日本で一番高い場所、低い場所で使われているトイレをご存じだろうか。水の使用が限られている富士山の測候所と、津軽海峡下の青函トンネルで採用されたのは、ネポン製の泡洗式簡易水洗トイレ"パールトイレ"だ。そして今、そのユニークな技術が、世界から注目されている。
ネポン 福田晴久社長
熱ポンプ事業に加えてトイレ事業を展開
同社は昭和23年の創業以来、熱源機器の技術を生かし、農業、園芸用のエネルギー分野でさまざまな商品開発、販売を行って来た。
とくにハウス用暖房機では、国内シェア70%のリーディングカンパニーとして知られる。そのほか、海の家などで使われるコイン式シャワーユニットなど、業務用熱機器を扱う。本社は東京・渋谷にあり、前期の売上高は85億8500万円、東証二部上場企業だ。
一方で、創業者がアメリカのトレーラーハウスで泡洗浄の簡易水洗便器を使用し、その節水性に感銘を受けた体験から、昭和40年代に"パールトイレ"を開発、販売をはじめた。
「トイレを販売するようになった理由を先代に尋ねると、"農業は私たちが口にする食べ物を作る産業で、いただいたものは必ず排出されるのだから、農業とトイレは関係がある"と言っていました。またトイレ販売と同時に、『熱ポンプ工業』の社名ではトイレは売りにくいだろうと『ネポン』に改名しました」(福田晴久社長)
200㏄の洗剤で便器を洗浄する節水性
"パールトイレ"は、常に微量な泡を便器内に覆わせて臭気を抑え、使用時には泡がブロワーで空気とともに流れ込み、汚れを包みながら洗浄する。下水道への接続や浄化槽の設置を必要としないため、いわゆる汲み取り式トイレで使用でき、工事は半日程度ですむ。

パールトイレ:洗浄時の状態
「当初は日本でも下水があまり普及していませんでしたので、かなり売れました。現在でも下水未整備地域のご家庭や、山小屋、スキー場、また都会でも公園や仮設トイレとしての需要が多いですね」
水洗トイレと変わらない清潔で快適な使用感が保てるのは、"ネポノール"という泡を作り出す専用洗剤の働きによる。

専用洗剤ネポノール
「ネポノールはわずか200㏄で大量に泡立ちますが、使用後すぐに液状に戻るため、一般の洗剤のように便槽に泡がたまることがありません。4人家族ですと、2、3カ月で1リットル瓶1本をご使用でしょうか。農協、生協さん、ホームセンターで手に入ります」
そして現在は海外への輸出が増えている。
「今、出荷の3割弱はアメリカです。アメリカは広大な土地に家が点在し、下水が完備されていないところも多いんですね。液などの供給も必要なので、アフターサービスもセットでできる設備業者さんとタイアップして広げていきたいと思っています」
名前の由来ともなった"真珠のような泡"が便器内に流れ込み排出される独特の使用感は印象的で、You Tubeなどではネポン製トイレの動画が一般投稿され、世界に配信されているという。
アメリカでの体験をきっかけとしたトイレが、今、"メイド・イン・ジャパンの節水衛生機器"として、グローバルな展開をはじめている。

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