2012年1月、富山県の温泉施設で入浴していた70代男性2名が亡くなったという悲しいニュースが流れた。室内と浴室の温度差によって血圧が急変して起こるヒートショックの疑いもあるようだ。パナホーム(大阪府大阪市)が行ったアンケートからも断熱リフォームが求められている実態が明らかとなった。
脱衣所も寒い
大手ハウスメーカーパナホームが55~65歳の1000名を対象に行ったアンケート調査によれば、「現在の住まいで困っていること」で割合が高いのは「寒さ・暑さ」「設備の老朽化」「収納」の順番であることが分かった(表参照)。「浴室の寒さ(13.7%)」、「冬の室内の寒さ(12.3%)」、「洗面脱衣所の寒さ(10・5%)」の割合は高く、リポートを発表したパナホーム住生活・デザイン研究所では「特に浴室や洗面脱衣所の寒さが身体にこたえる大きな課題」と分析。
同社では今期から'55歳からの人生を楽しくする「セカンドライフリフォーム」'という名称で販促を行っており、その中で木造住宅の断熱化にも力を入れている。「まるごと断熱システム」という名称で、床・壁・天井に断熱材を施工し、開口部はインナーサッシを取り付け、室内の温度差をなくす提案をしている。ヒートショック対策は浴室に入る前に事前にお湯をまいて温度をあげておくというような対策が通説のようになっているが、それは対処療法的で、本質的な改善には室内の各部屋の温度を一定上に保ち、温度差をなくす断熱化が重要だ。
温度差激しい日本の室内
国でも住宅の断熱性能を高める動きが進んでいる。経済産業省が行なっている総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会では、窓、浴槽、断熱材などについて一定のレベルの断熱効果を持たせるように義務化を行う方向で議論が進められている。昨年末に行われた会議では、社団法人日本建材・住宅設備産業協会(建産協)の轟木直孝運営委員長が断熱化の重要性についてプレゼンを行っている。欧米に比べて断熱性が低い日本の住宅は温度差が激しい。発表の中では、イギリスでは健康を保てる温度が21度とされているが、日本の寝室の温度は10度。布団の中は30~33度あり、そこから出れば温度差は20度もあり寝室においてもヒートショックの危険性があると解説している。

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