壁紙の張替時に最も多いトラブルやクレームが、張替後の凸凹や不陸など仕上がりに関するものだ。詳しく見ていこう。
壁紙張替のトラブルで最も多いのが、壁紙が下地を拾ってしまい仕上がりに影響してしまうというものだ。回避策としては、壁の構造や下地の状態を事前によく見ること。そのままでは仕上がりの美観を損ねてしまう場合は、下地の調整や場合によっては下地から張替えが必要になる。クロス選びもなるべく厚手で柄物や素材感のあるものなど、下地が響かないようなものを選ぶのが望ましい。
また既存の壁や天井の種類によって、そのままでは壁紙を張ることができない場合もある。中には張替えの際、既存の壁紙が剥がれにくく、膨大な時間と手間がかかってしまうことも。現場調査では、壁紙が張れる箇所なのか、既存の壁紙は剥がれやすいかどうかなどの確認も忘れずにしておこう。詳しく紹介していこう。
私たちも、経験済です!
新しい壁紙で不陸が目立つように...
きららホーム(岐阜県瑞穂市)
井上隆元 代表
広いLDKの天井で、下地ボードの継ぎ目ごとにかなり不陸がありました。既存の壁紙は汚れていたので目立たなかったのですが、張替えたことで不陸が分かるようになってしまいました。艶のない壁紙を張れば、もっと目立たなかったと思います。
過去の張替履歴も確認
大京リフォーム・デザイン(東京都渋谷区)
宮原奈津子 さん
頑張って張ったにも関わらず、照明の当たり具合で壁紙に影が出来てしまうことがありました。現場調査では、不陸調整が必要な壁かどうか、過去に複数回張替えた現場だと下地を拾ってしまうので、張替履歴も確認します。壁紙を提案する際は、下地を拾いやすく張りづらい壁紙は選んでいただかないように、こちらから候補を選定しておきます。
イワクラホーム(北海道札幌市)
佐々木雄一 さん
石膏ボードの下地が光の入り方によって目立つ場合があり、お客様に説明しましたが理解を得られずに、張替えることになりました。
フレッシュハウス(神奈川県横浜市)
雨宮拓也 さん
下地にクラックが入っている場所や、そこに対しての施工方法やその後のリスクをお話することが後回しになってしまった為、お客様から先にご指摘頂いてしまったことがあります。
アップリフォームジャパン(京都府京都市)
前迫美里 さん
下地の確認ができていず、厚みのない壁紙を採用してしまいました。下地を拾ってしまい、張替えとなってしまったことがあります。
満足度アップの仕上がりを実現する、壁紙張替の3大注意点
壁紙張替と一口にいっても、建物や既存の状況、使われている建材をよく確認しないと失敗に終わってしまう。現場調査時に注意したいポイントをエーゼン大塚建設(東京都江東区)の大塚健太郎代表に聞いた。
エーゼン大塚建設(東京都江東区)
大塚健太郎 代表
一級建築士。工務店の3代目として生まれ建築の大学を卒業後ゼネコンに就職。8年間勤務ののち、後を継ぐために実家に戻るものの1年8ヶ月で倒産。リフォーム会社・エーゼン大塚建設として再スタートを切る。江東区永大にあるショールームで夫婦二人三脚のリフォーム店を切り盛りしている。最近ではバレエスタジオの施工実績を増やしており、自身でもレッスンに励む日々を送る。
新しい壁紙に張り替えると、今まで古い壁紙で生活していたから気付かずにすんだことが気になってしまうことがあります。壁紙のジョイント部分の口開きや、すき間、凸凹が気になるお客様の場合は、塗装や羽目板、柄物のクロスをおすすめするほうがベターです。気にしすぎもよくないですよね。私はよく、"すき間や凸凹を見つめて暮らすより、柄物のクロスで楽しく暮らしましょう"とお伝えしています。
【注意 1】張り替えてから分かる下地の不陸・凸凹
照明を当てると一目瞭然
下地の不陸や凸凹感は照明を当てると目立ってしまいます。間接照明や壁全面を明るく照らすウォールウォッシャー照明、読書灯を計画している箇所は特に注意が必要です。
元々の壁紙が柄物の場合は要注意
元々柄物の壁紙だった箇所を、無地やマット調のクロスに変更する際は要注意です。今まで柄物だったから気付かなかった凸凹感が目立ってしまい、施主からは「今まではなかったのに...」と言われてしまいます。
"パッチテスト"をしておこう
お客様が壁紙の不陸や凸凹をどこまで気にされる方なのか、事前に確認するようにしています。弊社の事務所には、下地ボードが盛り上がっている所にクロスを張っているため一部不陸の目立つ箇所があります。定規をあてるとカタカタと音がするほどなのですが、事前にそういった箇所を見てもらい、お客様の反応をよく見るようにしています。
私も経験しています!
不陸が目立ち、間接照明ということもあり何度もやり直したが、上手くいかなったことがありました。(リアンコーポレーション・大槻敬子さん)
【注意 2】張るのにひと手間かかる壁・天井材も
化粧ベニヤ
経年劣化が進んでいる場合だと、乾燥した後に凸凹してしまうことがあります。表面を叩いたり触ったりして、コンディションをよく確認しましょう。
聚楽(じゅらく)壁
和室によく見られる聚楽壁は、壁面をパテで仕上げてから張る必要があるため、+αのコストと手間がかかります。予め注意しましょう。
岩綿吸音板
事務所のような雰囲気がある岩綿吸音板
吸音性能のある天井仕上げ材です。表面加工されているため糊が着きづらく、端が剥がれたり浮いたりしてしまいます。この天井材に壁紙を張るならば、ベニヤを捨て張りしパテで仕上げ下地を作る必要があります。工程が増えてしまいますので注意しましょう。
【注意 3】既存の壁紙は剥がれやすい?
築30年以上が経過した某ハウスメーカーの家で、基礎も非常にしっかりしているお宅でした。ただ、既存の壁紙を剥がそうとすると細かくちぎれ、6畳一間とキッチンの壁紙を剥がすのに、丸々二日かかってしまいました。これではコストも時間もかかり、予定も狂います。見た目で判断するのは難しいので、可能ならば「色・柄を合わせたいので...」と断った上で、壁紙の一部分を小さくカットさせてもらい、壁紙が剥がれやすいかどうか事前に確認できると安心です。
私も気をつけています!
既存の壁紙を捲くると、さらに壁紙が出てきたりする事が稀にあります。前の業者さんが、捲らずにそのまま新たな壁紙を張ったのです。なぜ捲らなかったのかというと、非常に捲れにくい壁紙だったからです。なので、捲りや下地処理に膨大な手間暇がかかることがあるので注意しています。(MURO・岡室妙子さん)
【特集】
もう失敗しない 壁紙提案
―みんなの体験談と実践事例から学ぶ―
PART1 あるある壁紙事件簿集
PART2 営業マン・プランナーたちのお気に入り壁紙
【第2特集】
第34回 住まいのリフォームコンクール
受賞者に聞く 施主の想いを形にするプラン作りと完成秘話
【好評連載】
◎住設リフォームガイド/メガバックス
第13回 システムバスと梁
◎らくらくスケッチ教室
つなぐ 鎌田雅春さん 第5回 パースを描く・後編
◎中古リノベーション入門
第4回 リノベに相応しい不動産選び:総合編 他
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