ルノン 西山啓明 社長
空気改善で悪臭を吸着・分解
「空気を洗う壁紙」という新しい発想で、新たな時代の住宅環境を考えるルノン。西山啓明社長に製品開発の経緯と、今後の生活で内装材が果たしていくべき役割について聞いた。
独自の消臭物質は「トリプルフレッシュ」
―――「空気を洗う壁紙」ということですが、率直な質問ですが、空気は洗えるものなのですか。
空気中に漂う悪性の原因物質を取り除くということです。空気触媒を用いて悪臭を半永久的に吸着・吸収する壁紙です。この壁紙が張られているだけで悪臭の原因物質を分解・消臭し続けることができます。主に硫化水素やアンモニアなどのトイレの臭い、ニコチンなどのたばこの臭い、シックハウスの原因のホルムアルデヒドなど全部で8つの原因物質に効果的です。
―――取り除くということは別の香りでごまかすわけではないのですね。具体的な仕組みはどうなっているのですか。
親会社の住江織物が持っていた消臭剤「トリプルフレッシュ」の技術を用いました。まず壁紙表面の「トリプルフレッシュ」が空気によって流れてきた悪臭の原因物質に触れ、吸着します。吸着した物質は触媒作用により水と二酸化炭素に分解され、その後、水と二酸化炭素は壁紙から放出されます。放出後、トリプルフレッシュは元の状態に戻り、機能が損なわれることはありません。つまり24時間、常に吸着、分解、再生のサイクル消臭ができるわけです。光も電気も使わずに消臭する、環境にやさしい消臭加工技術です。
―――8種類ということですが苦手な物質もあるということですね。
残念ながら、芳香剤、香水、お香、トルエン、カビには弱いです。人工的な化学物質は分子構造が複雑で、この触媒では分解できないものもあります。エアコンから出る独特の臭気も分解しにくい物質です。生活悪臭と、特にシックハウスの原因となるホルムアルデヒドに照準を合わせて吸着・分解します。
―――どのような経緯でこの商品は開発されたのですか。
住江織物はもともとカーペットを生産していた会社で、今では事業は拡大し自動車の内装材や鉄道車両用内装材など、公共交通機関にシート表皮材を納入しています。
―――つまり車や列車の内装のシートなどがそうですね。
それらの製品開発の過程で付加価値のある内装材についての研究が始まり、カーペットなどに消臭機能が付けられないかと考えていたところ、シックハウス症候群が社会問題化してきました。
―――そんな中で開発されたのがトリプルフレッシュだったのですね。
その消臭機能を、住江織物が得意としていた室内で使用されるカーテンやカーペットなどのインテリア製品に持たせ、室内環境汚染を防ぐ製品を開発しました。それをルノンでは壁紙でやろうということです。
―――多くのご家庭では消臭は芳香剤や消臭スプレー、空気清浄器などで行っていますが、壁紙で消臭ができるというのは画期的ですね。
実はこれまで既に、トリプルフレッシュは、冷蔵庫の脱臭や空気清浄器に使われてきました。また品質についても、弊社では発売以来、全ロッド出荷前検査をしているので安心してください。
―――カーペットと壁紙では生産の仕方など異なるところがありますよね。製品化するにあたって、工夫した点などは何ですか。
通常は世に出回っている消臭クロスと呼ばれる製品では、消臭効果のある活性炭などを塩ビ素材に練り込んで作ります。しかし表面に消臭機能のある物質が出ていないと意味がありません。そこで弊社では練り込むのではなく、表面に固着させることを考えました。表面に均一に消臭剤を塗らねばならず、なおかつ拭いて簡単に取れるのではダメなので、ここが特に開発に苦労した点です。
―――カーペットなどと違い壁紙にするメリットは何ですか。
一般的に住宅の壁は床の面積の約3倍あります。ここに悪臭の吸着機能のある壁紙を張れば、より大きな効果が期待できます。6畳に壁4面の施工で十分な効果がありますが、もっと広い部屋では天井にも施工することをお勧めします。
―――一般的に壁紙に対するユーザーの意識は低いです。抗菌や防カビから傷のつきやすさを示す強度など機能面についてはまだまだ認識が不十分ですね。
従来、壁紙は白くてどれも変わり映えがしませんでした。とりあえず奇麗なものが張ってあればそれでいいという感じでした。実際、クロスの市場は年間6億6700万㎡ほどあるのですが、そのうち消臭機能を備えたものは1.8%ほどです。まだまだシェアは少ないですが、これから増えるのではないかと期待しています。弊社では、現在、この壁紙の売り上げは全体の15%ほどですが、出荷件数は毎年2ケタ増で伸びています。
▲サイクル消臭機能で半永久的に吸着・分解・消臭する

1932年創業。1946年に襖紙の卸業に変更し、のちに壁装材の販売を開始。創業して以来一貫してインテリア商品づくりを行う。現在では、壁紙を中心にインテリア商品を扱っている。主力商品である壁紙は独自の商品開発を行い、空気を洗う壁紙といった機能性壁紙に注力している。

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