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【座談会】要介護前の予防リフォームこそ急務、介護リフォームの現場から

ユニバーサルスペース × パナソニック エイジフリー × 高齢者住環境研究所
遠藤 哉社長 × 中野 哲氏 × 溝口恵二郎社長
1248号 (2017/01/17発行) 14~15面
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座談会 テーマ「介護リフォームの現場から」
ユニバーサルスペース×パナソニック エイジフリー×高齢者住環境研究所

 世界一の高齢化国ニッポン。要介護の高齢者が年々増え続け、介護施設の数は足らない。在宅での介護を推し進めざるを得ず、自宅のバリアフリー化、介護リフォームはますます重要性を増してくる。今回は介護リフォームの豊富な実績がある3人に参加してもらい、高齢者の家の危険な点やビジネスとしての難しさなどについて語ってもらった。

ユニバーサルスペース 遠藤 哉社長ユニバーサルスペース 遠藤 哉社長

介護リフォームの専門店を経営。ノウハウを提供するフランチャイズも運営。

パナソニック エイジフリー 中野 哲氏パナソニック エイジフリー 中野 哲氏

パナソニックグループの会社。介護リフォーム、福祉用具レンタル、高齢者住宅の建設運営などを手掛ける。

高齢者住環境研究所 溝口恵二郎社長高齢者住環境研究所 溝口恵二郎社長

1993に創立し、都内で介護リフォームショップを経営する。

介護改修のプロたち

――まずは自己紹介からお願いします。

遠藤 2009年にユニバーサルスペースを立ち上げました。それまでは積水ハウスでずっと技術職をさせてもらっていました。今現在、創業して8年なので数としては累積で2万件の介護リフォームをさせていただいております。3年前からフランチャイズ展開を始めておりまして、今では北は盛岡から、来年オープン予定の九州まで、全国24店舗あります。

中野 パナソニックエイジフリーの中野です。私は元々建築事務所で現場管理、設計をやっていて、縁があってキャリア入社いたしました。

――エイジフリーは介護改修実績で国内でトップレベルですね。

溝口 僕の会社は1993年にスタートして、今2代目になります。先代は母親で、10年ぐらい前に僕は社長に就任しました。それまでは北海道の道庁で建築の方の役人をやっておりまして、確認申請業務などを7年ぐらい。今営業所は都内に5つあります。ちょっと今度の介護保険法の改正が厳しい方向になりそうなのでそれに向けて今色々考えているところです。

――みなさんは日々現場を見ているかと思いますが、高齢者の家で最も危険な場所とはどこなのでしょうか。

遠藤 基本的に昔の建物は全て危険。でも一番の問題は階段の段差ですよね。

溝口 特に古いお家は階段が急。ただ足腰弱くなって来ると2階使わないっていう高齢者が圧倒的に多いので、階段に手すりを付けるっていうのは2階に居住空間があるお家です。僕らで圧倒的に多いのは一番がトイレ。トイレとお風呂と玄関の上り框の所の3カ所が圧倒的に多い。お風呂は浴槽のまたぎであったり、浴室の出入りの所であったり段差だらけ。

遠藤 おっしゃる通り。うちでも多いのはトイレとお風呂かな。今の新築は基本的に手すりが付いていますけど昔の家はそんな概念が無い。実際うちの妻が敷居の段差で転んで骨折したんですが、それが高齢者になるともっと頻度が上がるはずですよね。実際にお客さんの家を工事させてもらう時に、階段から落っこちてけがをされたからするということもある。

 本当はもっと事前にだったり、手すりが付いていればけがしてないと思うんですけれども。けがしてからリフォームの必要性を感じている、というところに思うところがあります。

中野 私もやっぱり段差は一番危険だと思います。確かに遠藤さんが言う通り、必要に応じて介護リフォームをしがちです。即効性はありますが、必要性を感じなければ要らないという意見が大半のような感じがしますね。予防のために付けてねっていう依頼はまれにあるぐらいですよね。

