老舗の屋根工事会社、坪井利三郎商店(愛知県名古屋市)は昨年9月に複合施設「瓦(かわら)んと」(同・長久手市)を開業した。普段は触れる機会のない瓦職人の仕事を間近に眺めながら、瓦にまつわる職業体験や催し、食事などが楽しめる施設として、連日賑わいを見せている。仕掛け人は、5代目社長・坪井健一郎氏。「職人の育成と技術の継承」を理念に掲げ、瓦業界の未来のため、変革に挑む坪井氏に話を聞いた。
複合施設「瓦んと」開業
瓦職人も「変わらんと」
坪井健一郎社長
1902(明治35)年創業、名古屋市・長久手市・東海市を中心に展開する屋根外装、社寺営繕、エクステリアの専門工事会社、坪井利三郎商店の5代目社長。1986年名古屋市生まれ。慶応義塾大学卒後、大手商社で鋼材事業に関する職務を経験したのち、2012年に入社。営業本部長、専務取締役などを経て2023年より現職。
──「瓦んと」のコンセプトを教えてください。
「瓦んと」の敷地は、もともと当社が60年使ってきた瓦職人の作業所兼資材置き場です。そこに、カフェ、菜園、屋外テラス、フリースペースなどを併設したかたちですね。職人の現場というのは、一般の方には近寄りがたいもの。食事や職業体験を通じてその垣根をとり払い、瓦と職人の仕事をもっと身近に感じてもらいたいと考えました。
──名称がユニークです。由来はどこにあるのでしょうか。
カフェやフリースペースを設けた
瓦業界は昔ながらの職人気質で、仕事の教え方も「背中をみて覚えろ」という日本の伝統産業らしいやり方です。加えて我々職人は、技術には自信があっても、発信するのは得意ではありません。とはいえ人材不足の中、そんなことを言っていたら若い人は来てくれない。まず自分たちから「変わらんと」。そんな想いと「瓦」をかけて生まれた名前です。
──カフェは、伝統技法「むくり」を用いた瓦屋根がとても印象的です。

最新記事
この記事を読んでいる方は、こんな記事を読んでいます。
- 1659号(2025/08/04発行)21面
- 1658号(2025/07/28発行)21面
- 1657号(2025/07/21発行)11面
- 1656号(2025/07/14発行)11面
- 1655号(2025/07/07発行)19面