リフォームセールスマガジン2014年11月号
『知らなきゃマズイ!バリアフリー入門』
手すりの取り付けには、丁寧なヒアリングが欠かせない。施主家族の中でも特に手すりを必要とする高齢者の身体的状況や困難な動作に耳を傾け、本当に手すりが必要な箇所を見極めよう。
≪POINT≫
・身体状況は本人・家族・介護職員などと多方面からヒアリングする
・マニュアル通りの手すり設置は使いづらい場合も
・段差の問題は手すりの設置で解決できることも
介護スタッフの客観的な意見も大切
バリアフリーリフォームにおいても、施工後のトラブルや不具合を防止するためには、丁寧なヒアリングが欠かせない。床の段差の上り下りひとつとっても、10cmまでなら可能5cmでも大変と、「どんな動作がどれだけ難しいか」という度合いは身体状況により一人ひとり異なる。
「入浴動作でも、浴槽をまたぐ時が大変だと一般的に言われますが、そうではなく、ドアから浴槽までの移動が大変だという方もいます。要望は人それぞれです」と話すのは、6年前より手すり工事専門店として事業展開を行うホットアーツの中村文典代表。
本人の意見をしっかりと聞くことも大切だ。バリアフリーの依頼は、主に利用者の家族からだが、ヒアリングの際は「おばあちゃんがお風呂大変そうだから」といった家族の話だけではなく、できるだけ利用者本人の意見を聞くことが大切だ。「何に困っていますか」「どんな時に不安を感じますか」と悩みを聞き出し、具体的な問題点をあぶりだす。
「ケアマネージャーや訪問看護師、介護ヘルパー、理学療法士など利用者に関わる専門家と密に連携し、客観的な意見を聞くことも必要不可欠です」と話すのは、介護保険住宅改修の専門店としてつくば市、土浦市を中心に事業を展開している小川バリアフリープランの小川仙月代表だ。バリアフリーとひと括りにせず、個々の身体的状況に関して多方面からヒアリングし、設計することが求められてくる。
マニュアル数値の鵜呑みはNG
施工にあたっては、メーカーのマニュアルに手すりの設置位置が記載されているが、それはあくまでも基準に過ぎない。数値を鵜呑みにするのは禁物で、あくまでも利用者の身体状況や習慣に合った設置を考慮しなければならない。
「例えば廊下に手すりを設置する際は必ずメジャーを持参し、設置箇所の床面から、利用者が腕を伸ばした状態での手のくるぶしの位置までを計測して位置を決めます。利用者の身長によって安全で使いやすい手すりの高さは変わります。適切な位置に取り付けるので、施工後のクレームもありません」(中村さん)
段差解消できなくても解決する問題も
加齢に伴い足の筋力が低下すると、歩行や移動など日常生活の動作を困難にし、転倒などの事故を招く。一方で、腕など上半身の筋力は高齢になっても比較的低下せずに残る。バリアフリーというと足もとの"段差"さえ解消すればよいと考えがちだが、腕の筋力を最大限に利用する「手すり」の取り付けで、問題は解決されることが多いという。段差を解消するために大がかりな工事を要したり、予算が限られていたりする場合は、手すりの取り付け方を工夫し、施主が支障なく生活を送れるようにしよう。
また、事前に建物の状況もチェックし、設置箇所の下地が弱い場合は補強板を使用するなど、安全性を確保することもポイントだ。廊下や階段の幅、傾斜も家により異なるので注意が必要だ。利用者の生活動線も考え、連結して手すりを長く設置したほうがよいのか、ポイントごとの設置でも可能か、両側に設置したほうがいいのかなど予算を含めて柔軟に提案する。
◆浴室 入浴中の動作に着目し必要な手すりを決定
入浴手順を思い浮かべよう
転倒など最も家庭内事故の危険度が高い浴室。浴室への入退室、洗い場までの移動、シャワー、浴槽の出入りが主な動作だ。どの動作で困っているかをきちんとヒアリングできれば、必要な手すりの位置がわかる。浴槽に入る時の介助には縦に、浴槽からの出入りの介助に浴槽の横壁に横位置で手すりを設置する。浴槽の出入りについては、手すりがなくても腰かけた状態であれば可能だという場合は、椅子を利用した方法も提案することも。
≪注意!≫
入浴中の動作はどれも無意識。思い出せない施主も多いだろう。可能であれば、利用者
に服を着たまま浴室で実際に入浴手順を示してもらおう。訪問看護師や訪問介護士に入浴介助を受けていれば、担当者に入浴時の様子を聞き、どのような動作に困難を示しているかを確認する。
≪この人たちに聞きました≫
小川バリアフリープラン(茨城県つくば市) 小川仙月 代表
2006年小川バリアフリープランを設立。バリアフリーリフォーム、介護保険住宅改修の専門店としてつくば市、土浦市を中心に事業を展開している。年間実績は150~200件。福祉住環境コーディネーターの資格をいかしたアドバイスで顧客から大きな信頼を得ている。
ホットアーツ(東京都あきる野市) 中村文典 代表
リフォーム事業のほか、不動産事業、オーダー家具など多角的に事業を展開。リフォーム事業の一環として6年前から「手すり工事専門店」としてPRをはじめ、現在年間に約400件、約2000万円の売上がある。手すり工事専門のスタッフは2名。事例が豊富な専門店ならではのノウハウを活かした施工が強み。
この記事はリフォーム営業マンを応援するビジネス誌
『Reform Sales Magazine リフォームセールスマガジン』 から抜粋しました。
(毎月15日発行/A4サイズ/28ページ/オールカラー)
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