすれば、1つが切れてしまっても、もう1つでつながりを維持することができるのです」(山口社長)
毎週末に行うイベントが地域との関係づくりを強化
《ピンチがチャンスに》
かつてはこのような高粗利ではなかった。20年前、粗利率は25~26%程度。当時、3年連続同社は赤字を計上していた。そこに社を揺るがすピンチが訪れた。量販店の進出だ。
ピーク時には、同社の半径1キロ圏内に大手量販店と東京エリアで展開するチェーン店6店舗がしのぎを削る激戦区になっていた。 価格勝負では到底太刀打ちできない。当然売り上げは下がるだろう。同社は窮地に追い込まれた。それが逆に同社の転換点となったのだ。
「おそらく、量販店は当社よりもはるかに安くなるだろう。しかし当社は赤字。これ以上粗利率は下げられない。そこで、逆に商品を高く売り、粗利率を上げる作戦に出ました」(山口社長)
いかに高粗利を実現するか。考えに考えた作戦がこれら「超」地域密着の取り組みだったのだ。その結果、同社は逆に20年連続で黒字を達成することに成功した。
「当社はパナソニックの専門店です。目標は『日本一パナソニック製品を売る店』を目指しています(笑)」(山口社長)
《会社概要》
社名 * 株式会社ヤマグチ / 所在地 *東京都町田市 / 創業 * 1965年5月 / 資本金 * 1000万円 / 従業員 * 40人

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