Square日本法人 水野博商カントリーマネジャー
新日鉄ソリューションズで、多数の大規模インターネットシステムの開発に携わり、外資系コンサルティング会社を経て、2009年4月にペイパルジャパンへ入社。日本支社の立ち上げ、PayPal Hereなどの新サービスを立ち上げる。2013年10月に日本法人代表としてSquare入社
事前審査不要、よりシンプルな商業活動を支援
スマートフォン(スマホ)によるクレジットカード決済会社「スクエア」のサービスが日本で広がりを見せている。簡単な登録手続きでスマホ決済を導入できることから、日本でも小売店を中心に拡大。同社日本法人(東京都港区)の水野博商(ひろあき)カントリーマネジャーは「中小や個人会社の多いリフォーム、設備業界などでも利用者を増やしたい」と話す。
気軽にカードを使いたい
――「スクエア」のCEOジャック・ドーシー氏はツイッターの創業者だそうですが、どんな経緯で御社を創業したのですか。
当社の創業者は2人いて、ジャックと、もう1人はジャックの友人のジム・マッケルビーです。ジムは個人で事業を営むガラス工芸作家なのですが、ある時、ジムがお客様に自分の作品を売ろうとしたら、クレジットカードが使えないという理由で販売機会を逃してしまった。芸術家であり個人事業主でもあるジムは、申請をしても銀行の審査が通らなかったり、通ったとしても手数料が高かったりと、カード決済を導入するには障壁が多かったのです。お客様の手持ちの現金では足りない場合も多く、カード決済できないのはせっかくのビジネスチャンスを失うのと同じだったのです。
――アメリカはカード決済が浸透していますから、現金しか受け付けられない個人事業主さんには厳しいですね。
ジムがその話をジャックに電話し、「高機能端末であるスマホを使ってカード決済ができないか」という話になって、そこからカードリーダーをスマホに差し込んでカード決済ができるサービスが完成しました。ジムの両親もカフェ経営者だったので、個人経営のビジネスをよく知っていて、「カードをもっと手軽に利用したい」という思いを込めてこのサービスを開発したそうです。

専用のアプリをダウンロードし、イヤホンジャックにカードリーダーを付ければ、スマートフォンをクレッジトカード決済端末として使うことができる。
今後はICチップを搭載したカードにも対応したリーダーの提供も予定している
「商業活動を簡単に」
――ビジネスのターゲットは個人や中小の業者さんだそうですが、その理由は。
私どものサービスの根底にある考え方は、"Make Commerce Easy"、訳すと「あらゆる商業活動を簡単にしよう」です。カード決済のようなお金周りのサービスにおいて、大企業さんに比べて使いづらかったり高額だったりするサービスの障壁を減らしていこうという考えから当社の製品は作られています。
――日本もアメリカと同じく、個人事業主が多いですから、そこが成長市場になり得ますね。
また事業者さん側だけでなく、消費者側の購買体験も変えていきたいと考えています。今のビジネスで「決済」はお金のやりとりに終始しがちですが、本当は売り手はもっとお客様とコミュニケーションしたいと思っているし、お客様も商品についての話をもっと聞きたいと思っているのではないでしょうか。お金のやりとりに手間をかけず、シンプルにすることで、売り手と買い手がコミュニケーションに時間をかけ、それがリピートにもつながる。そんな方向にもっていきたいと考えています。
日本では10万店が加盟
――日本には2013年に進出し、2年で加盟店が10万店を超えたそうですね。
事前の審査がなく、導入費もかからないので、レストラン、カフェ、雑貨屋など、規模が小さくてカード決済に手が届かなかったような個人のお店の導入が増えています。また専用線を引く必要がなく、2センチ四方の「Squareリーダー」をスマホに差し込めば、どこででも決済が可能。北アルプス標高3000メートルの山小屋、穂高岳山荘さんなど、今まで地理的にカード決済が難しかった場所でもご利用いただいています。住宅の分野でも、修理や設置取り換え業者の間で導入が進んでいます。
――カード決済だと入金までに時間がかかるので、個人事業主には使いにくい面がありました。
その点も使いやすくなっていて、お使いいただく銀行口座によりますが、最短で本日決済分が翌営業日に入金されます。一般的なカード決済の月末締め、翌月末払いのサイクルに比べると入金が早いのが特徴です。
――Squareリーダーには販売情報を管理するシステムが組み込まれていて、データを経営分析に役立てられるそうですね。
スクエアの決済サービスでは日々の売り上げ状況が追跡できるので、個人商店では難しかった商品管理も簡単です。曜日、時間帯ごとの顧客動向が一目瞭然で分かるようになるので、例えば来店者が多い時間帯に合わせて営業時間を動かすことなどができます。
――今後予定している新しいサービスはありますか。
スクエア加盟店さんが自店オリジナルのプリペイドカードを発行できるサービスを、夏をめどに正式展開する予定です。今は当社周辺の10数店舗のコーヒー店に限定して発行しています。お客様がお店のプリペイドカードをお持ちなったらスマホで決済できます。これも初期コストなどの面で、個人のお店ではハードルが高かったサービスですね。
このように、当社のすべてのサービスと製品に"テクノロジーでスモールビジネスを支援する"という創業者の思いが込められています。

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