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「新築偏重時代に終止符を」リフォームでCO2排出最大7割減...三井、住友、東大、リノベるが立証

「新築偏重時代に終止符を」 リフォームでCO2排出最大7割減...三井、住友、東大、リノベるが立証

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リノベで脱炭素社会実現を

「リフォームこそ最も環境に優しいビジネスだ」と、声高に訴える事業者が出てきている。建替新築に対し、既存住宅を残す方が省エネであることは明白なはずが、エビデンスが示されることなく、いたずらにスクラップ&ビルドが繰り返されてきた。そうした業界の在り方に「待った」をかける事業者の取り組みを紹介する。【編集部/芦原拓】

《目次》​

新築偏重社会に「待った」の声

三井、住友も...省エネ研究、続々

リノベで「カーボンニュートラル」実現を

新築偏重社会に「待った」の声

解体以外の選択肢はなかったか解体以外の選択肢はなかったか(イメージ)

誰も研究してこなかった事実

地球温暖化対策として日本政府が2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目標に掲げて以来、とくに新築建築物の省エネ化が必要である、という認知は広まってきている。直近でも4月22日に2025年度から新築の省エネ化を義務付ける法案が閣議決定されるという象徴的な出来事があった。

だが、たとえ省エネ性能が高い建物だったとしても、既存のものを壊してまで新築に建て替えること自体が、はたして環境に良いのかどうか、という疑問は残されたままだ。再利用する道はないのか、そのほうがはるかに排出削減になるのではないか。こうした当たり前のような疑問に対して、明確な答えがどこにもないまま、新築向けの議論ばかりが先行してきたのではないか。

こうした住宅産業の在り方に疑問を抱き、一石を投じるのは、中古住宅のリノベーションを累計4000件ほど手がけてきたリノベる(東京都港区)の山下智弘社長だ。同社では既存住宅を建て替えることなく、改修することでCO2(二酸化炭素)排出量がどれだけ削減できるかを検証している。研究の結果、76%も削減できるということが明らかになった。

リノベる 山下智弘社長リノベる
山下智弘社長

「新築よりリフォームの方が環境に良いなんて、当たり前すぎて、誰も調べてきませんでした。それにしても7割以上という数字には驚いています」と山下社長は打ち明ける。

研究対象となったのは既存の集合住宅と新築住宅だ。「北習志野台プロジェクト」と名付けられた前者のケースでは、千葉県船橋市にある築19年の鉄筋コンクリート50戸を対象に研究が行われた。延床面積4042平米(1戸あたりの床面積80・84平米)、地上6階建ての集合住宅を一棟まるまる改修。これと新築の「自由が丘プロジェクト」(地上4階建て、19戸、延床面積1168平米)を比較して算出。結果、1戸あたりのCO2排出量は、新築の「自由が丘プロジェクト」の88トンに対し、リノベした「北習志野台プロジェクト」は22トンで4分の1に縮小した。

図① 新築に比べリノベは76%もCO2排出量が減る
新築に比べリノベは76%もCO2排出量が減る※既存建物解体・設計監理・資材製造・建設段階を評価対象に、自由が丘プロジェクトのCO2排出量を延床面積で除した値に北習志野台プロジェクトの1戸あたり床面積を乗じて算出。「リノベーションによる二酸化炭素排出量の削減効果報告書」(リノベる・金沢工業大学佐藤考一研究室・国士舘大学朝吹香菜子研究室提供資料)を元に作図

排出削減量は杉の木37万分

1棟あたりの削減量は約3300トンで、これは杉の木約37万本が1年間に吸収する量と同規模となる。広さでいえば、明治神宮の約5.1個分の面積となる杉林約375ヘクタール分に相当する。1戸あたりに換算すると、CO2排出削減量は約66トンで杉の木約7500本が1年間に吸収する量になることがわかった(図①)。さらにその後20年間、解体せずに維持する場合の数字も算出したところ、1棟あたりのCO2排出量は、建て替えた場合に比べて34%、また解体と建設時の廃棄物排出量は96%も削減されることも立証した。

同社では「戸越公園プロジェクト」と題した、東京都品川区の地上4階建て、築49年の集合住宅のリノベーションも研究対象に加えた。こちらも1戸あたりのCO2排出量が、建て替えた場合に比べ63%減という、先の「北習志野台プロジェクト」同様の高い数字を弾き出した。

山下社長はその反響の大きさを次のように口にする。「環境意識の高いお客様から引き合いの声が増えているのを感じます。異業種からの問い合わせもありました」

研究は、同社から依頼を受けた国士舘大学の朝吹香菜子研究室と金沢工業大学の佐藤考一研究室の3者による共同で行われた。朝吹准教授も声を弾ませる。「興味深い結果で、リフォーム会社から私のところにも問い合わせがありました。今後も引き続き、資源の循環性についての研究を進めたい」

国士舘大学 朝吹香菜子 准教授国士舘大学
朝吹香菜子 准教授

リフォーム産業フェア2022
リノべる 山下智弘社長 講演決定!

日時:7月26日(火)11時50分~12時40分
会場:東京国際展示場(東京ビッグサイト)

[講演タイトル]
中古住宅仲介×リノベ実績は累計4000件超!全国1位のワンストップリノベーション事業者「リノベる」が語る、これからの暮らしと住宅提供者に求められる役割とは?

三井、住友も...省エネ研究、続々

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