被災地レポート(3)

スモリ工業内のショールームでは耐震性能を体感できる
新築は「来年8月着工」
「県内の住宅市場はバブル」。地場有力ビルダー、スモリ工業(宮城県仙台市)の山本達夫取締役社長室長はこう話す。「今、新築の注文を頂いても着工は来年の8月。通常の需要に加えて、被災された方から早く家を建てたいという需要で溢れています。このバブルはあと5年は続くと見ています」
依頼の8割程度は、被災を契機にしたものだという。「私はここに15年以上いますが、街中では最近やたらと名前の聞いたこともない工務店の足場を見かけます。これは完全に売り手市場。ただ、受注できても施工業者が絶対的に足りない」
10月の決算では例年よりも1割ほど多い280棟の完工にとどまったが、「今拡大しようと思えばできます。しかし、そう大きく伸ばそうとはしていません。このバブルのあとは一気に冷え込むでしょう。今からもう備えに入っています」
中小工務店の取引先を数多く持つ地元建材店の社長に話を聞くと、「零細工務店はこれまでずっと仕事を取るために必死だったが、今は何もしなくても注文が来る。それをいかにこなすかが課題になっている。9月の決算では工務店への資材販売が前年比20%伸び、新築着工が落ち込んでいた震災前に、こんな伸び方をしたことはなかった」と話す。
1年半が経過すると、住宅復興の話題は新築に移りがちだが、破損した住宅の修繕リフォーム需要がなくなったわけではない。住宅の応急修理に要した費用の52万円を補助する「応急修理制度」の締め切りが9月28日だったが、その期日までに業者が提出しなければならない見積書が1万件分未提出との報道もある。これまでも期日が延長されてきたが、再延長される予定だ。
「今でもOBの皆様の修繕が終わらない」と、地元リフォーム会社スイコー(宮城県仙台市)の澤口司社長は話す。管理している8000件のOBからの依頼に加え、ハウスメーカーにリフォームを断られて流れてきた新規客、「応急修理制度」の対応が良いと評判を聞いて問い合せてきた口コミ客などが殺到している。「工事件数は通常の2倍以上。売上は多少伸びましたが、細かい工事なので経営的にいえば"儲からなかった"。待っていただいている今の顧客様の信用を裏切れず、得意な大型リフォームもできず、新築の依頼も断り、応急対応に終始した我慢の1年半でした」(同社長)
震災前は2拠点の営業所があったが、社長からスタッフへの伝達を効率化するため1カ所に集約しなければならなかったほど、圧倒的な量の工事に追われた。それだけ困っている被災者がいまだ多いという。
震災から1年半が経過した今でも、現地には不自由な暮らしを送っている被災者が多くいる。全員が安心で安全な住宅を手に入れるまでの道のりは決して楽なものではないが、その日が来るまで業界を挙げて継続した支援が求められる。
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