東日本大震災以降、耐震補強を行うニーズが高まっているが、既存建物耐震補強研究会の保坂貴司代表は「壁を補強しても、基礎を補強しないと、壁が浮き上がるなどの問題が生じる」と基礎補強の必要性を提唱する。今まで数百件の基礎補強に携わってきた保坂代表に住まいを長く保つ方策を聞いた。
「住まいの耐用年数が30年と思っている人がいますが、私は木造住宅の場合、耐用年数は居住者が決めるものだと思っています。それは、リフォームをすればいくらでももたせることができるからです」(保坂代表)
既存建物耐震補強研究会は阪神淡路大震災をきっかけに設立され、講習会などを通じ今までプロやエンドユーザーにさまざまな耐震関連の情報提供を行ってきた。そんな同研究会ではこれから基礎と地盤の専門家の育成が必要と考える。いくら建物部分を強固なものにしても、下が不安定であると、「液状化」「不同沈下」などの問題が生じる恐れがあるからだ。
「私どもの調査では地形を調べ、周辺の建物状況や植物なども調べます。植物を調べるのはコケが多いと湿気が多いことにつながるからです。また、地質図や地形図なども集めるなど、データをなるべく多く収集します。現状を知ることで正しいリフォームをするためです」(同代表)
例えば不同沈下対策として一般的な地盤改良は既存住宅で行う場合、建て替え並みのコストがかかる。しかし、被害が数センチの範囲であれば床を調整して直す方法を取り、100万円以下に改修費を抑えることもできる。
また、カビやダニ発生の原因にもなる床下から上がる湿気は、ポリエチレンフィルムを床下に十字に敷き詰めることで、5〜10%ほど防ぐことが可能だ。
「現状がわかると余計な費用をかけずにリフォームすることができます。今後は内外装の改修だけに終始せず、建物を長持ちさせる足元の劣化対策が必要ではないでしょうか」(同代表)

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