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国交省、中古住宅流通を促進ガイドライン策定で不安解消を

国交省、中古住宅流通を促進 ガイドライン策定で不安解消を

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 日本でも、中古住宅の流通促進・活用が叫ばれる中、中古住宅の品質・性能を、消費者に分かりやすい形で評価することの必要性が高まっている。しかし、中古住宅は品質・性能にばらつきがあるうえ、業者により検査内容がさまざまだったり、検査基準もまちまちだった。

 そこで、国土交通省はこのほど、中古住宅への消費者の不安を払拭するため、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定した。国交省はこれにより、欧米に比べ大きく後れを取っている中古住宅の流通促進・活用に向け、一歩前進を図りたいとしている。

策定の背景・前提

 国交省は、中古住宅流通・リフォーム市場の整備に向けた取り組みとして、「中古住宅・リフォームトータルプラン」を既に公表している。その中で、「インスペクションの普及促進」にふれ、「インスペクションに係るガイドラインをとりまとめる」としている。これを受け、「既存住宅インスペクション・ガイドライン検討委員会」(深尾精一座長=首都大学東京教授)で昨年暮れから4回にわたって議論を重ね、今年5月パブリックコメントを経て、先ごろ公表された。

 ガイドライン策定の背景としては、

  1. 中古住宅は物件ごとに品質の差があり、物件の状態を把握できるインスペクションサービスへのニーズが高まっている
  2. 一方で、民間事業者により実施されているインスペクションサービスは、実施時期や内容がばらばらで、検査技術や検査基準もまちまちー等の事情がある。

 現在、既存住宅を対象として行われているインスペクションには、

  1. 中古住宅売買時の建物検査や、住宅取得後の維持管理時の定期点検
  2. 住宅の耐震診断等
  3. リフォーム実施前後の現況調査・検査等

―――がある。

 ガイドライン策定の前提として国交省は、「利用者の負担可能なコストで、一般的に用いられている検査技術に基づいたもの」として、その内容は「必要十分なものを示すものではなく、最小限の内容」に限定している。

 さらに、「瑕疵の有無の判定、耐震性・省エネ等個別の性能の判定、建築基準法等法令違反の有無の判定等は不要」とし、「(インスペクションは)瑕疵がないことを保証するものではない」としている。

内容、資格要件等

 ガイドラインでの検査項目は、検査対象部位と検査方法等で構成され(別表参照)、検査方法は「目視を中心に一般的に普及している計測機器による計測や触診・打診等、非破壊による検査」とされ破壊調査は原則として含まない。

検査観点対象部位検査方法
構造耐力上の安全性に問題 小屋根、柱、梁、床、壁etc 目視、触診、打診、計測
雨漏り・水漏れ発生等 屋根、外壁、サッシ、小屋根、天井、内壁etc 目視
設備配管に支障・劣化 給水管、給湯管、換気ダクトetc 目視、触診(通水)
 戸建住宅での検査対象項目

 検査人の資格要件については、「住宅の建築や劣化・不具合等に関する知識、検査の実施方法や判定に関する知識と経験が求められる」として、「住宅の建築に関する一定の資格や実務経験を有していること」を目安に掲げている。

 具体的には、建築士、建築施工管理技師といった資格、住宅リフォーム工事の施工等の実務経験が挙げられている。その他、適切な業務実施、資質向上のための講習や実地訓練も重要とされる。

 検査事業者には、「依頼主との準委任契約に基づき善良なる管理者としての注意をもって業務を遂行する」ことが義務付けられ、仮に検査結果が誤っていた場合には「債務不履行により損害賠償責任」を負わされる。客観性・中立性の確保についても、検査事業者が「宅地建物取引業又は建設業若しくはリフォーム業を営んでいる場合」や、インスペクション業務を受託しようとする住宅の「媒介業務やリフォーム工事を受託している等の場合」、依頼主に対して情報開示しなければならず、自らが売り主となる住宅についても「インスペクション業務を実施しない」等としたインサイダー規定も盛り込まれた。また本人確認のための書面携行も義務付けられるので、建設業・リフォーム業者等は今後留意する必要がある。

評価と課題

 今回策定されたガイドラインによって、中古住宅の売買について、消費者の不安に応えて、安心して売り買いできる"土俵"が整備されたと言える。しかし国交省では「あくまでガイドラインなので、拘束力がない」としたうえ、「従来法に基づき表示されていたものの、あまり活用されていなかった。このところニーズが高まってきたので、これまでばらばらに実施されていたものを共通的に、広く同じ方向に整理した」(住宅局住宅生活課)と説明。

 一方で、検査があくまで目視中心で瑕疵担保の仕組みも特に設けていない点について、同省では「売買時のインスペクションなので、破壊検査等はそもそも不可能で、目視中心にならざるを得ない。検査結果への瑕疵担保についても、そこまで求めておらず、必要なら従来の瑕疵担保保険の仕組みを活用してほしい」(同)と強調している。これに関連し、事前に実施された消費者アンケート調査(2012年9月実施)では、建物検査の消費者ニーズとして、「検査結果の保証」が第1位となっている。

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