災害に強い屋根の普及を通じて住宅の価値を向上させることを目的に、2021年7月に設立された一般社団法人日本ルーフレジリエンス協会(東京都杉並区)。主な活動は、既存住宅への、台風や大雪といった気象災害の影響を受けにくい屋根材や施工方法の普及。とりわけ、高い耐風性に加え、軽量で地震による揺れが小さいストーンチップ(石粒付きガルバリウム鋼板)屋根材の周知に注力している。同協会の横井敏昭代表理事と、賛助会員である伊藤忠建材機能流通事業部の梶山啓助課長に、同屋根材のもつメリットと協会の取り組みなどについて聞いた。
屋根の強靭化改修で住宅価値を高める
メリットだらけのストーンチップ
(左)伊藤忠建材 機能流通事業部 開発営業一部営業一課 梶山啓助課長
(右)日本ルーフレジリエンス協会 横井敏昭代表理事
──公平な団体の立場でありながら、ガルバリウム鋼板に石粒が付いた屋根材であるストーンチップ屋根材の周知を進めています。同屋根材を押す理由はなんですか?
横井 ひとつは長期保証ができることです。従来のスレート屋根は10年15年ごとのメンテナンスが必要ですが、ストーンチップは30年経ってもノーメンテナンスで大丈夫。アメリカの場合、40年50年メンテナンスなしで使っている事例もあります。
──現在のストーンチップ屋根材のシェアはどのくらいですか?
梶山 新築の採用率は1%もないと思います。既存住宅を含めても約3%といったところでしょうか。
──メリットが多いですが、新築時の採用率は高くない理由はなんでしょう。
梶山 第一にコストですね。ハウスメーカーは瓦がメインで、スレート屋根を採用するにしろグレードの高いものを使いますが、それと比べてもまだ値段が高いため、使いにくいのかもしれません。
ただ、軽いというメリットがあり、リフォームには適しています。今の屋根材の上に載せるカバー工法の場合、屋根材が重いと地震などで揺れが大きくなってしまう。ストーンチップ屋根の重さはシングル屋根材の半分で6kg/㎡ほどです。また、セラミックコーティングされた石粒を施すことで、瓦屋根と同様に色落ちもほとんどしないので、メンテナンスが長期不要な点も魅力です。
──初期費用の高さがあっても、利用するメリットは大きいように感じます。
梶山 石粒には滑り止めの効果があり、通常の2階建て住宅には雪止めを設けることを推奨していません。札幌市の無落雪屋根にも認定されています。
屋根は、一番上で家を守っているものです。台風や降雪、地震から守ってくれているのは屋根で、本来は一番真剣に見直さなければいけない住宅の箇所です。お話した通り、このストーンチップ屋根材にデメリットはほとんどないと思っています。
──これからの協会の活動は、認知活動を進め、採用率を高めるということでしょうか。
横井 そうですね。協会の創設理念には「使用価値」という言葉が何度も出てくるんですよね。つまり、災害がきて屋根が飛んでしまっては家が使えなくなりますし、使用価値が長いものが資産価値にもつながって安心して買え、アパートなどでは安心して賃貸できるということです。実際、インターロック工法という軒下にからませる独自工法を使っており、商品によっては、風速70メートルまで耐えられるので、とても強靭化に適しています。
──ストーンチップの普及には、どのような取り組みが必要とお考えでしょうか。
横井 屋根の診断をする時などに、普及のチャンスがあると思います。会員に向けてニュートラルな立場で消費者の相談にのれる認定制度、ルーフアドバイザーの提供も始めており、人材育成活動も進めていきます。
強い屋根を作り、守っていく人の育成を
──会員数と、現在の活動状況を教えてください。
横井 メーカーなどの賛助会員が13社、工務店や不動産、塗装会社などの正会員が20社の33社です。
具体的な活動としては、正会員、賛助会員と月2回、各1時間の勉強会と研修会を行っています。1回は屋根の基本知識とリフォームの仕方、営業研修、保険や保証に対する知識やストーンチップ施工の座学と、もう1回はメーカーさんからの商品説明や施工会社の事例紹介などです。
──今後、協会としてはどういった展望をお持ちでしょうか。
横井 まず、ルーフアドバイザー取得者を増やしていきます。そして、ストーンチップ施工や屋根強靭化塗装に必要な板金、塗装職人を増やしていくことが急務です。塗装や不動産会社の方が入ってきて、各自のフィールドできちんとした施工ができるようにすることや、長期で外国人技能者の適切な育成サポートもしていきたいです。
入会金は不要で、正会員は年会費3万円、2年目以降は1万円です。賛助会員は年10万円となります。いろんな方に紹介いただいていますので、正会員が増えてもらえればと思っています。
【聞き手/報道部長 福田善紀】
平らな既存屋根なら、重ね葺きができるので経済的

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