東北住建 木村 雅美相談役
東北住建(岩手県紫波郡)は、福島を除く東北6県のビルや住宅用建築資材の卸売や施工を行っている。東日本大震災当時、同社社長だった木村雅美現相談役は、以来、被災地の復興に関わってきた。
「震災後は、お客様から"ガソリンがない"といったSOSがたくさん届きました。2週間後、陸前高田にはじめて入った社員は、"町がありません!"って泣いていました。その後、私も入りましたが、田老町、山田町、大槌町...お客様がみな、いなくなっていた。言葉が出ないとはこういうことだと思いました」(木村相談役)
仮設住宅の設置が急がれ、地元の募集も始まった。当初は、資材調達を不安がる業者が多く、同社は仕様プランを作成。資材提供も約束して支援した。
「ほかの応急仮設住宅では、断熱性能不足で後から追加工事等が必要になったりしました。当社は、北側窓はLow-Eペアガラスを入れるなど、北国を熟知した者が作り、問題は起きませんでした。資材も、皆さんとても協力的で、日本のメーカーのよいところだと思いましたね」(同相談役)
震災から4年余り。同氏は "被災地は日本の先行的モデル"になり得るという思いを強くしている。
「今、多くの地域では、高齢化と人口減少が止まらず、町の機能を中心部に集める"コンパクトシティ化"が考えられています。今回起こった悲劇は、大自然の猛威による"強制減築"ともいえます」(同相談役)
少子化が進む日本では一人っ子同士が結婚し双方から2軒の家を相続しても、1軒は最新の省エネ基準に基づいた高性能住宅に建て替えて暮らし、1軒は壊すことになる。仮に全国で毎年、既築住宅120万戸の半分は建て替え、半分は壊すことが繰り返されると、40年後には、2400万戸の古い住宅が減築され、それと同じ数だけ、高性能住宅に生まれ変わる。
「ただ"減築"には、土地所有権の集約を促す法制度、集住を促す対策、新生活での様々な保障など実現するための強い支援が必要です。日本が全国で直面することになるこの問題への対応策を、今、被災地でしっかり組み立てられたら、あの災禍を未来の希望につなげられるのでは、と思っています」(同相談役)

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