高齢者の室内での転倒事故を防ぐには、段差の解消が重要になっている。簡単に設置できて、生活の質を上げるリフォーム部材を紹介する。
増える高齢者の太腿骨頚部骨折
高齢者が家の中でつまずいて転び、救急車で運ばれる事故が頻発している。高齢者の「寝たきり」につながる大腿骨頚部骨折は、8割が転倒や段差のつまづきによって起こるという。
住宅の中をバリアフリーにすることは、新築住宅ではかなりポピュラーになってきた。しかし1995年以前に建てられた住宅では、段差解消が実現されているのは4軒に1軒以下にすぎない。高齢者が安心・安全に暮らすために、リフォームによる段差解消が早急に求められている。
大きなケガを未然に防ぐ小さなスロープ
家の中で段差が見られる部分はいくつかある。まず挙げられるのは、和室と洋室の段差、畳の部屋と廊下との段差だ。かつてはトイレと廊下の間に段差を設けた家も多かった。
これらの段差はほんの数センチ。しかし筋力が弱く、すり足で歩行する高齢者には、この程度の段差がいちばんつまずきやすいといわれる。
これらを解消するには「すりつけ板」や「段差見切り」と呼ばれる幅の狭いスロープを取り付けることが一般的だ(写真1)。木材、樹脂、アルミ、ゴムなど多様な種類があり、接着剤やネジなどで固定する。段差の高さは場所によってまちまちなため、施工現場で微調整可能なものも多い。

【写真1】 現場での高さの微調整が可能なスロープ。
LIXIL「見切り材」
また、夜間に足元が見えにくくてもスロープの位置が分かるよう、蓄光塗料をペイントしたものもある(写真2)。蓄光塗料は光のエネルギーを蓄え、周囲が暗くなると光るので、深夜トイレに行く時も安心だ。

【写真2】 踏み外しを防ぐ、夜間に光るスロープ。
パナソニック電工ライフテック 「蓄光スロープ」
カーペットの段差にも対策を
高齢者はフローリングの冷たい感触を嫌い、カーペットやラグなどの敷物を使用することも多い。ここでも敷物と床面との段差や、めくり返った敷物に足を取られて転倒する危険がある。こういった危険を防ぐため、敷物の周囲に取り付けて段差を解消する部材が発売されている(写真3)。この部材によって敷物を補強する効果も生まれ、安全性がアップする。

【写真3】 床と敷物の段差も解消することでより安全な家に。
東リ「ファブリックフロア見切り材」
玄関の段差は「式台」で補助
玄関のポーチと上がりかまちの段差も、筋力の落ちた高齢者にとっては越えるのが難しくなる。スロープをつけたいが、十分な設置スペースがない、という場合は玄関用の踏み台である「式台」を設置すれば段差が小さくなり、楽に上がり下りできる(写真4)。

【写真4】 玄関の段差を分割する「式台」で上がり下りが楽になる。
TOTO「式台」
式台は上がりかまちの高さに合ったもので、台の表面が滑りにくいもの、そしてなによりぐらつかない安定性のあるものを選びたい。

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