気づかないものが危険

溝口 確かに予防は少ない。それと段差って、10センチとか20センチぐらいの段差だと「段差」と認識しているんで足が上がるので、そういうところでつまづくことってあんまり無いんですよね。やっぱり3cm以下、もっと言ったら電気のコードとかああいうのにつまづいて、依頼が来る方が結構あります。低い方が「段差」という認識がないんで、足を上げなくなっちゃうというか。

――段差以外で危ないと感じる箇所はありますか。

中野 一番危険なのはご本人様が気づかない点です。例えば寒暖差とかですね。ヒートショック、あるいは熱中症だったり、言葉で理解していても体感としては分からない。なかなか理解を得れないんですが、危険だなと感じますね。

溝口 言葉は認識はしていますが、それを解消しようとすると結構大掛かりなリフォームになり、工事金額も高い。介護保険の助成は受けられないしってなると「いいわ」っていうふうになっちゃうんじゃないかな。あと危険なのは、道路から玄関までの高低差です。

――室外の段差も危険だと。

溝口 木造の場合は建築基準法で45cmでしたっけ、地盤面から1階の床を上げなきゃいけないと決まってますから、最低でも45cm、道路から段差があるわけですよね。病院に通院したり、デイサービスに行ったりだとか外出ってしますよね。そこがいつも頭を悩ますところです。

 特に玄関開けたらすぐ道路みたいなところで段差がガッてあると、ちょっとどうやって下ろそうかなとか、どういうふうに安全に行けるようにしようかなというのは悩むところですね。

なぜ後手に回るのか?

――やはりけがをする前の告知というか、予防のリフォーム提案の方が重要ですよね。

遠藤 そうですね。ただ、リフォームの世帯主って60歳以上が一番多いんですが、60歳の方は実際元気なんですよね。でもその人達もこれからの準備しないといけないんですよね。

溝口 僕もそう思っていまして、要介護になってからリフォームを考えても、ものすごく限定されたところしかできないです。長期間の工事はまずできないし、あちこち壊すようなリフォームはできないですから本当その場しのぎのリフォームしかできない。結果的に安全なお家にはなっているとは言い難いと。

 だから本当に今遠藤さんがおっしゃったように、介護になる前に1回、住まい方だとかを整理してリフォームをされるのが一番ベストかなと思うんですが、なかなかそれを言ってもね、今先行きがちょっと不安ですから、お金はできるだけ蓄えておきたいっていう気持ちもあるでしょうから。なかなかそういう気持ちには持っていけないんです。けど、僕は事あるごとにそういうふうな話はさせてもらっていますね。

中野 考えは一緒です。ただ実際は予防のリフォームは一部ですね。どちかというと介護事業者として見られるので、建築を頼もうという発想になっていただけないこともある。リフォームは工務店さんに頼むからとか、たまに言われるんですけど。いや、新築もできるんですけどって思うんですよ。

遠藤 私のところも予防の介護リフォームは少ないのですが、実はそこを広げて行こうと用意してるんです。

 実際この前のリフォームも3階建ての家に、保険を使わずに手すりを付けてきました。元気な高齢の女性の方だったのですが、息子さんから「転ばぬ先の杖だから」ってことで勧められたということでした。

――介護リフォーム後はどのような効果があるのでしょうか。

中野 先日、2階にお風呂がある方から階段に手すりを付けて欲しいと依頼があったのですが、1階にお風呂を作ってしまおうという提案をしました。リフォーム後にモニタリングしてみると、ちゃんと入浴できていて、自分のライフスタイルの改善につながっていました。

溝口 トイレにただの手すりを一本つけただけなんですけど、一人でトイレに行けるようになって気が楽になったっていう人だっています。家族に頼むことが無くなったので大変良かったわけです。で、その後、やっぱりここもあそこも直したいということになって、気持ちが前向きになりました。

遠藤 本人が自律的で気持ちが前向きになるのももちろんなんですけど、介助する側の家族の負担軽減にも影響します。

 実はお客さんからアンケートを取っていまして、その中に「手すりによって命の絆をつないでいただきました」みたいなのがあってですね、本当に感謝してもらえる。まあ収益は決して良いとは言えない仕事ですけど、社員もやりがいが感じられますよね。

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