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空室増える街、リノべで地域再生らいおん建築事務所

空室増える街、リノべで地域再生 らいおん建築事務所

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リフォーム新ビジネス ≪キーワード:空き家≫

 空き家数の増加が止まらない。総務省が昨年発表した「平成25年度住宅・土地統計調査」によれば、国内の空き家数は過去最高の820万戸となり、総住宅数の13.5%を占める。このまま空き家数が増えれば、街は空洞化していき、活力を失っていく。今後大きなビジネスの機会になりそうなのが、この空き家活用。いかに空室を魅力的に再生し、街に新たな魅力を付加していけるかがカギだ。

らいおん建築事務所 (東京都豊島区) 嶋田洋平代表らいおん建築事務所 (東京都豊島区) 嶋田洋平代表

 「空き家が増える街というのは、分かりやすくいうと魅力がなくなってしまったエリア。課題解決のためには、建物の使い方をあらためて考え、そこにリノベーションという手法を使って新しいコンテンツを入れる必要があります」

 こう話すのはらいおん建築事務所(東京都豊島区)の嶋田洋平代表。同社では、長らく使われなくなってしまった空き家に新たな付加価値をつけるリノベーションを推進している。単に建物の再生をするのではなく、地域の再生にまでつなげようとしているところが、一般的なリノベーション会社と異なる点だ。

若手の起業を促進

 同氏の主要プロジェクトの1つに福岡県北九州市にある商店街「魚町銀天街」の再生がある。この商店街は日本で初めてアーケードを作ったといわれる歴史ある商店街だが、歩行者通行量や売上減少などの課題を抱えていた。また、「店舗やオフィスを借りたい人のニーズに合わず、空室も増えていた」(嶋田代表)

 同氏は、この商店街の中で空き店舗だった150坪の店舗を、クラフト作家がアトリエ・ショップとして使える場「ポポラート三番街」として再生。ユニークなのは、このテナントは1坪から借りることができること。店内には手づくりの雑貨を中心に、アクセサリーや洋服などのクラフト系作家が集まった。最大で70人。商店街に新しい利用者を動員し、新規開業・雇用促進につながった空き家のリノベーション事例だ。

クラフト作家がショップとして使える場として再生した「ポポラート三番街」
クラフト作家がショップとして使える場として再生した「ポポラート三番街」。
(写真は3点とも一般社団法人リノベーションまちづくりセンター」)

 「商店街という街の中心部にお店やアトリエを持ちたいという人は数多くいます。でも、150坪のフロアをまるごと借りれる人はそういない。1坪から借りれて、みんなが集まれる場所があったらどうかと告知してみたらすぐに人が集まった。空き家のような遊休不動産の再生で重要なのは、リノベーションという手法で新しいコンテンツを生み出すこと。そのコンテンツとは例えば、新しい暮らし方や働き方」

 その他にも、同じ商店街の中で13年間放置されていた築50年の2階建てビルを、若手の建築家やデザイナーが起業するためのアトリエ・ショップ「メルカート三番街」として再生したプロジェクトもある。

築50年、13年空き家だったビルを若手建築家などが利用できる「メルカート三番街」に再生
築50年、13年空き家だったビルを若手建築家などが利用できる「メルカート三番街」に再生

 若手クリエーターにどれくらいの家賃なら支払えるかをヒアリングしてから再生。家賃相場の半額くらいになった物件もあるが、新たに10組が入居。空室物件が再稼働し、市街地の活性にもつなげている。

収益生むモデルを

 嶋田代表は街の遊休不動産の再生を通じた地域再生を全国に広めようと「リノベーションスクール」を企画・運営している。スクールはこれまで、北九州、熱海、山形、鳥取、浜松、和歌山などで開催。これは空き家を持っているオーナーに物件を提供してもらい、スクールに参加するメンバーたちが再生アイデアを考えるというもの。

遊休不動産の再生アイデアを討論するリノベーションスクール
遊休不動産の再生アイデアを討論するリノベーションスクール

 北九州市内についてのプロジェクトは、嶋田氏が代表を務める「北九州家守舎」がアイデアを実行に移してリノベーションする点がユニークなところ。 スクールで求められるのは街を再生するだけでなく、実際に収益を生むモデルでならなければならない。

 「オーナーさんは空き家になってしまった物件をどう使えばよいのかが分からなくなっています。その一方で、何か新しいことをしたくて場を求めている人がいる。そのマッチングがうまくいかないのが現状。自立型の民間街づくり会社として新しい暮らしの場をリノベーションで作っていきたい」

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