レンツール(東京都立川市)は、工具のサブスクリプション・レンタルサービス「レンツール」を昨年9月から提供開始した。同サービスは、工具メーカーのマックス(東京都中央区)の社内ビジネスコンテスト「第1回新規事業創出プロ」にて誕生。大工人口が減少する建設業界で、若手の入職ハードルを下げ、離職に歯止めをかける一助となることを目指している。その経緯と今後の展開について、本田哲司社長に聞いた。
若年大工の定着を目指す
「まず工具は自前で」からの脱却
工具の中でもコンプレッサや丸のこは利用者が多い
──若手大工をサポートしたい思いで、会社を立ち上げたのですね。
3年前に、新規事業を創出すべく、マックス社内でビジネスコンテストを実施し、社内で競い合った結果、レンツールの事業が優勝しました。マックスの子会社として私が会社を立ち上げて、昨年9月に東京都の多摩地域限定でサービスを開始しました。
もともと工具メーカーというバックボーンがあるので、大工からの認知度や信頼があります。そのため、工具を軸に若手大工の急減という問題に貢献したいという思いを強くもっていました。
工具の初期費用を下げるにはどうすれば良いか、方法としてはレンタルかサブスクしかないという考えに至ったのです。
──工具の初期費用を下げることにより、若手大工の減少という問題をどう解決できるのでしょうか。
大工は使用する工具がすごく多くて、必要最低限の工具を新品で揃えようとすると50万円くらいかかります。若者が、それだけのお金を払って後で取り返そうにも、見習い期間が長いのでなかなか難しい。こうした慣習が、今の時代に合っていないのではないかという思いがありました。
少額から仕事が始められて可処分所得が増えれば、入職はもちろん離職率の歯止めにもなります。工具もどんどん新しいものが出ますし、親方から古いものを預かるよりも新しい工具で気持ち良く作業してもらう方が、離職を防げるかなと考えました。
──そうなると、工務店やリフォーム会社にとってもメリットは大きいですね。
社員大工でも工具は自前という会社が少なくないのですが、営業マンでいえば、パソコンや営業車を自分で持てと言われているのと同じですので、それはちょっと違うのではないかと。レンツールにご相談いただいて、会社で工具の面倒を見てあげる形を作ることが必要だと考えました。
工具のサブスクは、最短12ヶ月~36ヶ月で長期利用できるサービス。満期の36ヶ月が経過すると、利用者に所有権を譲渡する
サブスクで所有、レンタルでお試し
──レンツールのサブスクは、3年間利用すると自分のものになるそうですね。
大工は、工具を自分のものにしたいというニーズが強くあるので、3年間使うと自分のものになるよう設定しました。工具に不具合が生じても、サブスク利用中の3年間は利用料金に修理費用が含まれていて、修理中は代わりの工具もお届けします。最低1年契約で自動更新をしますが、更新のタイミングで返却も選択でき、工具を利用した分だけ費用が発生する仕組みにしています。
最新の工具が修理費用込みで使えるので、仕事が止まらないことに価値を見出してくださる方もいます。
──レンツールの使い方について教えてください。
サブスク・レンタルともに現場に届けて、現場からご返送いただけます。車を持っていない若手大工もいますし、都心部では駐車場から現場まで遠いことも多いので、常にイレギュラーな動きや出費が求められる環境に寄り添いたいと思っています。
利用料金は商品ごとに変わりますが、例えばマックスの高圧専用エアコンプレッサ「AK-HH1310E」のサブスクは月額で税込6400円、レンタルは30泊31日で税込1万2000円です。
利用が多いのは、購入すると高額なコンプレッサや釘打ち機、比較的機械の寿命が短い充電工具です。とくに丸のこは壊れやすく修理が多いので、ニーズがあります。私たちとしては「ネットに大きな工具箱があって、ポチッと押せば出てくる」みたいなイメージを持っていただけるとありがたいですね。
──今後、サービス提供エリア拡大の予定はあるのでしょうか。
この4月から提供エリアを関東の1都6県に広げましたので、より多くのお客さんに利用してもらいたいです。次に住宅着工数の多い大阪や名古屋、ゆくゆくは全国に拡大していきたいと思っています。
将来的には、若手大工はもちろん、業界を大枠でサポートできるように、建設キャリアアップシステムとの連動を早期に実現したいですね。建設キャリアアップシステムに登録する職人さんへの値引きや、就業年数が上がるにつれて値引率を変えるといったことも構想しています。
本田哲司社長
会社名 | :レンツール |
---|---|
代表者名 | :本田哲司 |
本社所在地 | :東京都立川市 |
創業 | :2023年9月 |
従業員数 | :2名 |
事業内容 | :工具のサブスクリプション・レンタルサービス「レンツール」の運営 |

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