ヌリ―ズ 佐藤政夫 社長
塗装工事で余った建築塗料を地域イベントなどで積極的に活用しているヌリーズ(東京都杉並区)。イベント主催者として会場の装飾やアーティストのライブペイントにも携わり、地域で大きな信頼を獲得している。「ボランティアなのでお金にはならない。しかし、そこで得られた信頼はやはり会社に返ってくる」と話す佐藤政夫社長に、社会貢献活動への想いを聞いた。
【聞き手/報道部長 福田善紀】
奉仕活動で得られる信頼
――廃棄塗料を活用している地域イベントとは、具体的にどういった内容なのでしょう?
飲食や物販、ワークショップ、ライブペイント、音楽ステージなどがあるイベントです。長らく携わっているのは「中野にぎわいフェスタ」という中野区のイベントで、ここでは全体の総括・運営をさせてもらっています。会場の装飾をはじめ、2m×2mの巨大キャンバスを使ったライブペイントや、子どもたちも参加するワークショップなどに廃棄塗料を提供。ワークショップではジャム瓶に入れたさまざまなカラーの塗料をDIY用にプレゼントもしています。
――参画しているイベントの規模感は?
中野にぎわいフェスタは中野区と西武信用金庫、キリンホールディングス協賛で、およそ3万人が来場します。他にも、中野区や観光協会から依頼をいただいて、商店街や公園で開催される小規模イベントにも参画しています。基本的にはワークショップとライブペイントの運営で、そこで知り合ったアーティストの方には、その後ご希望があれば廃棄塗料をお譲りしています。ボランティアなので色の指定や郵送には対応できませんが、それでも「欲しい」という声はたくさんあります。
初めてのライブペイントの様子
――なぜ、こうしたボランティアを始められたのでしょう。
僕はもともと、塗装会社のほかにイベント会社も運営していて、地域イベントには10年以上前から携わっています。その中で6年ほど前にライブペイントのアーティストと知り合い、余っていた塗料をお試しで使ってもらったところ、すごく喜んでもらえたのです。そこから「分けてほしい」という声が増えてきたので、ジャム瓶に入れてプレゼントするようになりました。
――容器の瓶にもコストがかかりますが、無償で提供しているのですか?
はい。雨で仕事のない日に、職人さんたちに瓶詰めを手伝ってもらっています。ボランティアなのでこの活動が直接お金になることはありませんが、イベントをきっかけに仕事の依頼をいただくなど、会社の信頼にはつながっています。また、知り合ったアーティストに店舗の手書き看板を外注として依頼するなど、人とのご縁をつなぐきっかけにもなっている。社会に対する時間とお金の投資が、結果的に会社の成長につながってくれています。
ジャム瓶に詰めた塗料
ゴミの提供がブランディングに
――それではこれからも、建築廃材を使ったイベント等には積極的に参画していかれるのですね。
そうですね。今年は中野区との共同事業で「中野ミューラルプロジェクト」という壁画プロジェクトがスタートします。その一環として今年9月に「中野ミューラルフェス」という壁画イベントを開催予定です。具体的には、国内外から壁画アーティストを招待して、公園の真ん中に設置した大きな壁に2日間かけてアートを描きます。裏コンセプトとしてSDGsを掲げているので、会場の装飾やワークショップでも建築廃材を活用しますし、音楽ステージでは、建築廃材で作った楽器を子どもたちに演奏してもらう予定です。
――活動に共感される企業も多いと思います。これからでもそのイベントに参画することは可能ですか?
もちろんです!これからいろいろな方にご協力の相談をしていきたいので、共感いただいた方はぜひ当社までご連絡ください。僕がこれから注力したいのは、建築業界のブランディングとマネジメントのサポート。それによって、建築業の社会的地位向上に貢献できればと考えています。ゴミとされている資材の提供は、その一歩につながるはずだと信じています。
8人のペインターによるライブペイントの様子

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