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ゲーム感覚で省エネ需要を開拓東邦ガス×西部ガス×大日本印刷

ゲーム感覚で省エネ需要を開拓 東邦ガス×西部ガス×大日本印刷

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リフォーム新ビジネス ≪キーワード:エネルギー診断≫

 年々増え続ける光熱費。特に東京電力では東日本震災以降、家庭向けの電気料金が3割以上アップした。今後も、化石燃料価格が上昇し、光熱費の恒常的な値上げが続くとの見方だ。そこで、ガス会社が省エネ対策効果を見える化し、適正な設備交換やリフォームにつなげる提案を始めた。東邦ガス(愛知県名古屋市)、西部ガス(福岡県福岡市)、大日本印刷(東京都新宿区)の3社で、省エネ診断ソフト「e(い)ごこち診断」を開発。潜在需要の開拓に取り組んでいる。

地域の平均値との自身の家の光熱費の差を表示することにより「世間に比べて損をしたくない」という心理に訴え、関心を持ってもらう
地域の平均値との自身の家の光熱費の差を表示することにより「世間に比べて損をしたくない」という心理に訴え、関心を持ってもらう

光熱費削減メリットを計算

 「e(い)ごこち診断」とは、現状の住まいの光熱費状況を計算、設備交換やリフォームにより、どのくらい光熱費削減等のメリットがあるかを診断するソフト。iPadに入れて利用する。"省エネ"という効果が分かりにくいものを、エンドユーザーでも一目で理解できる内容に作り上げた。

 ただ、実際に診断するにも興味を持ってもらわないと、提案の入り口に立つことができない。そこで、同ソフトを使った最初のアプローチとして、お客さんと何かしらの接点を持った際、ゲーム感覚で光熱費の現状が分かる「省エネ鑑定」を実施する。

 ここで聞くのは、家族数と毎月の水道光熱費。自らの光熱費が平均と比べ、高いか安いかをお客さん自身に予想してもらい、その結果を伝える。

損したくない心理に訴える

 「具体的な診断をするために家に上がるのはハードルがあります。そこで、ゲームのようにお客さんの暮らしぶりが省エネできているか見てもらうのです」( 大日本印刷C&I事業部・マーケティングソリューション本部・第6企画開発室安藤栄二室長)

 誰もが関心のある他と比べた光熱費状況を計算し、「世間に比べて損をしたくない」という心理に訴えかける戦略だ。

 「省エネ鑑定」で興味をもってもらったお客さんは次のステップ「ささっと診断」に進んでもらう。まずは、浴室、キッチン、トイレ(浴室・キッチン・トイレは複合診断可能)、マイホーム発電から興味がある部位を選択。

 同診断で聞く項目は、(1)家族数、(2)マンションか戸建てか、(3)築年数、(4)利用ガスの種類、(5)給湯器の種類、(6)お湯張り頻度、(7)水栓種類、(8)シャワーヘッドの種類、(9)床暖房があるか否かなど。鑑定よりも内容は増えるが、その場で答えられるものに限定しており、5分もあれば実施することが可能だ。

 築年数から大体の使用機器が割り出せるので、省エネシャワーヘッドや省エネ型の水栓を利用した際の効果が光熱費の削減効果として計算される。例えば浴室に年13 万円の光熱費がかかっていたものが、1割以上、2万1000円の削減が可能―となれば実施者の興味は高まる。そして、診断の最終ステップである「じっくり診断」につなげていく。

細かな効果を提示

 「じっくり診断」は実際、お客さん宅に訪問し、浴室、キッチン、トイレ、居室、マイホーム発電の部位別に光熱費などの「エコ性能」、耐久性や使いやすさなどの「いごこち性能」の2つを細かく診断できる。例として浴室の場合、約30にわたる項目入力と任意のアンケートを実施。時間にすると、10~15分で行うことが可能だ。

 診断結果は、省エネ商材を導入した際の水道光熱費の節約額、CO2削減量、5段階評価で表示される機器のエコ評価などのほか、清掃性、収納性など省エネ以外の8つの性能などが表示される。任意のアンケートも行っておけば、清掃性、耐久性などお客さんのニーズをくみ取ったプランが自動で割り出される。

省エネ対策後に年間光熱費がどのくらい削減できるかを計算
省エネ対策後に年間光熱費がどのくらい削減できるかを計算。浴槽や照明など部位別に現在の省エネ状況、改善後の状況が示される
光熱費だけではなく、清掃性、耐久性、清掃性など省エネ以外の項目の状況も表
光熱費だけではなく、清掃性、耐久性、清掃性など省エネ以外の項目の状況も表示。掃除を楽にしたいなどのニーズに合わせた提案ができる

 具体的な提案については、診断結果を一度持ち帰り、お客さんのニーズに合わせ微調整した形で行う。1度目の訪問で、ある程度の効果を伝えられているので次の訪問につなげやすい。最終的に機器交換、リフォームに結び付ける。同診断は9月から正式スタートしたが、お客さんのヒアリングでは、約7割の人が「やってもらいたい」と答えた。

 開発に携わった東邦ガス、西部ガスでは、ガスショップ等を通じ、すでに提案を開始。全国のガス会社に向けて同ソフトの提供も始めており、ガス事業者の新たな提案が進んでいきそうだ。

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