デッドスペースをなくして部屋を広く使える「引き戸」と、足元のレールや敷居が不要で、フラットな床面を実現する「吊り戸」。両方の長所を併せ持つ「アウトセット吊り戸」が今、人気だ。高齢になっても使いやすい機能が注目され、リフォーム時に採用するユーザーが増えてきている。
空間を広く使うなら開き戸より引き戸
最近、部屋をリフォームする際に、開き戸を引き戸に交換したいという要望が増えている。
引き戸は、広い開口部を確保しやすく、デットスペースが少なくて済む。その上、開け放しておいても、扉が邪魔にならないので、部屋を広く使えるのだ。
さらに、単純な動作で開閉できるため、高齢者でも身体のバランスを崩さず使いやすいという点も最近、注目されているメリットだ。
戸袋もレールも不要のアウトセット吊り戸
しかし、既存の建物に引き戸を設置する場合は、開口部付近の壁や床をいったん取り壊し、戸袋やレールを造作するなど、大掛かりな工事が必要となる。
そこで注目されているのが、アウトセット吊り戸だ。アウトセット吊り戸は、その名が示す通り、開口部の外側に吊り戸をセットするタイプの扉だ。そのため、元からある開口部をそのまま生かして引き戸にすることができる。新たに戸袋の施工をする必要もないので、リフォームに最適な部材と言える。
壁を壊すことなく、開口部に引き戸を設置できる。戸袋をつくる等の大がかりな工事は不要だ。(左:施工前 右:施工後)
しかも、上吊り式のため、敷居やレールも必要ない。床面に段差や溝ができないので、つまずくなどのリスクで安全性が損なわれることもない。
車椅子利用の際もスムーズだ。この点も、大きな魅力と言えるだろう。
上吊り式のため、床にはレールや敷居がない。段差がないので、安全性が高い。車椅子の走行もスムーズだ。
開閉をスムーズにする機能が好評
引き戸を設置する際には、開閉の快適さも重要なチェックポイントだ。中途半端な開け閉めをすると、扉が開け放しのままになってしまうこともある。かといって、力強く開け閉めすると、バタンと大きな音が出たり、手足や指を挟んで怪我をしたりする危険もある。
そこで最近は、「ソフトクローズ」という特殊な金具が付けられることが多くなった。これを付けると、扉が閉まる直前にブレーキがかかり、扉が枠と当たって跳ね返るのを緩和できる。指を挟む危険や、扉と枠の衝撃音を軽減できる。
ソフトクローズの機能があれば、ゆっくり最後まで閉まる。扉と枠との衝撃音が少なく、指を挟むなどの危険も減る。
さらに別タイプの引き戸では、少しの力で引き戸を閉めた場合でも、扉をゆっくりと引きこみ、静かにぴたりと閉まる機能もある。これは、力が弱くなった高齢者にとって優しい機能と言える。手を離しただけで自閉するタイプのものもある。
標準で装備されている機能もあるが、オプションの金具でカスタマイズできる場合も多い。設置する場所や利用者に合わせて、必要な機能を備えた引き戸を採り入れたいものだ。

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