日本オフィス家具協会、LDKに「W」が付く時代に 住まい=Workplaceの可能性
日本オフィス家具協会 貫名英一 専務理事
コロナ禍によって多くの企業でテレワークを実施するなど、この2年間で働き方は大きく変化した。働く空間づくりにも新たな変化が出始めており、そのための空間改修ニーズは高まると予測される。日本オフィス家具協会(東京都中央区)の貫名英一専務理事に市場の動きを聞いた。
オフィス家具、改修マーケット改善
――2020年2月以降、オフィス家具のマーケットはどう変化しましたか?
オフィス家具の動向は経済産業省の生産動態統計で確認できます。統計によれば、2020年3月までは好調でしたが、4月から前年比10~15%と一気に落ち込みました。しかし、9月に営業
を再開すると仕切り板など感染対策用品が売れました。トータルで見ると売上は前年比10%増でした。
――オフィスは縮小していると思っている人が多くいます。
確かにオフィス面積は縮小傾向ですが、移転やリニューアル需要がありました。オフィス家具の販売だけでなく、施工費や内装工事も業界の売上になりますから10%増という結果でした。
働く場の新しい機能の需要
――働き方に合わせての改修需要が高まっているということですね。最近になって、全社員出社の方針を打ち出す企業が出てきました。今後、オフィスはどう変わっていくのでしょうか。
今までは社員が何人いるから何人分のオフィスがいるという発想でした。しかし、これからは会社に来て何をするのかが問われます。
これからのオフィスに必要となる機能は、新しいことを創造するためのコミュニケーションや企業理念を伝える場所と、テレワークが増えたことによるウェブ会議の設備です。
――全社員出社の企業が増えてくると、人数分のスペースが必要になるのでは。
首都圏の場合、サテライトオフィスという需要があります。例えば、都心の中心地に3000人が集まるのではなく、センターオフィスに1000人、各沿線に500人規模のオフィスを複数作ればいいのです。最寄りのオフィスに出社し、センターオフィスに行くのは月2回程度。このような働き方が増えるでしょう。
健康で働くが本当に必要な点
――ただ、新しい働き方にかわり、どうしたら生産性が高まる、という明確な成功事例がまだないのかなと感じています。協会が推奨する働き方はありますか。
コロナになって、本当に必要なのは何かがわかってきました。それを追究して行き着いたのがウェルビーイング、つまり心身ともに健康な状態で働くこと。これが重要です。
当協会では今、ウェルビーイングの計測に取り組んでいます。ただし、個人は計測できるのですが、個人が集まった会社のウェルビーイングをどう測るのかが課題です。空間に依存しているのか、人に依存しているのか。
――空間づくりがウェルビーイングに貢献するとわかれば、サービスを提供する際、重要な要素になりますね。
「このような空間を作ったらウェルビーイングを通じて企業の業績に貢献する。働く人の幸せにも貢献する」。こうした基準が作れたらいいと考えています。
――テレワークが継続するなら、家もウェルビーイングな空間がいいのでしょうか。
もちろんです。リフォーム会社もウェルビーイングを学んでもらいたいです。従来のマンションは3LDK。これからはW(Workplace)がつきます。例えば、2LDKW。Wがつくと付加価値が高くなるでしょう。
――今後、協会としてどんな取り組みをしていく予定ですか。
外部向けには、どのような働き方とオフィスが最適かといった情報発信を続けます。会員向けは人材育成。若い人がやってみたいと思える業界にしていきます。
今年4月、第1回目となるオフィス・施設用家具専門見本市「オルガテック東京2022」を開催しました。国内63社が出展し、3日間で2万2000人が来場しました。来年は海外からの参加者も募り、出展100社で3万人の来場を目指します。
(聞き手/報道部長 福田善紀)

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