被災地レポート(2)

(9)1年半経過しても仮設暮らしの人々は不自由な生活を送る
4万人以上が住む仮設住宅
宮城県では約2万戸(その他、自治体が借り上げた賃貸のみなし仮設が別途2万戸ある)の仮設住宅があり、被災者は1年半が経過した今でも不便な暮らしを強いられている。渡波地区に約300世帯が暮らす仮設住宅地「渡波第一・第二団地」(※写真9)を見学したが、簡易なパネルで作られたこの住宅で冬の寒さを耐えしのぐことができるのだろうかと疑問が湧いてくる。昨年も2重窓化、断熱材の追加などが行われたそうだが、応急的に作られた住まいには限度があるだろう。彼らの願いは早く安心で快適な家の再建だ。
地元業者による復興を
また、この仮設住宅にまつわる話で今問題となっていることがあると、県の住宅復興を推進する「みやぎ復興住宅整備推進会議」の委員の一人であり、工務店などで組織される「宮城県優良住宅協会」の代表も務める大竹雅之氏は話す。「今回の仮設住宅で地域工務店は苦い経験を味わいました。約2万戸の仮設のうち、地元の工務店が建てたのは160戸だけ。それは私たちの工務店団体の4社が建てたものです。残りのほとんどは県が協定を結んでいた大手プレハブメーカーが受託しました。結果として、地域産業の復興に結びつかなかったということです。これから始まる仮設からの移住という流れの中で、また受注が大手に流れてしまってはたまらない」
76の工務店グループ発足
宮城県の住宅の全壊認定は8万5315棟、半壊は15万1736棟。県は地域の工務店などと連携して住宅の早急な新設を計画しており、平成32年までに7万2000戸の住宅を整備すると発表。岩手、宮城、福島の3県では、仮設などで不自由な生活を余儀なくされている人々の生活の基盤である住宅の再生を急ぐために、「地域型復興住宅推進協議会」を今年の3月に立ち上げている。これに合わせて、地域の住宅生産者である工務店などがそれぞれグループを組み、「地域型復興住宅」の建設をする準備を整えている状況。グループは宮城県内で76団体あり、それぞれ地域工務店が名を連ねる。だが、先に記した全壊・半壊棟数からして、7万2000という数は十分とは言えないだろう。
さらに、職を失い新築の予算が十分にない人も多いことや、被災した住宅地の売買を通じた資金化が進捗しないケース、新築を建てるための土地がないなど、様々な理由で転居が進まない。
また、県で進めている災害危険区域に住んでいた住民の「防災集団移転促進事業」も、「何世帯が移転を希望していて、それぞれどこに住みたいのか、という合意形成が難しいことと、そもそも移転先の宅地探し、造成にもお金と時間がかかる。住宅復興のスピードは遅いと感じています」(大竹氏)。
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