三井不動産リフォーム 尾崎昌利代表取締役社長
本社 * 東京都新宿区 / 設立 * 1980年4月 / 資本金 * 3億円
株主 * 三井不動産株式会社70%/三井ホーム株式会社30%
売上高 * 109億円 平成23年度実績 / 代表者 * 代表取締役社長 尾崎 昌利
社員数 * 318名(平成24年4月1日現在) ※フランチャイズ店は含まず
スマートリフォームが三井のエッセンス
既存住宅の性能向上に重点を置いた「スマートリフォーム」を推進する三井不動産リフォーム(東京都新宿区)。同社のスマートリフォームとは、住宅の高断熱化に加え、燃料電池・蓄電池・太陽光・HEMS(エネルギーの見える化システム)といった創エネ・省エネ設備を搭載し、さらに自然光、風を取り入れて温熱環境をコントロールするパッシブ設計を導入するというもの。尾崎昌利社長に狙いを聞いた。
最新設備より基本性能が大切
―――東京・自由が丘にオープンしたスマートリフォームのモデルハウスを拝見しました。これだけ明確に「スマートリフォーム」に取り組む住宅会社もまだ少ないでしょう。
このモデルハウスでお伝えしたいことは、省エネ、創エネ、蓄エネの設備機器を積極的に導入することも大事ですが、そもそもの家の基本性能や燃費というものを良くすることが大切ということです。設備を載せても断熱性能が悪かったら省エネにはなりません。まずはベースの温熱環境を整備し、それから設備を導入した方が効果が大きいわけです。
―――省エネ化を図るためには根本的な断熱性能を高めることが重要なわけですね。
例えば、屋根に塗る遮熱塗料があります。夏場のことだけを考えたらすべての住宅の屋根を遮熱化してしまった方が、太陽光発電システムを搭載するよりエネルギー削減効果はおそらく大きいでしょう。ベースの温熱環境を備えて、それからいろいろな省エネ、創エネ、蓄エネを絡めれば鬼に金棒です。
―――断熱化は健康にもプラスの影響があるというデータも最近登場してきています。
省エネで健康、さらに本当に暮らしやすい快適な家になったという気持ちの問題まで含めたらメリットはさまざまあります。モデルハウスではそれを実現する設計の工夫を見てほしい。それと、既存住宅は建て替えなければ今風のスマートハウスのようにならないと考えていらっしゃる方もまだまだ多い。そのような方たちに対する答えをきちっとこのモデルハウスでは伝えていきます。
―――来場者の反応はどうでしょうか。
「こんなことが出来るんだ」「分かりやすい」と好評です。相談会などのイベントスペースとしても使っており、私どものリフォームについての考え方を具体的に理解していただく大きな材料になっていると思います。
―――しかし、「住宅の性能を向上させよう」という考えを持っている日本人はまだまだ少ないのではないでしょうか。ガラス1枚の寒い家でも「家というのはこんなもんだ」っていう人が結構いるのではないかと。そうなると「スマートリフォーム」という考え方を理解してもらうことはなかなか難しいチャレンジといえます。
欧米のように、適宜直しながら住み継いでいくのが家だ、という意識はまだまだ低いかもしれません。おっしゃられたように我慢してしまうという方もいますし、「築年数が30年も経って古くなったら建て替えてしまおう」という人もいる。そういう中で性能向上リフォームを選ぶという方はまだ少ないかもしれません。
―――「スマート」という言葉も少しずつ普及し始めていますが、まだ理解は十分とはいえません。
確かに太陽光を載せて「これで発電できるので省エネになります」といった方が分かりやすい。そういう意味で理解していただくには時間はかかると思います。
―――しかし、例えばヒートショックなどが原因とされる入浴事故で年間1万7000人が亡くなっています。この中には家全体の断熱性能を高めれば防げるケースも数多くあると思います。
お客様はリフォームすると、バッと家全体が奇麗になるということは分かっています。しかし、それがもたらす健康への効果などについてはまだ十分に知られていない。今は温熱環境の向上による効能を数値化したデータが出てきていますので、これらをもとにお客さんにメリットを伝えていくことが大切です。理解される方がどんどん増えてくればくるほど、私どもに対する注目度が上がってきます。そのためにも、私ども自身が「このスマートリフォームが三井のエッセンスなんです」と、共通認識を持ってお客様に提案していく必要があるでしょう。こういう繰り返しの中で他社と比べてみると「やっぱり三井の提案は際立ってる」とお客様にご理解いただくことができれば事業者としては一番幸せです。
―――以前は三井といえば「女性プランナーによるデザインリフォーム」というイメージがありましたが、なぜ今「スマート」に着目しだしたのでしょうか。
一つは時代感というもの。もう一つは三井不動産グループが「スマートシティ」といった大きな街づくりをしている流れを受けてということ。グループの中でリフォームを担当する私どもの役割は、住宅一戸一戸のリフォームでも「スマート」を追求していこうということです。確かに以前からデザインリフォームを打ち出していましたが、今は「スマート」という部分も当然含んでのデザインリフォームになります。

東京・自由が丘にスマートリフォームのモデルハウスをオープン。築50年の戸建てを再生

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