有料会員登録で全ての記事がお読みいただけます

屋根が進化、長寿命・高耐候化でメンテしやすく

屋根が進化、長寿命・高耐候化でメンテしやすく

このエントリーをはてなブックマークに追加

屋根は、雨や雪、風といった自然環境から家を守る重要な役目を担う。風雨につねにさらされるため、劣化も早く、定期的なメンテナンスが必要となってきた。しかし近年、メンテナンスが少なくて済む、「長寿命」の屋根材が普及しつつある。

耐用年数3倍に、高耐久塗装のスレート屋根

 高いシェアを持つセメント系屋根材の「スレート屋根」は、カラー、デザインが豊富だ。ただし耐久性で粘土瓦にやや劣る。そのため10年に一度程度の塗装メンテナンスが必要となってきた。耐久性の低いアクリル塗料による仕上げが主流だったためだ。
 しかし、数年前から主要メーカーが耐候性の高い無機系塗料に仕様を変更した。これにより、10年程度だった耐用年数は3倍近くに延び、メンテナンスにかかるコストを大幅に低減させることができるようになった。
 スレート屋根メーカー最大手のケイミューでは、高耐久の無機系塗料の3層コーティングによる「グラッサ」を、約10年前に販売開始。アクリル塗料仕上げの製品に比べ、坪単価は2000~4000円ほど高いが、メンテナンスがより楽になり、塗り替えコストが抑えられる。これらのメリットが広く知られるにつれて売り上げを伸ばし、現在では、同社スレート製品の40%を占めるようになったという。
 こうした動きはメーカー各社に広がっており、今後、ローメンテナンスなスレート屋根の人気はさらに高まるものと見られている。

グラッサケイミューの高耐久塗装「グラッサ」シリーズは3層塗装からなる。3層とも有機素材を使わない無機塗装で、下から基本の色となる「無機化粧層」、硬度の高い釉薬加工を加えた微細な石を吹き付ける「無機彩石層」、最上部が、ガラス質で被膜する「グラッサコート」となっている。無機の特徴である紫外線による劣化防止、高硬度を生かす構造だ。 ※ケイミュー公式サイトより抜粋

メンテ不要の金属屋根登場

 金属屋根では、表面に天然石を接着し、長寿命化を図る「ストーンチップ」が登場。ストーンチップは、主にガルバリウム鋼板の屋根材に、石のチップを吹き付ける、というもの。金属屋根の軽量性と、天然素材のローメンテナンス性と、両者の特徴を兼ね備えた製品といえる。
 見た目も天然素材のため、金属屋根の欠点とされていた「安っぽい」イメージもない。また、石のチップで被膜されるため、雨音も低減されるという。耐久性は非常に優れており、メーカーによっては30年の美観保証、60年の素材保証を出している。塗装などのメンテナンスは「無用」で、各社とも「メンテナンスフリー」をうたっている。

ストーンチップ屋根の表面ストーンチップの表面は砂岩状で天然石と区別しがたいほど。ナチュラルな素材の屋根を好む施主にすすめられる。 ※AHIルーフィングのカタログより抜粋

 本製品は、日本と並ぶ地震大国ニュージーランドで開発されたもので、20年ほど前から日本へも輸出されていたが、今まで注目されることが少なかった。しかし、耐震性への意識が高まったため、大手ビルダーが採用したほか、主要屋根メーカーが輸入業者と提携するなど、ストーンチップの需要は高まりつつある。桟木のいらない工法で、工期も短くて済むことから、関係者の間では、リフォーム市場での需要の増加に期待が寄せられているという。

軽量化と工法の進歩が進む粘土瓦

 粘土瓦などの伝統的屋根材は、耐久性に優れ、メンテナンスの必要性も低いが、重量が金属屋根の5~6倍にもなるため、耐震性を求める施主からは近年敬遠される傾向にあった。
 そこで現在、主要メーカーが力を入れて取り組んでいるのが軽量瓦だ。従来の瓦よりも20~30%程度軽量化し、落ちにくい形状で設置する工法も開発された。地震・風による落下を防ぎ、安全性を向上させている。

軽量化が進む粘土瓦焼いて作る伝統的な粘土瓦でも軽量化が進んでいる。「地震・台風・大雨に強い」鶴弥の「スーパートライ110」のシリーズでは、瓦同士をがっちりつなぐ「スーパーロック工法」が採用されている。 ※鶴弥公式サイトより抜粋

 軽量化の一方、瓦本来の耐久性はそのまま保持している。瓦はもともとメンテナンスフリーといわれるほど耐久性は高く、災害などによる破損がない限り50~60年はもつうえ、塗装メンテナンスも不要だ。軽量瓦なら、地震による倒壊リスクを減らしながら、コストも従来の瓦同様に抑えることができる。

 スレート屋根、金属屋根の人気が高まっているとはいえ、粘土瓦のシェアは約40%ある。大規模リフォームが必要な住宅の多くは粘土瓦で、世代的に施主もそのまま瓦屋根を希望することが多い。リフォーム相談の際には、高機能型の粘土瓦も選択肢に入れ、効果的な提案ができるようにしたい。

屋根の劣化のサインをチェック

□全体的に屋根材の色あせが目立つ。⇒ 劣化の初期サイン。早めに手入れを。

□屋根に雑草やコケが生えてきた。⇒ ホコリや湿気の影響を大きく受けている。

□屋根材の割れ・ズレがある。⇒ 既に雨漏りしているか、近々起きる可能性がある。

□屋根材の一部が欠落している・隙間が見える。⇒ 雨漏りが起き、劣化が進行中。

□屋根全体がうねって見える。⇒ 雨漏りや結露で既に下地が腐っている可能性大。

毎日ニュース配信中!リーフォーム産業新聞公式LINE

リフォーム産業新聞社の関連サイト

閉じる